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PASSION VOL.30_September.2006

01 九州国立博物館のこと

その果たす役割のひとつ



三輪 嘉六
Miwa Karoku
(独)九州国立博物館 館長
 

九州国立博物館

南蛮船駿河湾来航図屏風


 
 九州国立博物館は福岡県太宰府市に在る天満宮の社域に接した丘陵上に建設され、昨年10月16日に開館となった。建設に到るまでの長い道のりを考えると、九州の人々にとってはようやくの思いをもった開館であったろう。新聞等マスコミでは100年振りの悲願の実現というような表現もあった。それだけこの博物館の開館が多くの人々にとって待ちこがれていたからこその言辞といえよう。10月16日からの6週間にわたって開催した開館記念特別展「美の国日本」では約44万2千人の入場者があったが、この数は記録破りである。期待への表れと理解できよう。
 
 さて、博物館は、東京、奈良、京都に次ぐ全国4番目の国立博物館として建てられたものであるが、国立とはいえ、その運用面においては福岡県と連携して存在することになっている。博物館内に福岡県立アジア文化交流センターが設置され、全体を総称して九州国立博物館とよぶことになっている。これはこれまでの九州国立博物館建設への長い道のりの過程で福岡県の果たしてきた経緯による。
 
 ところで、この博物館は平成11年から独立行政法人という新しい組織の中で位置づくことになり、その掲げる目標の基本は国民に親しまれる博物館を目指すことにある。とくに21世紀社会において、心豊かで活力のある社会を築いていくための日標設定は当然のこととして位置づけられている。確かにこれまでの博物館は“来たい人だけに来てもらう”“見たい人だけに観てもらう”というような姿勢での取組みであったことは否定できないし、それへの反省でもある。
 
 こうした中でこれからの九州国立博物館としての新しい取組みについて少し触れてみたい。そもそも博物館は、文化財を保存し、活用していく場であるが、まずこの貴重な国民的財産である文化財を良好な状態で後世に伝え、文化を継承することを博物館の第一義にしていくつもりでいる。このあり方については今も昔も変わらないが、これからの博物館としてはまず新しい体制から整備することが必要となっている。そのために博物館内に「博物館科学」という新しい保存科学的な拠点を構築することによって、博物館の新しい魅力づくりを行っていく方向づけをした。つまり、これまでの博物館にはこうした分野を設定することは殆ど無かった。欧米では当たり前の取組みであるが、博物館活動に保存科学も連動して博物館本来の機能をより発揮できることを大きな目的にしている。例えば、まだ博物館が建設の最中から、博物館が取り扱うさまざまな分野の文化財の保存と活用のための環境づくりを行うなどは、博物館科学の存在なしには考えられない。つまり、正しく文化財に対峙していくには温度、湿度、照度をはじめ、各種の生物被害に対する防止策等々に対応する環境づくりは不可欠な課題であるが、多くの博物館では学芸員等の余技的な任務の中で処理している実情にある。お寒い状況を嘆かずには居られない。これからの文化財は国際的な視点からも“文化財を環境で保存する”という理念にあり、この達成こそが国際社会においても信用を得ることの最も基本といえる。
 
 九州国立博物館では博物館としてはじめてともいえる設備として免震装置を導入した。この建物としての安全性と博物館の良好な保存環境づくりが合まって、ここにはじめて文化財所蔵者等から文化財を安心した形で寄託や借用を受けることが可能となる。国際的には海外からの各種展覧会の開催などに大きな信用と安心をもって対応していただけると考えている。将に博物館科学は博物館における危機管理のあり方を左右する不可欠な分野である。
 
 また、博物館科学は文化財の材質等、その組成分析や工学的研究などを通じて、文化財の特色を明らかにし、更にはその結果を歴史や文化の中に位置づけていくなどをはじめ、個々の文化財の保存や修復に到るまで幅広い範囲で期待されている。博物館が文化財を活用し、更に将来へと継承する場である限り、こうした博物館科学を備えた博物館の展開なしには考えられない。
 
 一方、九州国立博物館は今後の運用や展開における基本コンセプトとして“日本文化の形成をアジア史の視点でみる”としている。このことは単に展示活動のことのみならず、文化財を保存し、活用していく様々な面でアジア世界と協力し合っていくことの基本的な表明である。その一つが、こうした博物館科学等の面での合作研究であったり、支援活動であったりと考えている。アジアの文化財はヨーロッパなどと違って、日本との間ではさまざまな面で共通的な材質や構成の要素を共有している。アジア各地での文化財保存の問題として直面している多くのことは、遺跡などの記念物的な文化財や文物など、動産あるいは不動産文化財を問わず、その保存方法についてのあり方に共通する面が多い。いま国際社会では日本に対して、伝統的手法や科学的手法を取り交えての新しい保存方法の開発や実施、またこれについての人材養成について多くの関心や期待が寄せられている。九州国立博物館がアジアに視点をおく限り、陳列展示のみでなく、博物館科学の中にこそアジア諸国との新しい協力関係の構築が期待されると考えている。
 

PHOTO GALLERY

九州国立博物館所蔵
九州国立博物館

南蛮船駿河湾来航図屏風

 
九州国立博物館

突線鈕袈裟襷文銅鐸

 
九州国立博物館

経箱 孔雀文 鎗金

九州国立博物館提供
九州国立博物館

エントランス

 
九州国立博物館

常設展示室

 
九州国立博物館

免震装置

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