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  • 技術ストーリー

”人・もの”に優しい空調技術

ダイキン工業(株)汎用空調生産本部設計部 三根 博史、オーケー器材(株)技術部 吉光 悟・渋谷 仁司

注意発行当時の記述について

本記事は、金剛株式会社が2001年02月15日に発行した機関誌「PASSION Vol.27」の内容を、当時の記録として公開するものです。

記事内の情報は発行当時のものであり、現在の状況とは異なる場合があります。また、当時の社会情勢や倫理観を反映した表現が含まれている可能性があり、現代の基準に照らし合わせると一部不適切と感じられる箇所もあるかもしれませんが、資料的価値を考慮し、原文のまま掲載しています。

掲載されている商品やサービスは、既に販売・提供を終了している場合があります。現行の製品については、改めて最新のカタログ等をご参照いただくか、弊社までお問い合わせください。


※ 本記事は、著作権法上の引用の範囲内で掲載しています。当時の記録として、皆様に楽しんでいただけましたら幸いです。

ダイキン工業株式会社
汎用空調生産本部設計部 三根博史

オーケー器材株式会社 技術部
吉光 悟 ・渋谷 仁司

はじめに

私達は、四季が織り成す様々な環境のもとで生活をしている。その環境に対応すべく、空調技術や住宅(居住空間)等が発達し住空間の環境が整ってきた。最近、健康・快適・安全志向が強まる中で室内の空気質改善に大きな関心が集まっている。室内の空気質環境には、大きく分けて4つの要素(温度・湿度・気流・清浄度)が関連し、これらの要素がうまく調和することにより快適な生活を実現できる。逆にこれらのバランスが崩れると、ストレスの増大・作業能率の低下を招くことになる。

また、ものに対しては対象(食品工場、病院、クリーンルーム等)により様々な空気調和の方式にて設計されている。例えば食品加工工場においては、人対象の冷房条件より低め(10℃~30℃)に室温を保つよう設計されている。本文では「冷やす」「温める」という空調の基本要素ではなく、昨今注目されている空気質及び調湿について最近の動向を述べたいと思う。

快適室内環境とは

快適な室内環境を作り出すために、温熱環境と空気質環境の調和が必要である。温熱環境のファクターには温度・湿度が含まれ、空気質環境のファクターには換気・清浄度が含まれる。それぞれのファクターに対し空調技術がある。温度(冷房・暖房)コントロールには温調機(エアコン・暖房機)が用いられ、湿度コントロールには除湿機・加湿機が用いられている。また、換気のコントロールは換気扇・全熱交換機等が用いられている。

清浄度に関しては、汚染物質の種類によって色々あるが、粉塵や浮遊微粒子などの除去には空気清浄機、臭い(ガス)には脱臭機等の機器が用いられている。このような空調技術の相互作用によって私達の生活環境における空気質のバランスを保ち、快適な室内環境をつくりだす。図1は多様な要素から成立つ室内環境の関係について図示化したものである。

快適室内環境
図1 快適室内環境の調和

空気質コントロール

空気質は各環境毎で異なる。ここでは「人」対象のビル建物環境・住宅環境と「もの」対象の環境について述べたいと思う。  

ビル建物環境

ビル建物環境には、「ビル管理法」により環境衛生上必要な事項が定めらている。ビル建物環境において粉塵濃度は0.15mg/m²以下、一酸化炭素(CO)濃度は10ppm以下、二酸化炭素(CO2)濃度は1000ppm以下及び相対湿度は40~70%RH等規制されている。これらの基準値を満足させる為に、粉塵濃度のコントロールには、エアコン組込み形の空気清浄機や中・高性能フィルタ(図2)を用いて浮遊粉塵等の除去を行い、粉塵濃度を基準値以下にする。一酸化炭素・二酸化炭素濃度のコントロールには換気や外気取入れ(図3)等の方法により、基準値以下にする。最後に湿度のコントロールにはエアコン(冷房時)による除湿を行い、湿度調節する。これらのファクターと合わせて、温度、気流をコントロールすることで、衛生的環境が保たれるとされている。  

【ビル管理法】(通称)

昭和45年に「建物における衛生的環境の確保に関する法律」が制定され、環境衛生上、必要な事項が定められている。  

  1. ビル管理法適用建築物

・建物の用途が興行場、百貨店、集会場、店舗、事務所、旅館、学校等々。
・建築物の規模は延べ3000㎡以上。(但し、学校は8000㎡以上)  

  1. ビル管理法による建物内環境基準
高性能フィルタ
図2 高性能フィルタ
外気取り入れ
図3 外気取り入れ

住宅環境

住宅(居住空間)では近年、室内環境の空気質に対し“安全・快適・健康”が求められている。具体的に言えば、安全:排ガス(NOx、SOx)、ウィルスなどの無い空間、快適:ホコリ・臭いの無い空間、健康:花粉症・アレルギーにならない空間などである。住宅環境においてもHASS(空気調和・衛生工学会規格)・WHO(世界保健機構)等の基準・目標値が設けられており快適な住宅環境をつくるため、設計がされている。最近注目されている化学物質過敏症についてはTVOC(総揮発性有機化合物)濃度は300µg/m²以下になっている。最近、このよな基準値・目標値を満足するために住宅環境では、エアコン・換気扇等に加え、除湿機、加湿機、空気清浄機、脱臭機等が導入されるようになってきた。

ここで、空気清浄(脱臭)について触れたいと思う。空気清浄は空気中の汚染物質を除去し、空気を浄化にする。汚染物質には、粉塵(タバコ煙・ホコリ・ダニ・花粉等)、ウィルス・雑菌(カビ・細菌)、ガス・臭い(CO・CO2・NOx・SOx・ホルムアルデヒド・オゾン等)等がある。このような汚染物質によって汚染された空気は人体に不快感を与え、疾病・ストレスの原因や作業能率を低下させる原因になる。また、汚染物質は化学的に侵食し、材質を劣化させる原因になる。汚染物質を除去する方法には粉塵等の除去と臭い(ガス)の除去がある。ここではその一例を紹介したいと思う。

  1. 集塵(塵埃等の除去)について

集塵方法の種類とフィルタによる、抗菌・抗カビについて紹介する。
空気清浄機は目的によって、集塵の方式を用途別に使い分けている。例えば、捕集したい粉塵の中心粒径が小さい場合は、電気集塵方式やフィルタであればHEPAフィルタ等を用いる。また、中心粒径が大きいものであれば帯電フィルタ等を用いる。集塵の方法とフィルタと浮遊微粒子の関係を図4と表1に示す。  

●抗カビ・抗菌
カビは、梅雨時期から夏季にかけて高温・多湿の上に無風状態になると、粉塵などを媒体として、発生しやすくなる。空気清浄機のフィルタ等に抗カビ・抗菌剤を用いて、捕集したカビ・菌の増殖を低減させる方法がある。 たとえば、空気中の浮遊したカビの胞子が書物や書類に付着する量を低減させることができる。

集塵の方法
図4 集塵の方法
フィルタと浮遊微粒子の関係
表1 フィルタと浮遊微粒子の関係
  1. 脱臭(臭いの除去)について

臭いの種類は約40万種類と言われているが、全ての臭いが人に対して、不快感等をあたえるものではない。その内、悪臭防止法に指定されているものは22種類(’94)である。
臭いの除去の方法には換気・拡散、マスキング、殺菌、脱臭がある。ここでは脱臭の方法と最近よく用いられている、酸化チタンを用いた脱臭について紹介する。脱臭の方法には大きく3種類ある。
【吸着】活性炭などの多孔質な媒体に臭い成分を吸着させて臭いを取り除く。飽和すると交換が必要。【中和】フラボノイドなどの物質を用い中和分解により臭いを取り除く。
【酸化】オゾンや酸化チタンなどを用い臭い成分を酸化させて臭いを取り除く。
光触媒の作用は、植物の葉の表面で行われる「光合成」に似ている。光合成は葉緑素を触媒にして二酸化炭素と水から酸素をつくりだすが、光触媒は酸化チタンを触媒にし、光があたると、酸化チタンのもつe-とh+に空気中の酸素と空気中の水分が反応してOH(水酸基ラジカル)とO2-(スーパーオキサイドイオン)という2種類の物質を生成する。

これが強い酸化分解力をもち、たとえば細菌では、細胞膜を損傷させて除去し、臭い分子は、水と二酸化炭素という無害の物質に分解する。  

以上、空気清浄と脱臭の概要について述べてきたが住宅環境の中で、安全・快適・健康のニーズを満足させるためには、今後益々、空気清浄・脱臭の必要性が重視される。

脱臭方法
表2 脱臭方法
酸化チタンを用いた脱臭の効果
図5 酸化チタンを用いた脱臭の効果 ※水酸基ラジカルおよびスーパーオキサイドイオンは光触媒上のみで生成し、空気中に漂うことはない。

ものを対象にした環境

“もの”の環境は、分野毎の様々な目的により温熱環境・空気質環境共に環境が設定されている。空気質環境をコントロールする方法は前述と大きく違いが無いため、ここでは除湿(調湿)について触れてみたい。除湿は各分野毎で、それぞれの目的(防錆・食品および材料の品質向上・防カビ・乾燥および結露防止等)により使いわけされる。 分野毎の湿度環境は、例えば図書博物館環境で40~50%、製剤(粉薬貯蔵包装、製粉室)で35%、醸造(絞り室)で75%等様々である。表3に分野別の湿度の一例を示す。
次に、除湿の代表的な方法である、冷却式除湿機と乾式除湿機の使われ方と仕組について説明する。使われ方の特徴は図6に示す様に、冷却式除湿機は温度範囲は20℃以上、湿度40~60%に保つような場合に使われる。また、乾式除湿機は低温域(10~20℃)以下、低湿度(20~40%)が要求される様な場所(分野)に使われる。

分野別湿度
表3 分野別湿度
除湿器の使用範囲
図6 除湿器の使用範囲

次に仕組について説明する。  

【仕組】

1.冷却式除湿機
室内の湿った空気を吸い込み、冷却器で空気を冷やして除湿(湿気は水滴となって排水される。)し、再熱器で冷却空気を再熱して乾燥させる。(図7)  


2.乾式除湿機
塩化リチウムを含浸した活性炭の働きにより空気中の水分を逃さずキャッチし、ロータリー機構により連続的に温度や湿度に関係無く水分子を除去できる。低湿度・低温の条件下でも効率的な除湿が行える。(図8)  

冷却式除湿器のしくみ

まとめ

これまで、空気清浄と調湿について述べてたが、“人”環境・“もの”環境で快適な室内環境をつくるためには、“人”環境には「安全に」「快適に」「健康に」、“もの”環境には「品質向上・品質維持」等を意識し、私達は日々改善していかなければならないと考える。

乾式除湿ローラーのしくみ
図8 乾式除湿ローラーのしくみ

(2001年2月15日刊行)