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新たな「学びの場」、地域社会と共生する図書館

茨城大学図書館


interview

茨城大学図書館
話し手:高橋 修さん(国立大学法人茨城大学 図書館長・人文学部教授)、吉岡 文さん(国立大学法人茨城大学 学術企画部学術情報課長)、松土 真由美さん (国立大学法人茨城大学 学術企画部学術情報課利用支援係長) ※所属・役職は取材当時のものです。 
 
 
ー茨城大学図書館様の概要、特長について教えてください
 
茨城大学図書館はこちらの本館の他に工学部分館と農学部分館、学部図書室で構成されています。組織としては一体ですので連携を取りながら運営をしています。本館は今年(2014年)4月にリニューアルオープンしました。これにより収納可能冊数は大幅に向上し、さらに共同学習エリア(ラーニングコモンズ)が整備されたことで図書館が新たな「学びの場」に生まれ変わりました。当館の特長として地域密着という点も挙げることができます。学生のみならず地域のみなさんも気軽に利用していただけるよう、土日も開館しております。地域密着という観点で言えばもうひとつ、茨城の郷土資料を収集している点も当館の大きな特徴です。
 
 
学習している様子
 
 
ー今回のリニューアルのきっかけは何だったのでしょうか?
 
本館の建物は以前から耐震補強の必要性が認識されており、加えて収容スペースの狭隘化という問題もありました。リニューアル前は書架からあふれた図書が床に直に積みあがっているような状況で、目的の図書を容易に取り出せず利用者の方には大変な苦労を強いてしまっていました。予算の問題もあるのですぐに改善できるわけではありませんでしたが、いつか来るそのタイミングに向けて「茨城大学図書館本館増改築ワーキンググループ」という活動を長年にわたって継続していました。ワーキンググループは教員と図書館職員で構成されました。他大学の事例を見学に行くという活動もあり、全員で手分けしていくつかの大学をまわりました。図書館職員は他大学の図書館に見学に行くことはあるのですが、教員の場合、そういった機会があまりありません。一緒になって見学することができたため情報を共有しながら検討を進めることができたのは成果として大きかったと思います。このワーキンググループの中で2010年12月にまとめられた「新図書館コンセプト」が現在の形の原型といえます。いま見返してみてもほぼこのコンセプトに沿った図書館になっています。
 
ーリニューアル後、どのような点が改善されましたか?
 
既存図書館を取り囲むように南側と西側を拡張する形で増築をしました。増築部分は主に共同学習エリアとし、既存部分は書架を中心とした従来の図書館機能や貴重書の収蔵機能に特化しました。おかげで収容能力は1.5倍に増え、それまでの床積みの図書の問題も解消されました。今回のリニューアルは耐震補強という目的もありましたので地震対策には気を配りました。3年前の東日本大震災の時にはほとんどの図書が落下してしまいました。学生ボランティアの力を借りながら復旧作業を行い、ようやく1か月後に開架部分のみ開館できたのですが、閉架書架部分は引き続き復旧作業が継続されました。この経験を踏まえて書架の上段は「傾斜スライド棚」を導入しました。これは揺れを感じて棚板が自動的に傾斜して図書の落下を抑える機能を備えたものです。1階の移動式書架も免震装置を装備したものを採用しました。
 
ー1階の共同学習エリアの反応はいかがでしょうか?
 
1階の共同学習エリア(ラーニングコモンズ)は主に学生たちの課題解決学習の場として使われています。学生同士の自主的な研究発表会や意見交換会、PCを持ち込んでの共同作業など様々な形の勉強会が毎日行われています。学ぶスペースが増えたことは本当に良かったと思います。イベントで使われることもあり、つい先日も留学協定校である米国アラバマ大学の学生を招いて交流会を行いました。先ほども留学生センターが主催する「海外留学生サロン」というイベントが開催されていました。留学経験者や留学希望者、交換留学生が情報交換をするものです。4月にリニューアルしてまだ3か月足らずにも関わらず「図書館のあそこで待ち合わせ」という会話が日常的に聞こえるほどで、学内ではかなり浸透していると思います。学内だけでなく、地元および周辺自治体の公共図書館の方々も関心を寄せてくださっています。
 
 
共同学習エリアと書かれたガラス扉
連日学生たちでにぎわう1階の共同学習エリア(ラーニング・コモンズ)。自発的なグループワークが行われている様があちらこちらで見受けられる
 
 
ー2階のグループ学習室やサイレントルームも大変盛況ですね。
 
サイレントルームはその名の通り一人一人が静かに学習するためのスペースです。試験勉強などの目的の学生が使っています。グループ学習室は全部で8つの部屋があります。それぞれに机や椅子の形状を変えて多目的に使えるよう工夫しています。大きなトラブルもなくうまく活用していただいています。
 
ー3階にはホールがあるんですね。
 
ライブラリーホールという120名の収容が可能なホールです。改築・改修工事記念式典はここで開催しました。5月にはリニューアルオープン記念としてアルゼンチンタンゴのコンサートを開催し地域の方々が図書館に足を運んでいただく機会を作ることができました。今後も各種セミナー、シンポジウム、公開講座の開催といった様々な形で地域との交流の場として活用していきたいと思います。
 
ー図書館にカフェを取り入れたのは面白いですね。
 
出店いただいているのはSAZA COFFEEというカフェです。スタバのような全国ブランドのカフェではありませんが、茨城では大変なじみの深い地元のブランドです。地元のカフェということで先生方や学生、卒業生にも大変好評です。大学は土日や夏休みなどの長期休暇の時に集客が見込めず年間通して客足が安定しないため運営企業側としては難しいようですが、SAZAさんは単に収益性だけでなく大学と文化を共有したいというような思いから出店に協力してくださいました。近隣の方々にもよく利用されているようです。
 
 
 
おしゃれなカフェ
人気のSAZA COFFEE
 
 
ー貴重資料について教えてください。
 
今回の改修にあわせて1階に貴重資料室と展示室を設けたことで保存環境は格段に改善されました。また、これまで点在していた史・資料を一括管理できるようになったことも大きな成果です。本学で所蔵しているのは豊臣秀吉の統一政権の基礎となった太閤検地帳をはじめとして、日本初の小学校女性教師である黒澤止幾に関するもの、その他県内の旧家から寄贈されたものがあります。これら多数の郷土史・資料は体系的に収集し、学内の研究活動に活用するとともに、その成果は市民の方々の生涯学習に資するよう、展示企画や近隣の図書館との連携を通じて地域に還元しています。
 
 
古い巻物の書簡
徳川斉昭の書簡※クリックして拡大
 
 
ー今後の展望について教えて下さい。
 
地域連携を意識した活動は特に力を入れていきたいですね。大学に社会連携課という部署があります。図書館が地域連携の拠点として役立てるよう、学内の他の部署との協力を充実していきたいと思います。
  

ー本日はありがとうございました。 

取材・執筆:矢賀部 仁、永沼 麻子 金剛株式会社 社長室
※取材当時 

PHOTO GALLERY

高橋さん、吉岡さん、松土さん

2階 グループ学習室

2階 サイレントルーム

3階 ライブラリーホール

共同学習エリアの間仕切り、机、椅子は全て可動式

1階書庫の移動式書架。
地震対策として免震装置が装備されている

固定書架の上段に取り付けられた「傾斜スライド棚」
(ピンク色の部分)。地震のときの本の落下を防ぐ

日本初の女性教師 黒澤止幾の肖像

太閤検地帳

 

茨城大学図書館 本館
所在地:茨城県水戸市文京2-1-1 
開館時間:
・開講期間中 
 平日8:30〜21:45/土・日11:00〜19:00
・休講期間中
 平日8:30〜17:00/土・日休館
 ※開館時間、休館日などを臨時に変更する場合があります。館内の掲示・図書館ホームページ等をご確認ください。
休館日:祝日、年末年始(12/29〜1/3)、創立記念日
URL: http://www.lib.ibaraki.ac.jp/
 

 
PASSION37表紙
この記事は「PASSION vol.36」に収録されています
 
 
 

 

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