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VOICE「環境問題に対応する新しい包装技術」業務用バッグインボックスについて

大日本印刷株式会社

寄稿者:
大日本印刷株式会社
PAC 第一開発センター 開発第3部第3課
金井 満

1.はじめに

バッグインボックス (BIB)は日本で上梓されて以来、業務用液体容器として着実に市場に定着してきている。最近の環境問題を背景として易廃棄性容 器としての特徴が改めて注目されている為、BIBの特徴及び最近の動向について紹介するものとする。

2.BIBの種類

BIBとは、「構造体となる段ボール箱に収納した 複合容器」と定義できる。
BIBの内袋としては、真空成形、中空成形により 形作られる成形タイプと、フレキシブルなフィルムを 熱溶着して作られるフィルムシールタイプがある。

BIBの特徴としては、
① 省資源容器である
② 軽量でコンパクトな容器である
③ 廃棄性に優れる
④ 化学的性質に優れる(錆びがでない)
⑤ 強くて丈夫である
などがある。

この中でも最近注目されている特徴は、省資源、廃棄 性であり、廃棄物の量が少なくできるため、廃棄物の有償化に対しても有利な容器である。
フィルムシームイプと成形タイプは各々特徴を有し ているが、

  • 容器サイズが自由に設定できる
  • 肉厚が薄く、軽量で樹脂使用量も少ない

などの点で、フィルムシールタイプが最近は注目されている。(写真1、表1)

業務用バッグインボックス
写真1 フィルムタイプのBIB
表1 成形タイプとフィルムシールタイプの特徴

3最近の動向について

3-1 歴史的背景

BIBは、樽、ピン、缶の代替容器としてスタート したが、代替容器としてだけでなく、新タイプの容器 として使われる場合も多くなっていた。 例えば醤油を例にとると、注出口にコック機能を付 与し小出し性をもたせることで、床に置いたものをそ の都度持ち上げて使用する缶の使い方を、BIBでは 棚の上などに置いたまま使用させる、という使い方に 変え、新しい商品展開、新しいユーザー発掘を行うことに成功している。(写真2)

写真2 コック付BIB

3-2 社会的背景

ここ数年来、廃棄物処理業者が缶を引き取らない。 引き取り費用がばかにならない等、かなり切実な問題 になっていたが、昨年4月に、東京都廃棄物処理,再 利用条例が施行され、廃棄物の有償化,事業系廃棄物 と家庭廃棄物の仕分けの徹底、省資源(廃棄物の発生 の抑制)、再生、易処理性が基本となっており、他の 自治体も東京都に倣う可能性がある為、業務用容器の 廃棄物処理について、一層真剣に取り組む必要がでて きている。

そこで、省資源、焼却、再生が可能で、廃棄物とし ての容積、重量が小さいBIBは、環境対応容器であ ると考えられている。

3-3 BIBの材質

① 内袋
BIBには、内容物保護性に加え、強度が必要であ り、衝撃吸収力が有り耐ピンホール性に優れた材料が 選定されている。
主に、低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共 重合体、直鎖低密度ポリエチレン、などが強度を付与 するために用いられ、内容物の酸化防止などを目的としたガスペリア材としては、ナイロン、エチレン酢酸 ビニル共重合体ケン化物、サランコートナイロンなど が用いられ、上記のポリエチレンなどと組み合わせて 使われる場合も多い。

② 段ボール
BIB川の段ボールは、単なる外装ケースではなく、 内袋と合わせてひとつの容器である、という考え方が 根底に有る為、一般の梱包段ボールの考え方とは一線 を画している。材質は表2に示すものが一般的であり、 一般の梱包段ボールとの違いは、安全係数を8~10(一 般梱包段ボールは通常3~5)で設計していることに ある。これは、内袋が柔軟な為、内容物が重力方向に 加え、側面にも広がろうとするのを防ぐ為である。

表2 段ボール仕様例   (段積み数は内容物が水の場合)

3-4 容器形態

形態の大きな変化はBIB登場の当初からあまりないが、コック、ポンプ等で内容物を小出しにする、ディスペンサーシステムとのドッキングを行う等、使われる場所、使われ方の多様化に対応した容器となってきており、この点も缶にはあまり見られなかった傾向である。(表3、表4、図1)
又、18ℓ缶入り商材が重い、という末端ユーザーの 声に対応し、10ℓ前後での容量での対応も増えている。 フィルムシールタイプのBIBは、容量の設定が比較的自由にできる為、当社でも、4ℓ、8ℓ、15ℓ等従来一般的な容量であった5ℓ、10ℓ、18ℓ、20ℓ以外の容量 での対応が増えてきている。  
一方では、200ℓ~1000ℓの大容量化の動きも出てきており、この傾向は今後も続くと見られる。

表3 BIBシステムと従来システムの容器としての比較
表4 BIBシステムと従来システムの自販機、ディスペンサーシステムとしての比較
図1 BIBシステムと従来システムの内容液取り出し構造

3-5 充填システム

一般的には、成形タイプのBIBは段ボールに内 袋をセットした状態で充填し、フィルムシールタイ プは、内袋に充填した後、段ボール箱に収納する。  
当社では、フィルムシールタイプの充填適性を向 上させ、作業者の労働負荷を低減させることを考慮 した連続袋システムを開発している。 これは、製袋 された内袋がミシン目で100~200袋つながってお り、連続袋システム内で、充填、キャッピング、袋 の切り離し、段ボールへの投入までを自動で行うものであり、段ボール製函、封緘ラインと組み合わせ ることにより、ほとんど人手を介することなく充填包装作業ができる、というものである。 (写真3)
図2に大日本印刷の連続袋システムの一貫ラインのー例を挙げる。

写真3 連続袋充填システム DN-NABC
図2 BIB自動充填包装ラインの一例    ①BIB充填機(DN-BC)②全自動製函機③ベルト駆動コンベア④ローラーカーブコンベア⑤駆動ローラーコンベア⑥ローラーカーブコンベア⑦ウエイトチェッカー⑧駆動ローラーコンベア⑨全自動封緘機⑩捺印駆動コンベア

3-6 内容物別動向

BIBに詰められている内容物の一例を示す。  
①醤油、ソース等の調味液。 歴史は古い。  
②製パンメーカー向け原料であるクリーム等の油脂 加工品。 最近、無菌連続袋システムの導入が活発 化。  
③シャンプー、リンス等の界面活性剤。 小出し用コ ックの採用も有る。  
④ミネラルウォーター。 低臭タイプの内袋にて対応 している。  
⑤セメント硬化剤、コーキング剤等の建築現場で使 用される内容物。
⑥果汁。 無菌システムが主流。 500ℓ、1000ℓも有り。

この他、写真処理剤、ワイン、清酒、等、幅広く使用 されているが、最近では、危険物の範疇に入る様な内 容物でもBIB化の要望は強くなっている。

4 おわりに

以上、BIBについて述べてきたが、社会的背景から見て、今後もBIBの動きは活発化するものと思われる。内袋ばかりでなく、省力化、人件費の削減を目的とした包装ライン化のウェートも最近はかなり高く なってきている。 当社は今後共、単なる容器供給メー カーとしてだけでなく、設備所を含めたトータルプロデュースを行い、広い視点をもって、BIBの開発を進めていく必要があることを痛感している次第である。

※(社)日本包装技術協会「包装技術」1993年12月号  P.28~P.37掲載の内容を加筆、削除等一部改変の上転載

参考文献

(社)日本包装技術協会 :「食品包装便覧」、 (社)日本包装技術協会 :「包装技術便覧」、 日本段ボール工業会 、全国段ボール工業組合連合会 :段ボール手帳1993

(1994年3月31日刊行)