COMPANY
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東京都江戸東京博物館図書室
話し手
濱岡 智子さん(右)
都市歴史研究室 司書
稲垣 慶子さん(中央)
都市歴史研究室
教育普及担当係長 学芸員
鳥越 千尋さん(左)
都市歴史研究室 司書
聞き手
永沼 麻子
金剛株式会社 管理本部 広報室
※所属・役職は取材当時のものです

約4年間の長期休館を経て、2026年3月にリニューアルオープンを果たした「東京都江戸東京博物館」。その一角にある図書室も、伝統と現代が見事に調和する新たな空間へと生まれ変わりました。 漆を思わせる質感や江戸紫などの深みのある色調を取り入れた内装デザイン、利用者の多様なニーズに応えるゾーニング、そして貴重な資料を未来へ紡ぐ保存と活用の工夫――。 その背景にあるこだわりや学芸員さん・司書さんたちの連携、そして未来における「開かれた専門図書室」としての想いについてお話を伺いました。
今回のリニューアルの経緯と、以前の図書室と比較して大きく変わったポイントについて教えてください。
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設備や家具の経年劣化に伴うものがきっかけですが、同時にこれまでの「図書室らしい静寂とした空間」から、館のコンセプトにふさわしい空間デザインへと大幅に刷新しました。
最大のポイントは、江戸の文化や美意識を内装・家具デザインに取り入れた点です。家具の塗装には漆を思わせる質感や、深みのある朱色や伝統的な江戸紫をイメージした色彩を採用しました。スチール家具の無機質な印象を抑え、空間全体に江戸の文化である裏勝りという手法で 温かみと命を吹き込んでいます。また、閲覧机の幕板のくり抜き構造には江戸時代の橋の意匠をモチーフにするなど、見えない細部にもこだわりを詰め込みました。 レイアウト面では、入口近くの手前に子ども向け書籍や常設展示と連動した特集コーナーなどの手に取りやすいエリアを配置し、奥に進むにつれて専門的な資料へアクセスできるグラデーション状のゾーニングにしています。

幕板をくり抜いたこだわりの閲覧机

個人席にも同じ素材を用いた椅子が配置され、
空間全体の和の統一感を高めている
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貴重な資料を「保存」しつつ、利用者が「活用」しやすくするために工夫されている点はありますか?
博物館資料としての保存と、利用者の利便性をいかに高めるかは非常に重要な課題です。 展示面では、高気密(エアタイト)仕様のケースを導入しており、貴重書や繊細な資料も安全に公開・保存できる環境を整えました。さらに、通常の図書室では破棄されがちな書籍の外箱や帯も資料の一部としてすべて保管・保護しつつ、ポリプロピレン製の透明カバーをかけて帯を着けたまま提供しています。
「保存は誰かが将来使うために行うもの」という考えのもと、事前の申請や手洗いなどの適切な取扱いのもとで、貴重資料も可能な限り閲覧請求に応じられる体制を整えています。また、小企画や特集コーナーを通じて、貴重な資料を知っていただく“きっかけ”を意識的に創出しています。



博物館の中にある「図書室」としての独自の役割や、展示・学芸員の方々との連携について教えてください。
当図書室は、一般の利用者様へのサービスだけでなく、館内の調査・研究を担う学芸員を支える「資料室」としての重要な役割を持っています。 そうした機能をご紹介できるよう、常設展示室のゾーン分け(テーマ)に対応した書籍コーナーの設置や、当館学芸員の仕事を知っていただくために3ヶ月ごとに学芸員が選書テーマを入れ替える「学芸員の本棚」も展開しています。また、企画展や特別展コーナーの設置など、下階の展示室での体験と図書室での深い学びがシームレスにつながるよう柔軟に連携しています。 さらに今後は、展示資料を活用した子ども向けのワークショップを本室で展開するなど、「体験的に学べる場」としての連携も深めていく予定です

長期休館(約4年間)の間、オープンに向けて取り組んでいたことや苦労されたことは何ですか?
休館中も「リニューアル準備室」を設け、期間限定で閲覧サービスやレファレンス業務を継続していました。しかし、多くの資料を外部書庫に保管していたため、学芸員や研究者からの問い合わせに対して手元にある限られた資料で対応しなければならず、大変心苦しい思いを抱えながらの運用でした。 その一方で、全国各地の先進的な図書館や博物館へ見学・研修に赴き、多様な家具の選定やユニバーサルデザインの導入、利用者の行動パターンの研究など、新図書室のコンセプト固めに時間を費やしました。また、家具・サインの仕様調整など、細部にわたる具体的な準備を一つひとつ積み重ねてまいりました。

色彩の椅子が深みと上質な空間を演出

モチーフにした雑誌架のアクリル扉
リニューアルオープン後、利用者の客層や過ごし方に変化はありましたか?
オープン以来、来室者数は以前の2〜3倍以上に増加しており、平日の利用も大幅に増えています。 特に、お子様と大人が一緒に座れるよう特注デザイン(東京都江戸東京博物館のロゴをモチーフ)された机・イスを設置した「小中学生コーナー」が好評で、親子連れでのご来館が目立って増えました。また、厳しい会話制限を設けず、居心地の良さを重視したアプローチにしたことで、博物館の展示鑑賞後にふらりと立ち寄り長時間を過ごす方や、利用者同士の微笑ましい交流など、多様な利用スタイルが生まれています。


改修を経て、東京の歴史・文化発信においてどのような場所でありたいとお考えですか?
近年、東京の歴史や文化に対する関心が高まると同時に、インバウンドの増加で外国人の利用者様が増えています。それに伴い、スマートフォンや翻訳アプリなどのデジタルツールを活用した調査ニーズも高まっており、当室としても多言語対応やデジタル化に柔軟に対応できる情報発信拠点でありたいと考えています。
「展示を見て興味を持ち、さらに深く調べるために図書室を訪れる」という回遊・探求のサイクルを定着させ、誰もが東京の文化・歴史を多角的に学べる開かれた場を目指していきます。
新図書室が提案する「これからの時代の専門図書室のあり方」についてメッセージをお願いします。
私たちが目指すのは、年齢、国籍、障害の有無に関わらず、すべての人が安心して利用できる「インクルーシブな学びと交流の場」です。
江戸東京博物館の中にある専門図書室として、専門家のみが調査研究を行う場所にとどまるのではなく、下階の展示室で興味を持った展示内容をすぐに深掘りし、さらに深く学べる「探求の場」としての立ち位置を大切にしています。
また、貴重な現物資料を未来へ継承し、直接触れることができる体験の価値を守り続けていきます。展示や講座、ワークショップ等を通じた生涯学習の場を提供するとともに、会話や探求を楽しみながら誰もが居心地良く滞在できる専門図書室を目指していきたいと考えています。

好みや用途に合わせて選べる多様なイスを配置

設置された地図架
(取材日:2026年7月30日)
東京都江戸東京博物館図書室
所在地 東京都墨田区横網1-4-1(東京都江戸東京博物館7階)
TEL 03-3626-9974(代表)
開室時間 9:30~17:30
休室日 博物館休館日および蔵書点検日
>博物館の休館日 >休室日のお知らせ
入室料 無料
URL https://www.edo-tokyo-museum.or.jp/library/guidance/
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