つなぐWEBマガジンPASSION+

つなぐWEBマガジンPASSION+

金剛ロゴ金剛ロゴ
 
SHARE   

つなぐWEBマガジンPASSION+

libraryへリンク

学生支援を目的とした融合的なサービス

獨協大学図書館 天野貞祐記念館


interview

館内
話し手:羽田 洋一さん(獨協大学図書館 事務課 課長)、澁田 勝さん(獨協大学図書館 事務課企画庶務係)
 
外観
外観

 


ー今回、獨協大学図書館にお伺いしました。2007年に新館が開館して、5年間が経過しますが、この5年間の図書館運用全般と自動書庫の運用についてお話をお伺いしたいと思います。 
  
羽田 獨協大学図書館は、2007年9月に、教室などとの複合施設である天野貞祐記念館内に移転して新図書館としてオープンしました。天野貞祐記念館は、当時の外国語教育研究所、情報センターおよび図書館の教育研究支援に携わる3機関の機能を有機的に統合した、大学の教育研究拠点となる建物です。 
 図書館の蔵書数は開架・閉架合わせて約87万冊を所蔵しています。資料を主題ごとに各階に配置し、資料・閲覧席・力ウンターなど基本的なレイアウトを各フロアほぼ共通にするなど、わかりやすく使いやすい図書館、長時間滞在型の図書館を目指しました。天野貞祐記念館の東側は教室ゾーンとなっており、3階までのどのフロアからでも入館できるので、 
授業の前後などに利用しやすい構造になっています。 (図1) 
  
天野貞祐記念館の構造と分類ごとの配下の表
図1:天野貞祐記念館の構造と分類ごとの配架 
 
館内フロア

 館内フロア

 
ー利用者サービスの特長についてお話をお伺いします。 
  
羽田 各階に配置した資料の分野に応じたレファレンス・カウンターを3ヶ所設置するほか、貸出・返却カウンターを2ヵ所に、PC貸出・サポートデスクを1ヶ所におくなど、手厚い人的サポートを展開しています。 

 最大の特徴は、学生支援を目的とした、図書館とは異なる組織が併設されて、融合的な学生支援サービスが実現できていることです。 
 まず、情報利用環境の面では、館内の情報機器とサポートの充実が挙げられます。図書館内には各階に分散して多くのPCを設置していて、無線LANを通じて持ち込みPCでのネットワークの利用も可能です。図書館2階に併設された教育研究支援センターのPC貨出・サポートデスクでは、貸出用のノートPCを借りられるほか、図書館のスタッフでは十分に行えない、PC に関するサポートも受けることができます。さらに、隣接しているMM(Multimedia)工房では、動画や音声などデジタル情報の編集加工が可能な機器を揃え、専門のスタッフのサポートが受けられます。  
 また、獨協大学の特徴である語学教育に関連して、図書館3階には、発話トレーニングブース、語学資料コーナー、AVコーナーを設置して語学学習のための工リアとしていますが、これに隣接して、語学学習のサポートと交流の場であるICZ(lnternational CommunicationZone)があります。ここでは、授業時間外でも、外国語や外国文化に触れることができ、学部・学科・学年を越え、日本人学生も留学生も外国人学生も気楽に交流できる場となっています。  
 天野貞祐記念館はキャンパスの中央に位置し、学食も隣接しています。学生の生活動線上にあるので、図書館以外の各施設も多くの学生が利用しています。 
 
 
PC閲覧席
PC閲覧席
 
PC貸出サポートデスク

PC貸出サポートデスク
 

発話トレーニングブース
発話トレーニングブース

 

  
ーなるほど。学生支援がキーワードですね。図書館を活用してもらうためには何か工夫はありますか? 
  
羽田 入館者数や貸出冊数を見ると、本学図書館の利用は他大学にくらべて多いほうです。これは本学の学生が非常に勉強熱心であるためだと思います。図書館では、施設を整え資料を充実させることはもちろんですが、さらなる利用喚起のために、より多くの学生に有効に活用してもらうための情報リテラシー教育として、各種ガイダンスや授業・ゼミの単位でセミナーを実施しています。 
澁田 ガイダンス・セミナーは3段階で行っています。第1段階は新入生を対象にした図書館の概要や簡単な使い方についてのガイダンスです。第2段階は1年生を対象にした初年次教育です。資料の探し方やデータベースの使い方等、もう少し掘り下げた利用や活用方議に関して知ってもらいます。第3段階はゼミ単位、授業単位でのフリーなガイダンスです。これは先生方の個別の申込を受け要望に沿って実施しており、多くの先生方の授業に図書館のセミナーを取り入れていただいています。 
 情報利用環境としては、図書館内のPCは常設の144台のほか、教育研究支援センターの貸出用PCが144台ありますが、利用者の要望が年々高まっていることもあって、台数を開館当初よりもかなり増やしています。また、現在はプリンタも無料で枚数上限も設けず利用できる環境にあります。学生は図書館の資料だけでなくPCを使ってデータペース等も活用しながらプレゼン資料やレポート論文を作成することが可能となっています。  
 今後も図書館では利用者の情報利用環境の充実とともに、学生の学習や研究活動の支援を行っていきたいと考えております。 
  
 

コピー機・プリンタ
コピー機・プリンタ
 
図書館情報セミナールーム
図書館情報セミナールーム 
 

ーレファレンス・カウンターが各階にあるとのことですが? 
  
澁田 資料や情報の探し方をサポートするためのレファレンス・カウンターを3階までの各階において、全専任職員で対応しています。各々の職員が担当主題を持ち、主題別に分かれている各階のレファレンス・カウンターに入るようになっています。また、即答できず、継続調査が必要となった質問については、全専任職員に対して情報共有を行い、全職員がそのフォローを出し合うことで、回答を作成していきます。これにより、職員のスキルアップも目指しています。 
  
ー職員の方は何名いらっしゃいますか? 
  
澁田 現在の図書館専任職員は18名です。各人が担当主題分野の資料選定も行っています。カウンター業務と選書の主題が結びついていますので、アメリ力などで見られる、学位を修めた専門家とまではいきませんが、サブジェクトライブラリアンに近づくための第一歩といえるでしようか。自分の主題を意識しつつ業務を行いますので、多少なりとも担当している主題に強い職員が成長してきていると思います。 
  

ーラーニング・コモンズについてはいかがでしょうか? 
  
澁田 当館では特定の揚所を指してラー二ング・コモンズという名称は使用していませんが、図書館単独ではなく、図書館を含めた天野貞祐記念館全体でラーニング・コモンズが持つべき要素を備えているのではないかと思います。図書館としては、新図書館で利用者サービスや学習環境を整備し、利用者の多様な要求に応じたゾーニングを行ったことで「滞在型図書館」が実現できているのではと考えています。 
  
ー利用者サービスの課題についてお伺いします。 
  
羽田 今後の図書館の課題として、図書館が積極的な姿勢をもって利用者サービスを広げることが必要だと思います。例えば、選書ツアーや読書会、ビブリオバトル等、学生が自主的に参画する雰囲気づくりが欠かせません。これからの図書館は資料や場所を提供するだけではなく、学生が自主的に考え、企画・実施することで成長できる機会を提供していく必要があると考えています。 
 また、本や雑誌といった紙媒体だけではなく、電子ジャーナルのほかデジタル資料の提供にも舵を切っていく必要がありますが、まだ十分な取り組みができていません。今後の課題として残っていると思います。 
  
ー自動書庫の現在の利用状況はいかがでしょうか。 
  
羽田 1日の出庫は平均50~100件程度です。蔵書の半分である40万冊を自動書庫に格納していますが、自動書庫に格納しているのは主に古い図書や利用頻度の低い資料です。たとえば雑誌は3~4年の年限を決めて、古くなったものを随時自動書庫に格納しています。利用者からの出納要求があると、カウンター内に出庫されますので、力ウンターの業務委託スタッフが取り出し、利用者に提供しています。 
 
 
自動書庫BOOKROBO
自動書庫 BOOKROBO
 
自動書庫の出納ステーション

自動書庫 出納ステーション 


   
ー自動書庫についての当初の期待値と稼働後の評価についてお伺いします。 
  
羽田 導入前は、一部の教員や職員から、直接資料をブラウジンクできなくなる点について懸念の声が上がりました。旧図書館の書庫では、教員も図書館職員も、ブラウジングにより周辺の関係図書を見つけることができましたが、自動書庫の揚合は、蔵書検索(OPAC) 画面での書誌情報をキーに1冊ずつ出庫して確認しなければなりません。導入から5年経った今では、不満の声は聞かなくなりましたが、資料の探し方が変わったことは確かです。 
澁田 自動書庫にある資料を探せないために、開架にある資料だけでレポートを作成したりしている学生がいると思います。せっかくある資料が活用さないのは残念なことです。自動書庫の資料を活用するには、蔵書検索(OPAC)を使いこなすことが必要不可欠です。タイトルや著者名だけではうまく見つからないケースもありますが、分類や件名などを活用して倹索することで、直接のブラウジング以上に効果的・網羅的に資料を発見できることもあります。そのためには資料整理の段階でのデータの精度の向上と蔵書検索(OPAC) システムの機能向上が重要になってきます。資料を提供する側、利用する側の共通理解がなければ、自動書庫資料が十分活用されず死蔵される可能性はありますね。そのため、利用者教育のなかで蔵書検索(OPAC)の使い方を十分に理解してもらうとともに、使いやすいシステムとしていくことが、自動書庫を活用するためにも重要です。 
 自動書庫を導入することで、同じスペースでの資料の収容能力が格段に上がります。また、資料管理も適切に行えるので、比較的利用が少ない資料を自動書庫に収納することで、膨大な書庫スペースを抱える必要がなくなり、その分、利用者に開放するスペースを確保することができました。ただ、自動書庫を採用するかどうかで、利用者の使い勝手は大きく異なってきます。導入に際しては、増え続ける蔵書を管理するための施設置備や各種サービスのための人的資源、そのための貴用等を勘案した図書館運営全般に関する判断が求められます。これは各大学や図書館の事情によって異なると思いますので、どちらがベターかは一概には言えませんね。 
  
ー最後に、自動書庫の運用について課題をお伺いします。 
  
羽田 どんなシステムで管理されているとはいえ、やはり人間が操作するので、人的ミスにより資料が行方不明になる可能性はゼロにはできません。 
  
ーどのような状況で起こるのでしょうか? 
  
羽田 過去、大量の入庫作業を行っていた時など、エラー防止メッセージやブザーを無視して、強制的に入庫ボタンを押しコンテナを入庫してしまったことがあったようです。またたいへん薄い雑誌が他の雑誌に挟まってしまった状態で、そのまま格納されていたこともありました。ほかに、資料に複数の資料IDが貼ってあるのに、1つのみを読み込んで入庫してしまった例などもあります。雑誌は固定コンテナを採用して、同ーの雑誌が同じコンテナに収まる運用にしているので発見されるケースが多いのですが、なかには見つけきれず不明本となるものもあります。 
澁田 自動書庫の場合、基本的にはシステム管理されていますので書庫の中に格納されていることが前提ですが、一度出庫した後、貸出もされず、自動書庫にも戻っておらず、不明本となるケースがあります。出庫請求した際に、「既に取り出し済み」という表示が続いたり、自動書庫に戻らず開架書架にまぎれていて発見されたりすることで、不明本状態にあることが初めて発覚します。このような出庫後の不明本についても気をつける必要があると思います。 
  
ー確かに人的ミスについては課題が残ります。あるユーザー様ではデイリー・ウイークリー・マンスリーとチェックしながら、業務の一環として不明本の確認をされていました。 
  
澁田 たとえば「出庫から一定期間を経過して戻ってきていない図書のリスト」や、「出庫実績ベスト100」みたいなリストが簡単に出るといいですね。利用頻度が高い資料は開架に出したり、今後の資料選定の参考資料としても活用できそうです。 
  
ー本日は貴重なお時聞をいただきまして、ありがとうございました。

取材・執筆:木本 拓郎 金剛株式会社 企画チーム
      ※取材当時 

獨協大学図書館
所在地:埼玉県草加市学園町1-1
開館時間:月~金曜 8:45~22:00、土 8:45~20:00
     春季・夏季休業期間 9:00~20:00
     休日開館日10:00~20:00
休館日:日曜・祝日、夏季一斉休業期間(8月中旬)、年末年始、入学試験日
URL:http://www.dokkyo.ac.jp/library/

PASSION34表紙
この記事は「PASSION vol.34」に収録されています
 
 
 

 

関連記事