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「前略 製造業ノ採用担当者殿ー優秀理系学生採用ノココロ」

金剛株式会社

1.理系学生の製造業離れは終息したか

バブル崩壊までの就職先の選考基準は偏向しており、経済史では異端児であった。
株式会社リクルート広告事業部企画室が編集した「理系学生の製造業離れの実態分析ならびにその対策に関する報告書(H2.3発行)」の学生気質分類にも当時の傾向が現れている。

  1. 文系就職タイプ = 新・モーレツ主義
    生活実利(給与以外)への関心が比較的低く、「仕事への意気込み」からやり甲斐を求める。「業界トップクラス」を重視しない仕事志向・プロフェッショナル志向。
  2. 理系くずれ文系就職タイプ = AV(付加価値)ジェネレーション就職者
    「国際性」「社風」などの都会的センス=他人からどう見えるか、「転勤が少ない」「給与が高い」「休暇休日」などのオフビジネス充実の要求が強い、多くの文系学生と同様のエグゼクティブ志向。
  3. 文系くずれ理系就職タイプ = 前向き、開拓挑戦志向理系
    理系就職タイプ以上に「海外へのチャンス」「多彩な業務」「技術力」「研究開発のチャンス」「市場将来性」などを求めるアグレッシヴタイプ。
  4. 非製造業技術者タイプ = いわゆるファミリー志向
    「福利厚生」「両親の希望」「転勤が少ない」「休日休暇」など、生活を考慮した家族重視タイプ。(1)のタイプと好対照。「技術力」を重視せず理系就職タイプとも異なる 。

これらの分類とそれぞれへの採用戦略はかなりイメージ先行の感じがあり、まさにバブル経済の落し子ではあるが、本質を捉えており、現在でも参考にすべき点が多いので、ご一読をお勧めする。

2.景気の沈静期こそ優秀な学生を採用するChanceである

1992年度のデータでも、確実に金融業への就職者は減っている。では、製造業は名誉挽回するか!?可能ではあるが、相当の努力が必要だと言わねばならない。超売手市場は一段落したが、全国の企業の総求人数62.6万人に対し、民間企業就職予定者は23万人で、依然約40万人が不足している。

求人数と学生数の関係

多くの大手企業では、採用予定人数は減らしたものの、採用費用をUPしている。景気の波が静かな時こそ、どれだけ優秀な素質をもった学生を採用できるかが企業の将来を左右すると言われている。来るべき好景気時代に、他社よりも優れた新製品を売り出すため、この時期に研究開発に従事させるのである。
一人の優秀な研究員の存在が、一企業を業界トップに登らしめた話は、枚挙に暇がない。また、大手企業の採用枠の縮小により、中小企業にとっても、より優れた人材を獲得する可能性が上がることになり、各社虎視眈々と技術者の卵を狙っている。


産業界のバランスが正常に戻りつつある現在、学生たちの目は製造業を始め、各業種に相応に戻ってきてはいるが、その見方自体は以前と変わらず、またはそれ以上にシビアである。その傾向と採用戦略を「1992採用マーケットの特徴(4年制大学男子)」(リクルート広告事業部企画室発行)を材料に考察する。

選社理由の変化(複数回答)

(1) 選社理由の中で重要度がUPしているのは、文理とも給料や休日・社宅などの待遇・福利厚生に関する項目、企業イメージである。「採用したらそれで終わり」ではなく、入社後の生活(人生)をいかに有意義に過ごせるかが重要なファクターとなっており、ゆとりや企業の倫理観などが問われる時代になっている。
(2) 企業規模については、必ずしも大企業にこだわっておらず、学生の7割程度が中堅・中小企業を訪問している。
(3) 今までは、いかに優秀な理系学生を確保するかは、教授連にコネがあるかにかかっていた。文系学生の羨望をよそに、理系学生は、早々と、いわゆる優良企業への就職が決定したものだった。いまだに、多くの学生が就職先へは推薦状を持って活動しているが、全面的に教授の意向によって企業を選択する学生の数は少なく、推薦状の有無によらず、本人の意志により就職先を決定する「自由応募型」就職の割合が年々高まっている。

3.採用担当者は、「101回目のプロポーズ」を真剣に見なくてはならない

採用戦略は、「いかに女の子(女性の皆さま、失礼!)を口説くか」と心得は同じだと言われる。一夜限りの遊びならいざ知らず、本気で彼女にしたいと思った女性に対しては、綺麗事や表面上の取り繕いはせず、誠心誠意つきあうものであろう。企業と学生の関係もまさにこの通りである。下手に格好つけるより、たとえ欠点であっても、手の内を明かす方が好意的に受け取られる。付け焼き刃がばれた時の反動の方が大きく、深手である。せっかく採用しても、「こんなはずじゃなかった。さようなら。」と第二新卒にしてしまうのでは、あまりにもったいない。

アプローチから、正しいつきあいのステップを経て、ゴールへ。真心を持って口説かれて、悪い気がする人間が居るはずない。要は誠意の度合であり、真剣さである。右図はあるべき「採用=口説き」の手順である。至極真面目に検討して頂きたい。この間に「合説(合同説明会) = 合コン」の段階ももちろん考えられるが、下心あってのそれらへの参加を誘うよりも、あくまで第一ステップは正当な方法が望ましい。

(1992年5月14日刊行)