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(注意)本記事は、金剛株式会社が1994年7月25日に発行した機関誌「PASSION VOL.14」の内容を、当時の記録として公開するものです。記事内の情報は発行当時のものであり、現在の状況とは異なる場合があります。また、当時の社会情勢や倫理観を反映した表現が含まれている可能性があり、現代の基準に照らし合わせると一部不適切と感じられる箇所もあるかもしれませんが、資料的価値を考慮し、原文のまま掲載しています。掲載されている商品やサービスは、既に販売・提供を終了している場合があります。
本記事は、著作権法上の引用の範囲内で掲載しています。当時の記録として、皆様に楽しんでいただけましたら幸いです。
公共施設の建設が盛んになっている。中でも、市民生活の真の豊かさを支える柱としての文化施設の重要性が高まってはいるが、欧米並みの水準や利用率にはまだまだといった感が強い。
今回、弊社より家具・備品をご購入いただいた公共図書館を訪ね、納入後の評価や日頃の業務の中の問題点、改善ご提案など、職員の方々に直接お話しをうかがった。この数多く頂いた貴重なご意見をもとに、どんな図書館システムが求められているのか、地域性や特色ある施設作りには何が必要か・・・などを考察してみたい。
高槻市立中央図書館
- 建築名: 高槻市立中央図書館(高槻市総合センター内2階)
- 所在: 大阪府高槻市桃園町
- 設計監理: 安井建築設計事務所
- 施工: 大林・高・大昭JV
- 延面積: 2,966m²
- 開館: 平成6年4月
- 蔵書冊数: 30万冊(開架13万冊、閉架17万冊)
職員の方から「書庫内の作業は、肉体的にも精神的にもストレスが大きいので、もっと楽に出し入れが出来るような、アーム付ロボットや搬送システムの開発を、メーカーに対しても非常に期待している」という意見も出た。公共施設という性格上、利用者(市民)へのサービスやアピール性から、外観や開架フロアについては話題になりやすいが、その担い手である図書館職員の専門性・重要性も、今後更に取り上げられるべきであろう。







徳島県立図書館
- 建築名: 徳島県立図書館(文化の森総合公園)
- 所在: 徳島市八万町寺山
- 設計監理: 岡田新一設計事務所、環境建築研究所、佐藤武夫設計事務所、日建設計JV
- 施工: 清水建設・森本組JV
- 敷地面積: 40.6ha(公園全体面積)
- 構造: 鉄骨鉄筋コンクリート造 地上3階 塔屋2階建
- 延面積: 8,989m²
- 工期: 昭和62年7月~平成1年10月
- 開館: 平成2年11月
- 蔵書冊数: 約130万冊(開架約22万冊、常時貸出約6万冊、閉架約100万冊)
配架のバランス(分野ごとのボリューム)は常に変化し、棚当たりの資料数も変わってくるので、建設段階でのレイアウト計画で綿密な検討が重要。それでもオープン後、相当な変更を行わなければならないこともあるとベテラン職員からアドバイス頂いた。
乱雑になりがちな子供のコーナーも整然と整えられている。常に最高の状態で利用者を迎えよう・・・という職員の方々のこのサービス水準の高さが、全国でもトップレベルの利用率につながったのであろう。
今後は県内図書館の中心として、各市町村民への資料貸借サービスの充実や各種イベントなど、更に「開かれた」公共文化施設としての企画力・提案力が要求される事と思う。
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サービスカウンターは全部で3ヶ所(子供、一般、参考資料)。スタッフの作業動線を考えたバックスペース作りをした 。







新聞や雑誌の閲覧は利用者の要望も多く、種類、バックナンバーやスペース的にも更に考えていくべきであろう
木次町立図書館
- 建築名: 木次町立図書館(愛称ペンギンライブラリー)
- 所在: 島根県大原郡木次町
- 設計監理: 福間建築設計事務所
- 施工: 松江土建・ひのき土建JV
- 敷地面積: 2,440m²
- 構造: 鉄筋コンクリート 平屋建て
- 延面積: 750m²
- 工期: 平成4年7月~平成5年3月
- 開館: 平成5年7月
- 蔵書冊数: 5万冊(収容能力)
現在職員はすべて非常勤で、様々な業務を交代でやっているため、なかなか特徴ある企画や、子供への読み聞かせ等の活動が思い切り出来ないことがあると言うが、同じ悩みを持つ図書館も少なくないと思う。どのように活用率を上げ、特色ある地方図書館作りができるかを、今後、我々メーカーも積極的に提案していくべきであろう。
例えば、愛の「ペンギン」を生かし、ペンギンに関する文献の豊富さではどこにも負けず、日本中から問い合わせが来るような「ペンギンライブラリー」を目指したり、「桜の名所100選」にちなみ、大きな四季の景色の写真パネルを壁面に展示する、また、誇りに思える文化施設作りの提案を利用者自身から募集する・・・など、地域おこしにもつながるアイディアは様々。中央官庁の大図書館ではないからこそ、機動性を生かせるのではないだろうか。
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絵本コーナーの表紙展示台を、このコーナーへの拡張も検討中。

絵本の表紙が見えるようにした低書架の最上段は好評。また固定の仕切りを細かく付けたことにより、倒れやすい絵本の保管状態が良くなり、入れる時に本を傷める事があるブックエンドよりも使いやすいと評価頂いた。

香川県立図書館・文書館
- 建築名: 香川県立図書館・文書館(香川インテリジェントパーク内)
- 所在: 香川県高松市林町(図書館/文書館複合施設)
- 設計監理: 香川県土木部建築課、石本建築事務所
- 施工: 鹿島・間組・穴吹工務店・谷口JV
- 敷地面積: 19,396㎡(複合施設全体)
- 構造: 鉄骨・鉄筋コンクリート造 地下1階・地上4階
- 延面積: 14,120㎡(図書館 9,562㎡、文書館 4,558㎡)
- 工期: 平成3年10月~平成5年12月
- 開館: 平成6年3月
- 蔵書冊数: 図書館:122万冊(開架22万冊、閉架100万冊)、文書館:最終期延長約27km(開架書架 2,129m、貴重書架(木製)368m、電動集密書架 5,585m)
「文書館」というと、難解な古文書が並び、専門家以外利用しにくいイメージがあるかもしれないが、実は官公庁で作成された書類や統計など、豊富な資料が保管されており、将来は活用を盛んにしたい施設の一つである。
例えば、当文書館では、家系の歴史やご先祖様の生活はどんなものだったかを調べる事もでき、自分で自治体や生活に関係する様々なデータをグラフで見たり、香川の歴史や文化、生活、地理などを楽しいクイズにしたゲームも楽しめる。県出身の有名人のビデオも放映されている。積極的に情報を提供するこの「情報フロア」は、将来の文書館のあるべき姿の一例と言えるだろう。
「今後は資料の目録を整備し、個人のプライバシーを守りながら、多くの市民に情報発信していく場としたい」と、担当の方も意欲的であった。
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写真2:図書館AVブース

余裕のあるレイアウト、シックな内装、窓からの庭園風景に、利用者の評判も良い。


(身障者用)
(1994年7月25日刊行)