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資料の劣化には様々な要因がありますが、中でも虫による食害やカビ・空気汚染は、
日常の保存環境によって大きく左右されます。
今回は、大切な資料を日常管理の中で守っていくための「文化財IPMメンテナンス」の基本的な考え方と、
現場で実践できる日常管理のポイントについて詳しくご紹介いたします
💡この記事のポイント
- 文化財IPM(総合的有害生物管理)の基本サイクルが理解できる
- 薬剤だけに頼らない、現場で実践できる防虫・防カビの具体策がわかる
- 早期発見・対処につなげる日常管理の具体的な工夫がわかる
👉こんな人におすすめ
- 博物館・美術館・図書館・公文書館等で資料の日常管理・保存を担当されている方
- 収蔵庫や展示室の虫・カビ被害に不安を感じている方
- 文化財IPM(総合的有害生物管理)を現場に導入・定着させたい方
目次
文化財IPM(総合的有害生物管理)とは?
文化財の劣化要因は「生物的劣化」「物理的劣化」「化学的劣化」「人的劣化」「天災による劣化」の5つに大別されますが、これらは単独ではなく複合的に作用して発生します。
中でも日常的に起こりやすい虫やカビの被害に対し、「化学薬剤だけに頼らず、計画的・日常的に生物加害を防除し、総合的に管理していく手法」が文化財IPM(Integrated Pest Management:総合的有害生物管理)です。
文化財IPMでは、以下の5つのステップ(環境保全活動サイクル)を日常的に繰り返し行い、
保存環境を総合的に整えていきます。
- 回避 (Avoid):被害要因(虫・カビ)を寄せつけない
- 遮断 (Block):建物や部屋への侵入ルートを断つ
- 発見 (Detect):モニタリングや点検で早期に発見する
- 対処 (Respond):発生時に安全かつ適切な方法で除去・隔離する
- 見直し (Review):日常管理による予防・対策

現場の負担を抑えつつ資料の安全を守るため、このサイクルを日常管理に組み込んでいきましょう。
1.回避 Avoid|文化財害虫・カビを寄せつけない環境づくり
まずは、虫やカビが発生・繁殖しにくい「環境」をつくることが第一歩です。
文化財害虫を寄せつけないポイント
文化財害虫(シミ・シバンムシ・カツオブシムシ・チャタテムシ等)による被害は、
下記の条件が揃うと発生しやすくなる傾向にあります。
- 外部からの侵入経路がある
- 過度な湿気、ゴミなど文化財害虫の餌となるものがある
- 清掃が行き届かない場所や暗所がある
日常的な清掃により、埃やゴミを取り除くことが最も有効な回避策となります。
カビ被害を防ぐ温湿度・収蔵環境の管理
カビ対策の基本は、「湿度管理(=相対湿度60%RH未満の維持)」です。
- 外壁、床面、空調機の冷気が直接あたる所など、結露しやすい場所は特に注意が必要
- 収蔵棚については、一番下の棚板は最低でも100mm、可能ならばそれ以上床面より高く上げると効果的

2.遮断 Block|侵入ルートの遮断
建物外部や、外部からの持ち込み資料を経由した、害虫やネズミなどの侵入を防ぎます。
- 開口部の対策:建物の開口部や隙間に網戸や防虫ネットを取り付ける
- 新収蔵品・借用資料の受け入れ点検:外部から搬入される資料は、持ち込み時に虫やカビが付着していないか確認を行う
- 出入り口の衛生管理:出入り口に粘着マットや室内履きを設置し、塵埃を持ち込まない
- 清掃と温湿度管理の継続:清掃を日常的に行い、文化財害虫の栄養分・繁殖場所を除去する
3.発見 Detect|日常点検で早期発見
日常点検で早期発見し、拡大の阻止と対処を早い段階で行います。
モニタリングトラップ調査
歩行性害虫の生息状況や侵入経路を特定するため、調査用トラップを定期的に設置・確認します。
【取扱いの昆虫生息調査用トラップ】
- インセンクトトラップ(PP製 / 紙製)
水に強いPP製とコストに優れた紙製をご用意。500枚入り。 - LCインジケータ
グレーで施設内に設置しても目立たない色味。50個入り。 - IPMトラップ
捕虫した虫が見えないよう虫の進入窓が下向きになっています。50枚入り。
目視による日常点検
懐中電灯などのライトを斜めから当てると、埃やカビが浮かび上がり観察しやすくなります。
専用機材・専門業者による総合調査
目視で判別が難しい場合や、施設全体の環境を正確に把握したい場合は、
「紫外線調査」、「付着菌調査」、「落下菌調査」などの専門の環境調査を導入します。
💡 専門調査のご相談について
金剛株式会社では、専門業者と連携した総合的な環境調査を承っております。
詳細は金剛総合カタログVol.11 P.183(昆虫調査・カビ調査)をご覧の上、
お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。
4.対処 Respond|発生時の初期対応と隔離の手順
万が一、虫やカビが発生してしまった場合は、周囲の資料へ被害が拡大しないよう速やかに対処します。
文化財害虫が発生した場合
直ちに文化財害虫の拡散・被害を阻止するために隔離し、
駆除の対象や被害範囲、文化財の材質を考慮した適切な方法で対処します。
例)低酸素濃度処理、二酸化炭素処理、低温処理、など
カビが発生した場合
該当資料を隔離し、発生場所の水分除去・湿度を下げることが重要です。
カビを放置しておくと、他の資料へのカビの繁殖や文化財害虫の誘引の原因となります。
5.見直し Review|日常管理による予防・対策
文化財IPMは、一度対策をして終わりではありません。
定期的に計画と結果を振り返り(Review)、改善していくことが重要です。
- 定期的な清掃を実施し、害虫の栄養分やカビの発生原因となる埃を確実に取り除きます
- カビ対策の基本である「水分のコントロール」ができているか確認し、湿気だまりを作らず、常に相対湿度60%RHより低く維持できるよう調整します。
- トラップデータの分析:捕獲された虫の種類や数を記録、分析して予防策をアップデートします。
こまめな掃除や作品のクリーニングは、カビの胞子や栄養源を豊富に含む汚れ・埃を除去するため、非常に有効な予防策となります。
まとめ|まずは「現状を知る」ことから始めましょう
文化財IPMメンテナンスを始める上で、大切なのは「まず現状を正しく把握すること」です。
現在の環境や害虫・カビの生息状況を把握した上で適切な対策を立てることが、効果面・環境面・経済面の総合的な観点から見て最も有効であり、現場への負荷も少ない環境管理につながります。

出典:『金剛株式会社 総合カタログVol.11(P.167-183)』金剛株式会社
保存と展示の専門店『筧-KAKEHI』は、文化財IPMの考え方も取り入れながら、
文化財や貴重資料を後世に繋いでいく皆さまのお手伝いをしています。
【▶ 防虫・防カビ関連商品を見る】
【▶ 調湿・温湿度管理商品を見る】
▼保存と展示の専門店『筧-KAKEHI-』URL:
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