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地域とともに、自由な知的交流を

弘前大学附属図書館 


interview

外観写真
話し手:三上 豊さん 弘前大学 研究推進部 学術情報課長、長谷川 友紀さん 弘前大学 研究推進部 学術情報課情報サービスグループ 係長 ※所属・役職は取材当時のものです。
 
 
医学部分館と合計で83万7千冊の蔵書を有する弘前大学附属図書館(写真は本館外観)。

旧館の老朽化に伴い、2014年10月にリニューアルオープンした。
 
 

―まず、図書館の特色について伺います。
 
 弘前大学附属図書館は、大学がかかげるスローガン「世界に発信し、地域と共に創造する」を受けて、地域を意識した様々な取り組みをしてきました。
 「敷居が高い」と思われがちな大学のイメージを、図書館を通じてやわらげられないかと考えています。
 
 ―スローガンの実現のために、図書館としても地域を意識されているということですね。具体的にはどのような取り組みをされていますか。
 
 たとえば、自由に議論しながら机や椅子を動かして学修できるアクティブ・ラーニング・エリアは、予約不要で一般の方も使うことができます。ここで行われるイベントなどにも自由に参加可能です。現在は毎週水曜に、弘前大学の教職員や学生が講師になり、自分の研究内容や仕事内容を語るラウンジトークというイベントを開催しています。大学のことやその人の人柄、そして青森のことをもっと知ってもらう目的の企画ですが、一般の方も毎回数名参加されています。その他にも、飲み物の持ち込みが可能なオープンラウンジやオープンテラスなど、一般の方の利用可能なエリアは多いです。
 
オープンラウンジ
 

オープンテラス


 また、当館は平成12年という割と早い時期から学外の方への図書貸出を行っています。さらに現在では、一般利用者を含む誰もが、個人文庫などごく一部のコーナーを除くすべての書庫に自由に出入りできます。以前は学部3年生以上の学生と大学職員しか入ることができない書庫がありましたが、昨年のリニューアルオープンを契機にその制限を廃止しました。公共図書館では見られないような古い資料や珍しい資料などもここにはありますので、もっと多くの資料を自由に手に取ることができる面白さをぜひ体験してほしいですね。
 また、書庫を開放するのにあわせて、書庫内の図書の配架も、利用者の使いやすさを考慮したものに変更しました。これまでは図書と雑誌が同じ書庫内に置かれていましたが、図書のみの書庫と雑誌のみの書庫に分けました。
 その他、地域へ『知』を還元するため、デジタル化した貴重資料をインターネット上で公開しています。中でも地元出身の作家・太宰治が高校時代に使っていたノートのデジタル版などは、内容の面白さがインターネット上で話題になり、図書館のウェブサイトのアクセス数が急増したこともありました。デジタル化資料の点数は毎年増やしていく予定です。 
 
 

一般開放した書庫(上、下)
 
 

―2014年10月にリニューアルオープンされ、施設にも地域の特色を盛り込んだと聞いていますが。
 
  はい。利用者に地域の歴史や伝統を知ってもらうことができるよう、館内の装飾に工夫をしています。1Fの閲覧コーナーの照明にはブナコを、閲覧机の仕切りの模様にはこぎん刺しを使いました。ブナコもこぎん刺しも弘前の伝統工芸です。館内全体のサイン等にもこぎん刺しの模様を施しています。リニューアルによって拡充されたアクティブ・ラーニング・エリアのガラス扉には、弘前の桜をイメージした衝突防止シールを貼りました。
 
―地域に根差し、地域に開かれた図書館を運営されているのですね。その中で何か苦労はありますか。 
 
 
 書庫開放に伴って配架を変更した際には、図書の大移動となり、非常に苦労しました。現在も一部調整中です。
 また、イベントなどの際の広報活動にも苦戦しています。大学附属図書館というネームバリューでは、地域の方だけでなく学生たちに対しても広報効果が出にくいですね。
 
 
 

ブナコを使った照明

 
 
 ―今後の課題や展望などを教えてください。
 
  更に多くの方に来ていただけるようにすることが課題です。そのためにも先述の広報について考えていかねばなりません。長期にわたる広報活動なども必要かと思います。また、すでに図書館を利用して下さっている地域の方に対しては、学生たちと一緒になって学べるような機会も何か提供したいです。
 そして、学部の異なる学生同士、学生と地域の方など、多様な人同士が自由に知的交流できる「知の交錯する場所」にしていきたいと思います。 
 
 
緑色の背景にもこぎん差しの模様が入っている
 
 

閲覧机の仕切りにこぎん刺しが使われている
 

―大学図書館でありながら、学生だけでなく地域の方まで意識されている貴館のことを知り、非常に勉強になりました。本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

 
(取材日:2015年6月30日)
取材・執筆:原田 亜美 金剛株式会社 社長室
※取材当時 

PHOTO GALLERY


(左)三上課長 (右)長谷川係長

弘前大学附属図書館
所在地:青森県弘前市文京町1番地
T E L :0172-39-3162 (または 0172-39-3155)
休館日:祝日・休日、夏季一斉休業期、年末年始、
    休業期間中の土・日曜日ほか ※詳細は下記URLをご参照下さい
U R L:http://www.ul.hirosaki-u.ac.jp/
 
 

弘前大学では毎年地元のねぷた祭りに出陣している。
大学職員だけでなく近隣の町会の人々も
自由に参加するため、地域交流の一端を担っている。
PASSION37表紙
この記事は「PASSION vol.37」に収録されています
 
 
 

 

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