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貴重資料を適切に保管しながら積極活用する図書館

新潟大学中央図書館


interview

新潟大学外観
話し手:長谷川 順子さん(学術情報部学術情報サービス課 課長)、樋口 葉子さん(学術情報部学術情報サービス課 資料公開係 係長)、田邉 菜緒美さん(学術情報部学術情報サービス課 資料公開係) ※所属・役職は取材当時のものです。
 

 

ー昨年(H25年)4月に増改築を終えリニューアルオープンされました。増改築の内容とリニューアル後の反響をお聞かせください。 
 
 既存図書館の北側にコの字型に新棟を増設し、既存棟は1・2階の天井中央部を取り払い、館内を一望できる明るく開放的な空間にしました。
 リニューアルオープン後は入館者が以前と比べ倍増し、この1年間の入館者数は100万人を記録しました。竣工式や100万人突破の記念セレモニーに本学の学長が出席するなど、学内外で注目されています。また、小学校の社会科見学や文科省の職員、図書館関係者を始めとした見学者も約5千人に及び、2年目に入った現在も多くの方に見学いただいています。  
 
 

 
インフォメーションラウンジ
入口すぐのインフォメーションラウンジ
 
開放的な吹き抜け中央階段
開放的な吹き抜け中央階段
 


ーリニューアル後の特長をお聞かせください。
 
  新棟はラーニング・コモンズを拡充しました。学生が自主的に学習できる空間と、それぞれの学習スタイルに合わせた環境を提供できる様、プレゼンエリアやグループ学習室、FL-SALC(外国語学習支援スペース)などを設けました。
 既存棟には、新たに貴重資料室と貴重資料調査室を設けました。貴重資料調査室の閲覧室側は元々の壁を取り除き、新たに展示ケースが組み込まれた壁に仕上げています。ここは「展示コーナー」と名付け、3ヶ月に1度の頻度でその時節に合った貴重資料を随時展示しています。
 リニューアル前は、貴重資料も一般の図書と同じ様な環境で保管されていました。しかしリニューアルを機に、中央図書館が所蔵する古文書・古典籍・洋古書等を適切に保管する為、貴重資料と準貴重資料に位置付ける基準を作成し、その取扱いや閲覧方法の整備を行いました。現在、貴重資料室には県の文化財に指定されている堀家文書を含む古文書・古典籍が約9,500点保管されています。 
 
ー貴重資料室・貴重資料調査室を新設するにあたり、力を入れた点や苦労した点はありますか。
 
  概ね思い描いていた通りの仕様で仕上がったと思います。 室内の温湿度環境を一定に保つ為に、壁・天井に空気層を設けました。そして扉は耐火扉を採用し、天井面には調湿材、壁面には調湿材と酸・アルカリ吸着効果のあるものを使用しています。ガス消火設備の導入に際し、消防署に相談した結果、内装の鋼製下地材は通常よりも補強するようにとの指導をいただきました。通常は耐圧性能250hPa(ヘクトパスカル=気圧の単位)とするところ、この内装壁の耐圧性能は350hPaとなっています。この強度は国立大学附属図書館の貴重資料室の中でもトップクラスです。
 また、床の仕上げは木材で計画していましたが、所轄の消防署の指導により汚染成分防止塗装に変更になりました。苦労した点を敢えて言うのであれば、消防・建築各当局の指導により、その都度仕様の変更を余儀なくされた事と、工事完了がリニューアルオープン直前になってしまった事でしょうか。
 その他良かった事は、貴重資料室・調査室の構造についての図入りのインフォメーションパネルを貴重資料調査室の閲覧室側入り口と室内の2ヵ所に設置した事です。閲覧室側の入り口は見学者のみならず、前を通るだれもが目にする事ができ、貴重資料室の存在を知る事ができます。
 また、学生や見学者への案内の際、貴重資料調査室まで案内する事はあっても、資料管理上の問題で全ての方を貴重資料室に案内する事ができません。調査室内にもパネルを設置する事で、貴重資料室に入らなくても金庫の様な扉の奥の構造や、貴重資料がどの様に保管されているかが一目で理解する事ができます。職員の説明も均一で間違いがなく、質の高い案内ができますので大変役立っています。 
 
ー貴重資料調査室や貴重資料を積極活用した活動をされていると伺いました。 
 
 新設を機にソフト面での充実を図る為、連携している新潟県立図書館の専門家を招いて図書館職員へ基本的な古文書の扱い方などの研修会を行いました。
 それから、人文学部では古文書を教材とした授業が行われていますが、少人数の場合は貴重資料調査室を使用する事にしました。室内に畳を敷いてその上に古文書を広げ、青畳の良い香りの中、歴史を紐解いていきます。
 この畳は元々、外国の方が来館された際に畳の上に古文書を広げて見せて、和の空間でおもてなしをしたいという考えから用意した物です。しかし、外国の方をお迎えする機会は多くはありませんので、授業でも活用する事にしました。
 大人数の授業の場合はメディアラボという古文書を広げるのに良い、大きい机がある部屋で行います。メディアラボの隣がICT講義室ですのでパソコンが使えます。実物の古文書を見た後に、パソコンで同じ古文書をデータベース化し提供しているサイトにアクセスするなど、情報検索と関連づけた授業を行う事ができます。
 学生が本物とバーチャルの双方に触れる体験ができるのは、館内での授業ならではです。古文書・古典籍に触れる授業は、教育学部などの他学部でも増えてきています。このように、貴重資料室を新設した事により、今まで以上の活動ができていると実感しています。 
 
ー今後の活動予定や展望についてお聞かせください。
 
  今年は1964年6月の新潟地震から50年、2004年10月の中越地震から10年になります。新潟県はその他にも過去に多くの地震によって被害を受けています。
 過去の地震から学び、将来起こり得る地震についてどのように生命・生活・文化を守るべきかを考える機会を作る目的で、一般の方を対象に「歴史地震展」を6月に開催しました。この催しは本学内の災害・復興科学研究所と共同で開催したのですが、当館からは貴重資料室に保管してある地震関連の古文書や史料を提供し、展示しました。この11月にも6月の展示内容を拡充した2回目の「歴史地震展」を開催する予定です。その時期は新潟市で日本地震学会の秋季大会が行われる期間と重なりますので、さらに多くの方に来場いただけると期待しています。
 リニューアルで貴重資料室という受け入れ窓口が整備された事もあり、県内の旧家に眠っている古文書を新潟大学に寄贈してくださる事も期待しています。
 現在、未整理の古文書は別室に保管されています。これらを解読するには時間を要しますが、出来るだけ早く整理を行い、貴重資料室へ移していきたいと思います。そして大学の研究対象として、また授業の教材として提供し、学内の研究・学習に役立てていただくと共に学生や地域の方々に公開していきたいと思います。 
 
ー本日はありがとうございました。
取材・執筆:永沼 麻子、原田 亜美 金剛株式会社 社長室
※取材当時 

PHOTO GALLERY

FL-SALC(外国語学習支援スペース)

貴重資料調査室

展示コーナー:「江戸の夏」の展示

貴重資料室

図入りのインフォメーションパネル

貴重資料調査室の畳の上で古文書を使用した授業

パソコンを使って情報検索

メディアラボでの貴重資料を使用した授業

6月に開催された「歴史地震展」のチラシ

寄贈された古文書は一旦、別室の中性紙保存箱に保管される

田邊さん、長谷川課長、樋口係長

新潟大学中央図書館
所在地:新潟市西区五十嵐2の町8050番地
TEL:025-262-6221(直通)
開館時間:
【平日】8:30〜22:00
【土日祝休日】10:00〜22:00
(休業期間中、土・日・祝日は10:00〜17:00)
休館日:夏季一斉休業日、年末年始ほか(ホームページでご確認ください)
URL:http://www.lib.niigata-u.ac.jp

PASSION37表紙
この記事は「PASSION vol.36」に収録されています
 
 
 

 

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