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図書館の危機管理と安全性

小平市立花小金井図書館


contribution

寄稿:蛭田 廣一さん(小平市中央図書館 館長)
 
 
 利用者の多くは、図書館は安全で安心な場所だと考えている。
 果たして、そうなのだろうか?
 
 残念ながら、現実は厳しい。
 
 本の盗難の問題に対応するために、BDS(ブック・ディテクション・システム)を図書館に導入するのは当然のことになっている。
 
 また、2005年には、日本図書館協会図書館経営委員会危機・安全管理特別検討チーム編「こんなときどうするの?―利用者と職員のための図書館の危機安全管理マニュアル―』が出版され、そのはじめに「長い間図書館はひとつの聖域と見なされて、盗難も傷害事件もない、安全なところと思われてきました。しかし、今は違います。災害や事故がいつ図書館に降りかかってくるか、全く予測できない時代になりました。」と書かれている。
 
 図書館にも危機管理が必要になっているのだ。
 
 特に、最近の中越地震や中越沖地震では、図書館でも多くの被害が報告されていて、この本にも自然災害として地震に触れている。しかし、予防する対処法として「書架・備品の倒壊を防ぐための対策とその実施」が挙げられ、書架の落下防止装置が紹介されているに過ぎない。
 
 幸いにも近年の地震で、図書館における人的被害は報告されていないが、震度の強さや発生の時間帯によっては、書架の倒壊や本の落下によって人的被害も予測されるわけで、図書館の安全性を確保するためには、それを避けるための対策が重要である。
 
 今までは、書架を床や壁に固定するという地震対策が主流であった。しかし、これには限界があり、地震の強さによっては転倒防止金具や書架が壊れて、書架の歪みや転倒が避けられないケースもある。そこで、地震波による床の振幅を書架に伝えない装置を組み込んだ、免震書架が開発されたのである。この技術によって、書架の転倒と本の落下を防ぐための抜本的な対策が可能となり、図書館の安全性か格段に上がることが期待できる。
 
 
一般図書コーナー:免震書架
一般図書コーナー:免震書架
 
閉架書庫:免震移動書架
閉架書庫:免震移動書架

 
 小平市立図書館は、資料保存の点では一定の評価をされているが、安全対策は不十分であった。そこで、花小金井図書館の新築移転の機会に、利用者の安全性を高めるために免震書架を導入した。この仕組みを理解し、実際に体験し、得心するまでには時間が必要であったが、「資料をいつでも、だれでも、いつまでも利用できるようにする」という資料保存の原則は、図書館の安全性が確保されてこそ、保障できるものであることは間違いない。
 
 
書架サイン
書架サイン
 
各種サインプレート
各種サインプレート
 
外観
 
館内案内サイン
 
 
蛭田館長
蛭田館長

 
 

(2007年)

小平市花小金井図書館
所在地:東京都小平市花小金井1-8-1
TEL:042-467-1215
URL:http://library.kodaira.ed.jp/facility/hanakoganei.html

PASSION31表紙
この記事は「PASSION vol.31」に収録されています
 
 
 

 

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