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限られた空間を活かし、
「女性目線」で工夫する図書館

実践女子大学・実践女子大学短期大学部図書館
渋谷キャンパス


interview

話し手:土居 道子さん (実践女子大学・実践女子大学短期大学部 図書館事務部 次長)、瀬戸 笑美子さん(実践女子大学・実践女子大学短期大学部 図書館事務部) ※所属・役職は取材当時のものです。
 

 
ー新図書館(新キャンパス)設立までの経緯と、図書館の概要について教えて下さい。
 
  2009年ごろから、実践女子学園創立120周年(2019年)に向けた大学の新キャンパスの構想が始まりました。本学が1903年から1986年まで大学校舎を置いていた渋谷の地に再びキャンパスを新設し、一部の学部・学科を移転することが決定しました。 渋谷へ移転することになったのは、日野キャンパス(日野市大坂上)の文学部および人間社会学部と、神明キャンパス(日野市神明)の短期大学部の学生約2,500名です。今回の移転事業は学園創立120周年記念事業の第1期整備事業ですので、キャンパス計画室を中心とした建設委員会と各分科会がたちあげられ、図書館もまた図書館・情報分科会としてミーティングを重ねながら2014年4月の新キャンパスオープンへこぎつけました。 図書館は渋谷新棟の地下1階、地上2階、3階の3フロアから成り、延べ床面積2,500平米、蔵書数約16万冊(収容可能数26万冊)、席数278席(グループ学習室・ソファ席・PC席含む)となっています。基本的に、2階は「プライベートゾーン(個人閲覧室)もある静寂な空間」がコンセプトの図書館メインフロアです。3階は「人と情報が触発し合うオープンスペース」がコンセプトで、PCラウンジやグループ学習室、ボックス席などもあるコミュニケーションゾーンとしています。利用者は、フロアのコンセプトに合わせて「静かに集中したい時には2階」、「グループでコミュニケーションをとりながら学習したい時には3階」というように自身で選んで利用できるようになりました。
 
 

新キャンパス外観

新キャンパス外観
 
3階PCラウンジ
3階PCラウンジ

 
 
ー渋谷という都心に位置するキャンパスですが、面積は以前と比べてどうですか。
 
  当初、要望として出していた新図書館で必要な面積は、日野・神明の両キャンパスで使われていた図書館の延べ床面積と蔵書数を学生数で按分して試算した、約3,000平米でした。しかし実際の新図書館の面積は2,500平米。最初は限られた面積の中で収容冊数を確保するため、地下1階には自動書庫を導入予定でしたが、地下の床面積で設置できる自動書庫では収容能力に大差なかったため、ブラウジングできる開架式の電動集密書庫に計画を見直しました。
 
 
地下1階 学生も利用する電動集密書庫
地下1階 学生も利用する電動集密書庫

 
 
ー移転時に最も苦労したのはどういった点ですか。
 
  図書の移動です。広々とした郊外にあった日野図書館から都心の渋谷図書館に図書を移すことになったため、本来持ち込むべき図書を全て持ち込めず、移動する図書を選ばなくてはなりませんでした。 選定基準の設定には非常に悩みましたが、結局、1994年の機械化以降に受け入れた資料(約11〜12万冊)を渋谷に移すという基準にしました。とはいえそれ以外の資料にも当然必要なものがありますので、1994年以前に受け入れたもののリストを作成し、渋谷に移転する学部・学科の先生方にチェックしていただきました。そこで希望が出た図書・雑誌約3万冊については渋谷への移動に追加しました。こうして、合計で約16万冊を移動することになりました。 今回の図書移動では、神明図書館から渋谷図書館へ移動するもの、神明図書館から日野図書館へ移動するもの、日野図書館から渋谷図書館へ移動するものなど、多様な経路での搬出・受け入れを順次進めていきました。 夏期には図書館を休館にして、渋谷図書館へ移動する本の背表紙に「渋谷B1」「渋谷2F」「渋谷3F」という配架フロアを明記したシールを貼る作業を行いました。 こうして準備した図書を2月に渋谷図書館へ移動する際には、45年ぶりと言われた大雪と重なるというハプニングにも見舞われました。無事に搬入したものの、配架作業が追い付かず、一時は1階のロビーがブルーのコンテナで埋め尽くされるという日もありました。2月中旬から3月の2ヶ月間は、配架作業を完了させ、4月からの開館準備作業に追われる日々でした。
 
 
配架フロアを明記したシール
配架フロアを明記したシール

 
 
ー広々とした郊外の図書館から都心の図書館へ移動するにあたって、空間づくりはどのように行いましたか。
 
  当初は冊数優先で考えていたため、2階・3階には6段13連という長い書架を多数列並べる計画にしていました。しかしちょうどその計画途中に東日本大震災が起こり、日野図書館や神明図書館で書籍の落下等の被害が生じたことを受けて、利用者の避難経路確保を最優先に考えねばならないと思い、計画を見直して書架間の通路を増やすことにしました。また、カウンターからフロアの奥まで見渡せるような書架配置に変更しました。そうすると収容冊数が減ってしまうので、書架の段数を増やしたのですが、高さが増すと書架の圧迫感が出てしまいます。その対策として、当初計画していたシックで落ち着いた色の木製パネルではなく、白に近い明るい色の木製パネルを用いた書架に変更し、圧迫感を軽減しました。 
 
ー女子大学ならではの「女性目線」の工夫は何かありますか。
 
  書架が高くなるとやはりステップが必要になりますが、ステップが重いと女子学生が動かしづらいだろうと考え、スーパーのカートなどを作っているメーカーさんにお願いして、非常に軽量なアルミ製のものを製作して頂きました。 また、地下1階の電動集密書架については高さが8段ありますので、更に大きな4段のステップを設置しています。これも同様の軽量ステップに仕上げていただきました。ただ、段数の高いステップを女子学生がヒールの高い靴やサンダルで使用するのは危険と考えて、地下1階書庫の入口にはヒールの無いサンダルを履き替え用に設置しています。サイズも数種類準備しました。 これを設置することで学生にステップ利用時の注意を促すことも期待しています。
 
 
明るい色の書架
明るい色に変更した書架

 
非常に軽量なステップ
非常に軽量なステップ(左:3段/右:4段)

 
 
ー新図書館がオープンしてから2ヶ月経ちましたが、気づいたことなどはありますか。
 
  まず、入館者数は昨年同月に比べて非常に多くなっています。4月は文学部で昨年の約4,000人から約6,500人に、人間社会学部で昨年の約1,800人から約2,800人に、短期大学部の日本語コミュニケーション学科では昨年の約550人から約1,200人に、英語コミュニケーション学科は昨年の190人から900人に増加しました。都市型キャンパスのビル空間の中でゆっくり過ごせる場所のひとつとして図書館が認知されたことが、利用者増加の要因のひとつであるかと思います。 運営面では、新たなサービスを展開する中でより詳細なルールを決めていかなければならない部分があることに気づきました。例えば個人閲覧室は申込制にしていますが、予想以上の利用申込があるため、何時間まで利用時間の延長が可能かという点などについて、現状に即したルールを決めていく必要があります。その他、2キャンパスになったことで日野図書館とも連携を取りながらルール設定する必要もあります。現在、日野図書館とは日に1往復の運行便で蔵書やその複写のやりとりをしていますが、今後も密接な連携を築いていきたいと思います。 また、図書館では学生からの意見を受け付ける「メッセージBOX」を設置していますが、渋谷図書館に移転してから非常に多くのメッセージが学生から寄せられています。一時期は毎日投書がありました。学生の 新図書館への期待が高くなっているのではないかと思います。これらのメッセージには当館のホームページ上の「図書館への意見・要望・感想(メッセージBOX)」コーナーで回答しているだけでなく、図書館入口横の掲示ボードにも貼り出しています。大変な業務ではありますが、今後も一つ一つに応えていきたいです。 
 
 
メッセージへの回答

メッセージへの回答
 
 
ーそのほかにも今後の展望がありましたら教えて下さい。
 
  図書館の利用者に対して席数が少ないという課題が早くも見えつつあります。現時点でも昼の時間帯は席が埋まり、満席状態ですので、試験期間に備えて何かしらの対応を考えていきたいと思っています。 3階にはこれまで無かったグループ学習室やラーニングスペースを新設し、コミュニケーションをとりながら学習できるフロアとしました。「図書館は静かにするもの」と意識をしていた学生たちにとっては、戸惑いもあったようですが、最近では、ディスカッションをしながら課題に取り組む姿が見られるようになってきました。今後さらに学生の自主的な学びが促進されるように、ガイダンス等を通して支援を行っていきたいと思っています。 そして、やはり蔵書構成についても、今後利用者のニーズに則したものに整えつつ、成長させていきたいですね。 また、11月には渋谷キャンパス1階の一角に「向田邦子文庫」がオープン予定です。向田邦子は本学がかつて渋谷にあった頃の卒業生です。渋谷キャンパスは彼女が学び、卒業した地ということになりますし、最後の住まいとなった南青山のマンションもこの近くです。このゆかりの地にぜひ向田邦子文庫を設置したい旨を申し出て、実現に至りました。直筆原稿や遺品なども展示予定です。 
 
 
3階グループ学習室
3階グループ学習室

 
 
本日はありがとうございました。 

取材・執筆:原田 亜美、永沼 麻子 金剛株式会社 社長室
※取材当時 

実践女子大学・実践女子大学短期大学部図書館 渋谷キャンパス
所在地:東京都渋谷区東1-1-49
T E L:03-6450-6829(直通)
開館時間:通常【平日8:30〜19:30/土曜8:30〜17:00】
     延長【平日8:30〜20:00/土曜8:30〜18:00】
     短縮【8:30〜16:00】
休館日:毎週日曜他(ホームページにてご確認ください)
U R L:http://www.jissen.ac.jp/library/

PASSION37表紙
この記事は「PASSION vol.36」に収録されています
 
 
 

 

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