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自動化書庫の運用7年目

金沢大学自然科学系図書館


contribution

自動書庫ブックロボ
話し手:橋 美穂さん(金沢大学自然科学系図書館 係長)
 
ー金沢大学自然科学系図書館では2005年4月の開館以来、自動化書庫を運用されていらっしゃいます。
本日は導入から7年経った自動化書庫の運用状況などについてお話を伺いますが、まずは自然科学系図書館の位置づけについてお聞きします。
 
 金沢大学附属図書館は中央図書館、自然科学系図書館、医学系分館の3つの図書館と保健学類図書室で構成されています。中央図書館では主に人文・社会科学系および一般教養関連の資料を所蔵しています。自然科学系図書館では理学部、工学部、薬学部を対象とした理工系専門課程関連の資料を所蔵しています。それぞれの図書館の蔵書の特徴から各図書館では利用者層がはっきりと分かれています。
 
 
外観
外観
 
 
閲覧スペース
開架閲覧スペース
 

ー運営状況について伺います。
 
 当館の職員は5名で、平日夜間や土曜日は学生アルバイト2名ずつで運営しています。主な業務は、閲覧やレファレンスなどの利用者対応です。選書については教員で構成される選書委員会で決定しています。当館では閲覧席(583席)、利用者用PC(約80台)グループ学習室やAVホールなどが整備されており、サービスポイントとなっています。
 当館は研究室も含めると約35万冊の資料を所蔵しており、そのうち約20万冊を自動化書庫に格納しています。書庫の収蔵可能冊数は約47万冊なので、約半分が格納されていることになります。
 次に利用状況ですが、年間入館者数は約12万人です。金沢大学附属図書館では一般市民の方も利用者登録をしていただくと図書の貸出などの利用が可能になります。当館では年間約1600人のご利用があります。年間貸出冊数は約3万冊ですが、当館では雑誌の貸出は行っておりません。また自動化書庫では、1ヶ月に約1000冊程度の取出し要求があります。
 雑誌については、発行後1年経った物は製本し、10年分を閲覧室に配架します。その後、自動化書庫へ格納します。
 
 
自動書庫
自動化書庫 BOOK ROBO

 
ー自動化書庫の運用についてお話を伺います。
 
 利用者のほとんどが図書館蔵書検索OPACを使い目的の資料を検索しています。資料が自動化書庫に格納されている場合は、OPAC画面にその旨が表示されます。自動化書庫への取出し要求は、館内にある専用端末3台から行うことができます。また、資料の受け渡しはサービスカウンターで行っています。
 現在、自動化書庫に格納されている図書は、主に発行から時間を経たものやあまり利用頻度が高くないものなどです。また同じ図書が複数ある場合は、1冊を閲覧書架へ配架し、それ以外を自動化書庫に格納する場合もあります。
 自動化書庫に格納する資料は、事前に図書館システムにデータ登録されたものに限定しています。実際の資料には識別のために、天の小口部分に「自動化書庫」と押印しています。自動化書庫へ格納する資料のデータ登録は図書館システム上で行い、その登録データを自動化書庫の書庫管理システムの蔵書マスクへ転送すると、登録作業は完了します。前日にデータ登録作業を行った新規格納予定の資料については翌朝以降に入庫作業を行います。こういった作業がルーティン化できています。
 格納の際は、完全フリーロケーション方式を採用していますので、資料の種類やサイズを気にせずに格納できます。出納ステーションではコンテナ回転機能もあり、効率よく作業できています。また、資料を格納する際、バーコードの読み込みと同時に1冊ずつの厚みも計測しているのでコンテナの収納状況を効率よく把握できていると思います。
 
 
自動書庫専用のPC
自動化書庫の出庫操作PC
 
 
ー数点教えていただきたいことがあります。
①自動化書庫の資料取出し要求端末が3台に限定されている点と②書庫内の環境について伺います。
 
 操作端末を限定しているのは、自動化書庫の格納資料はサービスカウンターでの受け渡しになりますので、館外から出庫指示が行われた場合、サービスカウンター来ていただくまでに時間が経過し、誰が出庫を指示したのか分からなくなります。したがって、サービスカウンター近辺の端末に取出し操作を限定しています。
 また書庫内環境については温湿度計測器が設置してあり、空調は温湿度変化に応じて自動運転の設定がされています。
 
 
出納ステーション
出納ステーション 出納作業

 
ー自動化書庫の運用における課題についてお聞きします。
 
 現在、特に課題はありませんが、強いて言えば、資料はコンテナに格納されるので、背表紙ラべルや背文字などがコンテナの縁部分に隠れてしまいます。現状では、タイトルで判別しているか、1冊ずつ持ち上げてラベルを確認したりしています。
 次に、自動化書庫の導入は大型の設備・システムの導入を伴います。図書館システムとの連携も行いますので、初期導入時期には多少のエラーやトラブル発生は否めませんでした。しかし、現在は大きなトラブルもなく概ね順調に運用しています。
 
 
本への押印
図書の天の小口部分へ押印
 

ー最後に展望についてお聞きします。
 
 図書館の蔵書は増え続けますので、さらに自動化書庫の活用を模索しています。現在はあまり利用頻度が高くないと思われる資料などを格納していますが、自動化書庫では格納資料の利用頻度を統計的に把握することができます。格納資料の再検討も含めて活性化させ、さらに利用者サービスの向上につながればと考えています。
 一方で、当館は自動化書庫を導入している図書館として、本学の見学者の案内コースの中に組み込まれ広告塔としての役割も担っています特に高校生や高校のPTA関係者、海外からの来館者の方々には、見学用の窓から見えるクレーンの動作や出納ステーションにおけるコンテナの回転動作などが大変好評です。大学の絶好のPRの場にもなっており、今後も金沢大学のシンボリックな存在となることを期待しています。
 
 
自動書庫の見学窓
自動化書庫 見学窓
 
 

ー本日は貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。 
取材・文:木本 拓郎 金剛株式会社 企画チーム

金沢大学自然科学系図書館
所在地:金沢市角間町
TEL:076-264-6554
開館時間:平日 8:45~22:00、土曜 10:00~17:00
休館日:日曜・祝日
URL: http://library.kanazawa-u.ac.jp/

PASSION33表紙
この記事は「PASSION vol.33」に収録されています
 
 
 

 

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