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ちょっと役立つ金剛の知恵袋

保存・展示・修復関係

【タキヤ株式会社 様】/作品の「美」と「安全」を支え続ける、展示器具のパイオニア

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 作り手の皆さまの想いに迫るインタビュー企画、第2回をお届けします。

 今回お話を伺ったのは、「ピクチャーレール」を世に送り出した展示器具の専門メーカー「タキヤ株式会社 様」です。
 「世界の文化遺産を後世に」という理念のもと、作品の「美」と「安全」をいかにして両立させてきたのか。その100年の歴史と、製品に込められた想いを紐解いていきます。

[寄稿・ご回答] タキヤ株式会社 営業部 課長 S・H 様 
[構成・編集] 金剛株式会社 保存と展示の専門店『筧-KAKEHI-』 岩田
※所属・役職はインタビュー当時のものです。

貴社の、展示分野における強みやこだわりをお聞かせください。

 弊社は「世界の文化遺産を後世に」の理念のもと、ピクチャーレールを考案した展示金具専門メーカーとして、作品の美と安全を支える様々な製品やサービスを提供しています。
 文化遺産といっても、美術館や博物館の文化財だけではなく、子供の絵であったり、思い出の品であったり、その人にとってのかけがえのないものを、安全に美しく遺していくお手伝いをしたいと考えております。
 また、学芸員や建築設計者など現場の声をもとにオリジナルで開発した製品を数多く取り揃え、展示用品の分野において長年積み重ねてきた信頼と実績を強みとする企業です。
 現在では、弊社の製品は世界39か国の美術館・博物館に納入されています。

主力製品の魅力や、製品化の背景、開発時のこだわりなどを教えてください。

 看板製品は「コレダーライン」という絵画を主とする壁面展示を支えるピクチャーハンギングシステムです。作品の移動や高さの調整が自在にできるのはもちろんのこと、長年にわたる研究と緻密な検証を重ねて、安全性を高めるための様々な工夫を施しています。今では世界の標準品として、美術館や博物館の本格展示から一般住宅での個人利用に至るまで、多くの国と地域で貴重な絵画や掛け軸を支えています。

ピクチャーハンギングシステム コレダーライン/ピクチャーレール

 他の主力製品としては、多くの美術館でスタンダードとなっている「結界」や「アームヒートン」、「ファームフック」、「サインスタンド」などがあります。
 また、2025年6月より販売開始した新製品「衣桁(いこう)」が使い勝手と汎用性に優れた製品設計として、学芸員をはじめとする専門の方々から好評をいただいています。

 専門性が高くニッチな分野を極めていることから、他社にはないタキヤでしか製品化されていないアイテムも複数抱えています。安全性と作品を疎外しないシンプルなデザインをベースに、作品の展示や保存に寄り添う新たな製品の開発や既存製品の改良に積極的に取り組んでいます。

今後の展望と、貴社の経験や技術を活かして社会に届けたい価値や想いをお聞かせください。

 1923年(大正12年)創業し、2023年には100周年を迎えました。
 文化財に携わる大阪の企業であったことから、1995年 の阪神・淡路大震災でボランティアの「文化財レスキュー隊」として活動した際に絵画の安全性に直面し、地震から作品を守らなくてはと痛感しました。その痛みをきっかけに、揺れによる負荷や落下防止の対策として、ワイヤの太さやフックの固定機構、収蔵庫用の保管器具などを見直し、地震対策向け製品を開発しました。その後も、大きな震災があった際には現地調査に向かい、どのような揺れ方をしたのか、落下をしたものと落下しなかったものの違いなど詳細なヒアリングを行い、切れたワイヤの分析や耐震試験を実施しています。

  「文化遺産を後世に」の理念のもと、あらゆる物理的な損傷要因から守りつづけるため、新たな製品開発やアップデートを積極的に行い、信頼と実績を重ねてまいりました。これからも美と安全を支えるパートナーとして、美術館や博物館をはじめとするタキヤ製品を愛用いただいている皆様を総合的にサポートしていきます。

***

 タキヤ株式会社様、このたびは貴重なお話を誠にありがとうございました。

 作品を「美しく」、そして災害などから「安全に」守り抜く。その両立を追求する強い意志と、100年の歴史に裏打ちされた技術に深く感銘を受けました。
 ぜひ、タキヤ様の製品がもたらす安心感と、空間を引き立てる洗練された佇まいを実感してみてください。

 私たちの作り手の情熱を巡る旅は、これからも続きます。次回の更新も、どうぞお楽しみに。

【ピクチャーレール】

【インタビュー企画 第1回 / 株式会社修護 様】

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