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  • 技術ストーリー

”宝の山”を掘り出す『QC七つ道具』

金剛株式会社 製造本部品質管理室 係長 小川 静夫

注意発行当時の記述について

本記事は、金剛株式会社が1999年02月26日に発行した機関誌「PASSION Vol.24」の内容を、当時の記録として公開するものです。

記事内の情報は発行当時のものであり、現在の状況とは異なる場合があります。また、当時の社会情勢や倫理観を反映した表現が含まれている可能性があり、現代の基準に照らし合わせると一部不適切と感じられる箇所もあるかもしれませんが、資料的価値を考慮し、原文のまま掲載しています。

掲載されている商品やサービスは、既に販売・提供を終了している場合があります。現行の製品については、改めて最新のカタログ等をご参照いただくか、弊社までお問い合わせください。


※ 本記事は、著作権法上の引用の範囲内で掲載しています。当時の記録として、皆様に楽しんでいただけましたら幸いです。

金剛株式会社 製造本部 品質保証室 係長 小川 静夫

ISOとQC七つ道具

ISO9000シリーズによる品質システムは「信頼感を与える体系的な活動」、すなわち品質保証活動(QC:Quality Control) をシステムとして行うことである。
「QC七つ道具」は、その品質保証活動を効果的に進めるための手法の一つである。また、日常的に発生する品質問題解決の手順(一般的にQCストーリーと呼ばれている)の中でも広く活用されている。それは、製造現場であれ、事務職あるいは営業職、サービス職であれ、品質(業務の質を含む)を実際に作り込んでいるどこの現場でも活用できる「品質管理を目的とした七つの手法」である。
ここでいうQC七つ道具とは、

①チェックシート:簡単にしかも利用しやすい形でデータをとる道具  
② ヒストグラム:データのばらつきの状態をとらえる道具  
③グラフ:数字を視覚化して情報伝達(時間的な変化や量の変化)を容易にするための道具  
④散布図:原因と結果との関係をとらえるための道具  
⑤パレート図:重点的にせめる問題をとらえるための道具  
⑥特性要因図:衆知を集めて問題の原因の全体を整理する道具  
⑦管理図:工程が一定の品質水準を維持し、統計的安定状態であるかをみる道具  
この七つ道具を上手に使うためには、問題となる現象 を原因ごと、また条件ごとなどに分類整理する。例えば 機械別、人別、あるいは手法別などにデータをまとめる という「層別」の考え方が有用である。

七つ道具の語源

QC手法には、やさしいものから専門家でないと使いこなせないような高度な手法まで色々なものがある。その中で、あらゆる職場に有用で、使いやすくしたものがQC七つ道具である。  
ところで七つ道具の語源であるが、鎌倉時代の豪傑で あった武蔵坊弁慶の「七つ道具」からとったもの。一説 では、源義経の家来となった弁慶は、体が大きく腕力も強い鍛えられた身体を持った僧兵であったという。太刀を持っただけでも強いのに、弁慶は戦いにあたって、彼独自の七種の武器をセットで携帯していたという。ちな みにこのときのセットは、のこぎり、つち、おの、なぎなた、かま、太刀、熊手)の七種であったという。弁慶は、これらを状況に応じて巧みに使って勝利したそうである。 
何事も、ことを成すにあたっては、道具(ノウハウ) が必要である事は当然であるが、品質問題を解決する手法「QC七つ道具」が、「弁慶の七つ道具」から来ているところがおもしろい。

七つ道具を駆使した弁慶
七つ道具を駆使した弁慶

QC七つ道具の活用事例

如何に優れた道具であっても無暗に使っては期待する成果を得ることは困難である。ここでは、問題解決のQCストーリーの定石に沿って、QC七つ道具を活用した事例の概要を、解説を交えて紹介する。
 ●テーマ
電着塗装における色ムラの改善  
ここでは、電着塗装ラインにおける事例のためまずラインの概要を説明する。電着塗装とは、電着塗料水溶液中に2つの極板(一方は被塗物)を入れ極板間に直流電圧をかけ、対イオンとなっている塗料粒子と中和剤粒子が各々反対の極に移動する性質を利用して行う塗装である。その制御機構は複雑で、大規模になっているが、工程を簡単に示すと、被塗物を湯洗いする工程から始まり、→[脱脂]→[水洗]→[化成皮膜処理]→[純水洗]→[電着]→[ 水洗]→[焼付]→[降し作業]の工程からなっている。この様な工程をイメージして以下の事例を見て頂きたい。

(1) 問題の発見
電着塗装ラインでは、不適合の発生個数を月毎に集計 して、折れ線グラフ(図1) でその動きを確認していた。すると7月になって急に増加し始め、8月も上昇傾向は 続いた。何とかこの傾向に歯止めをかけようとしたが、なかなかうまくいかなかった。とりあえず不適合品を製品別に集計したところ(図2) 表面積の大きい部品Aに多く発生していることが分かった。  

不適合発生の推移
図1 不適合発生の推移
不適合の製品別割合
図2 不適合の製品別割合

【グラフの用途】
データを分かりやすく表記する最も簡単な方法がグラフである。一目でデータ全体を正しく把握し理解できるように考えてつくられている。棒グラフ、点グラフ、円グラフ、折れ線グラフ、帯グラフ、レーダーチャート等、その用途は広い。  

(2)現状把握と目標設定 (改善計画)
現状をもっと具体的に把握するために、不適合の増加する前の6月と、増加した後の8月とで分けた不適合項目別のパレート図を書くと、図3のようになり、6月以降増えたのは、“色ムラ不適合”であった。この色ムラ不適合を半減すれば、全体の不適合が約20%低減できることになる。これを目標に、3ヶ月計画で改善に取り組むこととした。また、色ムラ不適合が、降し工程で発見される時間帯をチェックシート(図4) で調べてみると、ライン稼働後の約1~2時間の間に集中して発見されていることが分かった。 (原因はライン立上がり時に潜んでいると推測される)

6月と8月の不適合項目別グラフ
図3 6月と8月の不適合項目別グラフ
色ムラ不適合の発見時間帯別チェックシート
図4 色ムラ不適合の発見時間帯別チェックシート

【棒グラフとチェックシートの用途】
棒グラフは、数や量の大きさを長さで示したもので、柱状グラフともいわれている。後述する「パレート図」「ヒストグラム」はこの棒グラフの一種である。また、チェックシートは現場で起きている正確なデータとして調べる一つの方法である。特に数としてはっきり表わされるものに有用である。  

(3) 要因の解析
6月以降に増加したのはなぜ?” “ライン立ち上がり時間帯になぜ?” “表面積の大きいものになぜ?”発生するのかという問題に対して、電着塗装ラインの関係者が集まり、ブレーンストーミング「三人寄れば文殊の知恵」で要因と思われるものを出し合い、なぜ?なぜ?を何度も繰り返して特性要因(図5) を書いた。

塗装品の色ムラの特性要因図
図5 塗装品の色ムラの特性要因図

その中で、主要因と思われる前処理の化成皮膜条件の解析に取りかかることとした。処理条件に影響を及ぼすと考えられる温度と皮膜厚との関係を散布図(図6) で見ると、強い相関がわかる。さらに、サンプル板で化成皮膜厚の違いによる色ムラ発生の相関関係を調べたところ、皮膜厚が薄いと色ムラが発生することが確認された。

化成処理液の温度をコントロールする熱源設備のトラブルによる液温異常も発見された。また、色ムラ部分の塗装膜厚を測定し、ヒストグラムでそのばらつきを見たが、下限に近いものがあるものの規格はずれはなく、塗装膜厚への影響はないと判断される。

散布図
図6 皮膜付着量と温度の関係(散布図)
ヒストグラム
図7 塗装膜厚のヒストグラム

(4) 是正処置の実施
前述する解析の結果から、原因は「前処理液の低温度 状態」によるものと特定して、次の是正処置を取った。
①作業手順書変更
前処理液(化成被膜) 温度の上限及び下限を適正値となるように設定して管理する。
②設備管理手順書変更
設備トラブルを未然に防止するため、熱源設備の日常点検項目を追加規定する。  

(5)効果の確認
前項の是正処置による効果がどの程度であったかをパレート図で確認することとした。改善前にデータを取った期間(8月)と同じ期間(改善後の11月)のデータをとってそれぞれにパレート図を書き、図8のように、 2枚のパレート図を横に並べて比較する。その不適合数の差が改善効果である。この事例では51個(約42%) の減少となった。(8月と11月の塗装個数と塗装製品構成はほぼ同じであったためにデータの補正は行わない)  

また、重点として取り上げた色ムラ不適合の順位も3番目に下がり、目標以上の効果が確認された。注)パレート図の比較を可能とするためには、縦軸の目盛りを同じにすることと、同じ数量のサンプルを取 ることが必要である。※その後、さらに改善を進め、現在では色ムラ不適合はほとんど出していない。

パレート図
図8 改善前と改善後の不適合項目別パレート図

(6)標準化(管理)の定着と予防処置
是正処置で取った、処理液温度の上限と下限の温度管 理の作業手順書と設備管理手順書をさらに見直すと共に、 担当者のOJT(教育・訓練)を行って標準化を図った。

また、処理液温度は管理図(図9) によって工程の管理を定着させた。また、予防処置として、同様の不適合の発生が予想される静電塗装ラインの化成皮膜処理工程にも同様の対策を講じて、管理することとした。

管理図
図9 化成処理液の管理図

【管理図の用途】
どんな同じ様な仕事をしていても結果は同じにはならない。大なり小なり結果はばらつくものである。いつどんなときに中心からどのくらいずれたかなど、異常な変化の有・無が点を記入すると同時に分かるようにつくられたのが、この管理図である。管理図はX-R管理図、P管理図など管理する値によって6種類がある。  

おわりに

QCの七つ道具はQCストーリー 「PDCA」(Plan:計画、 Do:実施、Check:照合、Action:修正)の中で、それぞれを駆使して問題を解決する手法である。
この道具を十分に使いこなせば、現場の問題の約95%解決すると言われる優れものなのである。  

道具は使うためにあるもの、この道具で身の回りに潜んでいるムダや不適合現象という「宝の山」をみんなで掘り出そうではないか。
この事例からも分かるように関係する人、みんなで取組むこと(チームワーク、チームプレイ)が成功の秘訣なのである。

(1999年2月26日刊行)