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100年の歴史を越えて、
世界と地域に向けたビジョンの体現

東北大学附属図書館


interview

話し手:芦原 ひろみさん(東北大学 附属図書館 情報サービス課 参考調査係長)、村上 康子さん(東北大学 附属図書館 情報サービス課長)、吉田 芙弓さん(東北大学 附属図書館 情報サービス課 閲覧第一係) ※所属・役職は取材当時のものです。

 
 

東北大学附属図書館 本館 納入事例紹介ページはこちらから

 
 
 今回は、2011年に創立100周年を迎えた東北大学附属図書館にお邪魔しました。2007年には東北大学としても創立百周年を迎えられたそうで、大学・附属図書館がそれぞれ100周年というメモリアルを経てどのように生まれ変わり、東北という地でどのような役割が期待されているのか教えていただきました。
 
 

2012年10月に整備が完了した附属図書館の1Fメインフロア
正面入り口から館内に入ると大規模なラーニング・コモンズが広がる
 
 
 ―東北大学は2007年に創立100周年を迎えられたそうですね。近々、地下鉄の新しい路線ができて市街地とのアクセスも良くなると伺いました。
 
 川内(かわうち)地区キャンパス計画は今年(2015年)12月の地下鉄東西線開通を意識して行われています。東西線が開業すると、仙台駅からのアクセスが格段に良くなります。2007年に大学敷地内に改修オープンした川内萩ホールの近くには仙台国際センターがあるので、両施設が一体で大規模な学会や国際シンポジウムを開催することができるようになりました。さらに本学の周辺一帯は仙台城址、仙台市博物館、宮城県美術館などが集中 していますので、地下鉄が開通して中心街とのアクセスが良くなれば、東北 全体の中でも文化・学術の拠点として、仙台市と本学が果たす役割が広がることになります。  
 
 
2007年にオープンした
東北大学百周年記念会館 川内萩ホール
 
 
―附属図書館本館は昨年(2014年)10月に1号館がリニューアルオープンされたそうですが、リニューアルに至る経緯をおしえていただけますか。 
 
 2009年にたちあがった「スペースワーキング」の検討がそもそもの始まりでした。施設の老朽化、書庫の狭隘化が進む図書館のスペースをいかに有効活用するかという検討会です。最大の課題は、すでに飽和状態となっていた地下書庫の蔵書の再配置と利用者スペースの見直しでした。当初、図書館創立100周年にあたる2011年を目標としていましたが、東日本大震災の影響で計画の中断を余儀なくされました。その後、震災か らの復旧工事等が行われ、1Fメインフロアのラーニング・コモンズ整備や 地下書庫の完全電動集密化を経て、2014年には2Fのグローバルフロアの整備も完了しました。この間にアクティブラーニングに対する文部科学省の方針が打ち出されたり、大学全体でグローバル化の流れが加速したりといったことがあり、大きな流れに乗って整備計画を進めることができました。  
 
 
第3回国連防災世界会議(2015.3.14-18)の告知ポスター
川内萩ホールは総合フォーラム会場、隣接する国際センターは本体会議会場となった
 
 
―グローバルフロアは広くて明るく、とても目を引くスペースですね。グロ ーバルフロアの整備に至った背景と具体的な活動について、少し詳しく教えていただけますか? 
 
 東北大学は2010年に「Global30」という文部科学省事業に採択され、国際人材の育成に積極的に取り組んで きました。2013年には里見総長による「里見ビジョン」が全学的観点から策定され、2014年には「東北大学グローバルビジョン」が打ち出されました。「グローバル人材の育成」はこれらの流れの中で一貫して大きく取り上げられているテーマです。 図書館としてもこれらの事業の一環としてグローバルフロアを整備しました。留学生のケアは主に教育・学生支援部の業務ですが、このフロアでは、図書館として行うべきグローバルラーニング支援を行っております。授業などでグローバル人材育成に力を入れている大学はたくさんありますが、当館は留学生課や国際交流課といった関係部署や教員との連携を図りながら進めています。グローバルフロアのグローバル学習室は イベント時、最大120名の収容が可能です。実施するイベントや授業の規模 によっては、中央部に設置可能なパーテーションで部屋を半分に仕切るなど柔軟な運用が可能です。
 
 
国連防災世界会議にあわせて図書館で行った展示の様子
 
 
 具体的な活動としては、留学を希望する学生向けの事前研修会や、全学教育の授業の他、グローバル人材育成に関係した様々なイベントを催しています。昨年度は毎週木曜日に海外で 働いている日本人ビジネスマンを迎えて自身の経歴を語っていただくという学内団体のセミナーも行っていました。月~金曜の午後は日本語・英語のほかにインドネシア語や中国語、韓国語などを母国語とする留学生に「留学生コンシェルジュ」として日替わりで勤務していただいています。彼らには日本人学生、留学生の語学学習のサポートや図書館の案内などをしていただいています。
 学内でもグローバルフロアの注目度はかなり高いようで、学生さん同士のハッカソン ※ で使いたいというご要望や、就職の模擬面接で使いたいといったようなご要望を頂いたこともあります。残念ながらこのフロアの利用はグローバル人材育成という趣旨に適うものにしていますので、それ以外のご要望については多目的室やメインフロアなど館内の別のスペースをご案内するようにしています。グローバルフロアができたことでさらに図書館全体の施設利用が増えているようです 。
 
 
2014年10月に整備が完了したグローバルフロア
英語多読リーダーズ、留学情報資料など資料面での充実はもちろん、
留学生支援イベントの開催など、グローバル人材育成の重要な拠点となっている
 
※ ハッカソン… 同じテーマに興味を持った開発者が集まり、協議・協力しながら短期間でアイディアをぶつけ合い、成果を競い合う開発イベント 
 
 
―その他、附属図書館としては、ビジョンに沿ってどういったことに取り組んでいらっしゃいますか? 
 
 図書館では所蔵資料を最大限活用して社会や地域に知を還元することを掲げていますので、定期的に所蔵資料(主に貴重書)を公開するための展示会や講演会を開催しています。当館は代表的なコレクションとして、夏目漱石の旧蔵書約3,000点からなる『漱石文庫』を所蔵しています。これらは漱石研究において大変貴重な資料であり、東北大学では貴重書として保存してあります。ご遺族の中では譲り渡し先として他の図書館も候補にあがったそうですが、他の図書館では分類ごとに配架されて館内で散逸してしまうため、最終的に『文庫』として一括で扱うことができる当館が受け入れることになりました。当時『漱石文庫』の受け入れに尽力されたのが、漱石の愛弟子で当館の第4代館長であった小宮豊隆先生です。漱石自身は東北大学と直 接の関わりは無いのですが、当館には漱石が敬愛してやまなかったケーベル先生の『ケーベル文庫』や、親友の狩野亨吉の『狩野文庫』があったので、『漱石文庫』が当館に来ることは自然なことだったのかもしれません。漱石の門下生でもある土井晩翠、阿部次郎は東北大学で教鞭を執った方々です。偶然かもしれませんが、漱石と東北大学の間には幾重にも重なるご縁があります。
 
 
2F学生閲覧室の一角
東北大学にゆかりの著者の資料が並ぶゆかりコレクション
 
 
 これまでは展示会の際に学外の施設をお借りすることもありましたが、今回のリニューアルでエントランス奥の多目的室の整備が完了したので、いろいろな展示会が容易にできるようになりました。今後ますますこれらの特殊資料コレクションを公開する地域貢献活動を展開していきたいと考えています。来年(2016年)は夏目漱石の没後100周年にあたる年ですのでその展示を企画しているところです。 
 
―地下鉄東西線の開業に伴い地元における大学への期待感が高まるなか、ビジョンに沿った多様な取り組みを通じて図書館として独自の存在価値を打ち出していらっしゃることはとても意義深いと思います。 本日は貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。 
(取材日:2015年2月9日)
取材・執筆:矢賀部 仁 金剛株式会社 社長室
※取材当時 

PHOTO GALLERY

ラーニングコモンズの部屋

館内の特設展示コーナー
グローバル学習室における留学生コンシェルジュによる
「グローバルセッション」イベント風景と展示

3人の話し手の写真
芦原さん  村上さん   吉田さん

東北大学附属図書館(本館)
所在地:宮城県仙台市青葉区川内27−1
T E L :073-457-7905
開館時間:月〜金:午前8時から午後10時
     土・日・祝日:午前10時[午前8時]から午後10時
     (※[]内は試験期間中)

休館日:年末年始(詳しくはホームページにてご確認ください)
U R L:http://www.library.tohoku.ac.jp/
 
 

案内板
PASSION37表紙
この記事は「PASSION vol.37」に収録されています
 
 
 

 

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