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本記事は、金剛株式会社が1998年6月12日に発行した機関誌「PASSION Vol.22」の内容を、当時の記録として公開するものです。
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寄稿者:熊本工業大学 建築学科 助教授 岩原 昭次
はじめに
図書館は図書を通して人的交流・学習や情報交換の場であり、多くの人が利用できるように、閲覧室等の広い室内空間に様々な書架が設置されている。また、古書等のような文書類という文化遺産の保持の場でもある。
近年ではそれらの場を更に充実・拡張する為に高度情報化社会に対応した空間も多く加わってきている。それに伴い、図書類・文書類の維持・管理等に対してもますます、高度な機能化が図書館に要求されてきている。
兵庫県南部沖地震(1995年1月17日午前5時46分)が、約10秒間に震源の深さ14.3kmのところで活断層が淡路島近辺から神戸方向に約25kmにわたって破壊して起きた。マグニチュード7.2の規模、典型的な都市型直下地震である。神戸海洋気象台での地震計は東西方向818gal、南北方向617gal、上下方向332galの最大加速度を記録。最大加速度818galは明治以来、我国では最大の観測記録となり、阪神淡路大震災と命名された。
被害は直接の死者約5,500名、負傷者約42,000名、家屋の全半壊約210,000棟、公共建物の被害約550棟であり、1923年9月1日の関東大震災以来の大惨事となった。また、気象庁によって制定された震度VIIの区域の存在が初めて確認された地震でもあった(※)。
※震度VI:家屋の倒壊が30%以上及び山崩れ、地割れ、断層等を生じる地震動。(1995年1月時における気象庁濃度階)
地震による図書館の被害としては、一般の事務所建築等における使用者等に対する被害の他に、利用者及び図書・文書類等の被害が加わる。更に書架や図書等が利用者等の人命に危害を及ぼす。
ここでは利用者が最も多く且つ出入りが頻繁な一般閲覧室の開架書架に焦点を当て地震対策を考えてみる。
阪神淡路大震災による事例
JLA施設委員会*では1995年3月に震度VII区域近辺の 図書館( 図1●、□印の位置)等の被害調査を行っている。これをもとに一般閲覧室内の被害事例を図書の落下・被害、書架の転倒、書架の移動、書架本体部品の被害、収容物の飛出し、及び室内設備による被害の6つに分類して示す。

【図書の落下・被害】
①図書の落下、飛散りは書架が転倒・大破すれば当然起こるわけであるが、書架が床や壁に固定、あるいは天継ぎしてあって被害がなくても、どの図書館でも例外なく見られた。一般に書架下段よりも上段からの落下が多く、特に4段目以上の棚からの落下が多い。
②製本雑誌等の重い本は棚を越えて飛んだ。
③水道管やスプリンクラー等のパイプが外れたり、割れたりして床に水が溜まり、そこに落下した図書等が再利用できなくなった。


【書架の転倒】
①壁に固定していなかった書架は転倒したものが多い。
②連結してなかったスチール製雑誌架は将棋倒しとなった。
③床に留めたり、天継ぎ等の転倒防止が図ってあっても、取付ビスが外れて転倒し、支柱や棚板が歪み、再使用ができなくなった。
④側板と天板に木製カバーを付けたスチール製書架では床固定のボルトが引き抜かれ、あるいはボルトは残っているが書架本体の接合部が破断して転倒した。
⑤木金混構造書架ではスチールパイプの天継ぎを付けていたが、一部分で将棋倒しになり大きな被害を受けた。
⑥単柱式書架は複柱式に比べて転倒し易い。
⑦奥行きの深い木製雑誌架は被害が少なかったが、それでも転倒したものがあった。
⑧カウンター内の床置き書架が転倒してカウンターを直撃した。


【書架の移動】
床固定していない低層の木製書架が書架間通路を塞ぐほど床面上を大きく移動したり、直角方向などに向きを変えた。
【書架本体部品の被害】
①スチール製書架で書架間に天継ぎが施されていたが、 床・壁固定されてなかった為、書架相互の揺れによって天継ぎが座屈変形し、ねじれて傾いた。
②木製書架の被害は書架最下部で連方向の幕板、側板最上部における天板の取付部等隅角部であった。
③背板がなく、棚板をダボで受ける形式の木製書架は揺れに弱く、バラバラになって崩壊した。
④木製4本脚付き家具は転倒。全面の脚が壊れているのもあった。

【収容物の飛出し】
木製マイクロケースやカードケース等の引出しが飛出して中のものが散乱した。
【室内設備の被害】
①天井からの落下物によって防煙垂れ壁ガラスが割れて床に破片が散乱した。
②照明器具・空調吹出口のカバーが落下した。
③カウンター上部の照明器具付き案内サインボックスがカウンターを直撃した。
地震対策・まとめ
阪神淡路大震災における一般閲覧室の被害は次のように集約できる。
- 書架の被害の有無に関係なく、棚に置かれた図書は落下した。特に上段からの落下が著しい。給水設備の被害を受けて床が水浸しになると図書は再使用ができない
→(財産の損失・避難通路の確保) - 書架は、床・壁等に堅固されていても転倒等の被害を受けた。
天継ぎはあまり効果がなかった
→(人的被害、避難経路の確保・書架の修復) - 床固定してない低層書架は大きく移動する事があった
→(人的被害・書架の修復) - 天井からの落下物が書架等に落下した
→(被害の増大・避難経路の確保)

これまでのことから、一般閲覧室に対する地震対策として図2のような概念図にまとめることができる。
ポイントとしては、図書を落下させないこと、書架が健全な状態を保っていて、利便性を損なわないこと、及び建物の二次部材からの被害を防ぐことの3点が理想であろう。
書架構造自体の地震対策としては、耐震構造と免震構造の2つを考えることができるが、ある程度の被害を許容するという観点に立てば、耐震構造でかなり書架の安全性を確保することが可能である。
しかし、周知のように書架等のように床上に設けられる物品は地震時に建物本体部分以上に地震力が増幅するので、書架自体にもより確かな耐震補強が必要となる。また、図書の落下に対しても十分考慮しなければならない。しかしながら、このような補強を行っても、予期できないような地震に対してはその安全性が十分に保証できない。
免震構造を基本にする場合は、書架を免震にすれば良い。書架に免震機構が施されると、建物から伝わってくる地震の強さはかなり軽減されるので書架自体の耐震補強をさほど必要とせず、図書の落下もあまり生じない。また、予期できないような地震に対しても耐震補強よりはかなり安全性が高い。地震は水平2方向及び上下方向から建物を通じて書架に伝わってくる。
このうち、書架にとって最も重要なことは書架自体の転倒・破損を防ぎ、書籍の落下も防ぐという観点から、水平2方向からの地震である。水平2方向からの地震力に対して免震効果が書架に付与できれば閲覧室等の地震被害をかなり低減できるであろう。
[参考文献]*JLA施設委員会:阪神・淡路大震災による図書館の被害調査報告(1995年3月)、図書館雑誌、第89巻第6号、 1996.6
(1998年6月12日刊行)
