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(注意)本記事は、金剛株式会社が1994年3月31日に発行した機関誌「PASSION VOL.13」の内容を、当時の記録として公開するものです。記事内の情報は発行当時のものであり、現在の状況とは異なる場合があります。また、当時の社会情勢や倫理観を反映した表現が含まれている可能性があり、現代の基準に照らし合わせると一部不適切と感じられる箇所もあるかもしれませんが、資料的価値を考慮し、原文のまま掲載しています。掲載されている商品やサービスは、既に販売・提供を終了している場合があります。
本記事は、著作権法上の引用の範囲内で掲載しています。当時の記録として、皆様に楽しんでいただけましたら幸いです。
寄稿者:
大日本印刷株式会社
PAC 第一開発センター 開発第3部第3課
金井 満
1.はじめに
バッグインボックス (BIB)は日本で上梓されて以来、業務用液体容器として着実に市場に定着してきている。最近の環境問題を背景として易廃棄性容 器としての特徴が改めて注目されている為、BIBの特徴及び最近の動向について紹介するものとする。
2.BIBの種類
BIBとは、「構造体となる段ボール箱に収納した 複合容器」と定義できる。
BIBの内袋としては、真空成形、中空成形により 形作られる成形タイプと、フレキシブルなフィルムを 熱溶着して作られるフィルムシールタイプがある。
BIBの特徴としては、
① 省資源容器である
② 軽量でコンパクトな容器である
③ 廃棄性に優れる
④ 化学的性質に優れる(錆びがでない)
⑤ 強くて丈夫である
などがある。
この中でも最近注目されている特徴は、省資源、廃棄 性であり、廃棄物の量が少なくできるため、廃棄物の有償化に対しても有利な容器である。
フィルムシームイプと成形タイプは各々特徴を有し ているが、
- 容器サイズが自由に設定できる
- 肉厚が薄く、軽量で樹脂使用量も少ない
などの点で、フィルムシールタイプが最近は注目されている。(写真1、表1)


3最近の動向について
3-1 歴史的背景
BIBは、樽、ピン、缶の代替容器としてスタート したが、代替容器としてだけでなく、新タイプの容器 として使われる場合も多くなっていた。 例えば醤油を例にとると、注出口にコック機能を付 与し小出し性をもたせることで、床に置いたものをそ の都度持ち上げて使用する缶の使い方を、BIBでは 棚の上などに置いたまま使用させる、という使い方に 変え、新しい商品展開、新しいユーザー発掘を行うことに成功している。(写真2)

3-2 社会的背景
ここ数年来、廃棄物処理業者が缶を引き取らない。 引き取り費用がばかにならない等、かなり切実な問題 になっていたが、昨年4月に、東京都廃棄物処理,再 利用条例が施行され、廃棄物の有償化,事業系廃棄物 と家庭廃棄物の仕分けの徹底、省資源(廃棄物の発生 の抑制)、再生、易処理性が基本となっており、他の 自治体も東京都に倣う可能性がある為、業務用容器の 廃棄物処理について、一層真剣に取り組む必要がでて きている。
そこで、省資源、焼却、再生が可能で、廃棄物とし ての容積、重量が小さいBIBは、環境対応容器であ ると考えられている。
3-3 BIBの材質
① 内袋
BIBには、内容物保護性に加え、強度が必要であ り、衝撃吸収力が有り耐ピンホール性に優れた材料が 選定されている。
主に、低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共 重合体、直鎖低密度ポリエチレン、などが強度を付与 するために用いられ、内容物の酸化防止などを目的としたガスペリア材としては、ナイロン、エチレン酢酸 ビニル共重合体ケン化物、サランコートナイロンなど が用いられ、上記のポリエチレンなどと組み合わせて 使われる場合も多い。
② 段ボール
BIB川の段ボールは、単なる外装ケースではなく、 内袋と合わせてひとつの容器である、という考え方が 根底に有る為、一般の梱包段ボールの考え方とは一線 を画している。材質は表2に示すものが一般的であり、 一般の梱包段ボールとの違いは、安全係数を8~10(一 般梱包段ボールは通常3~5)で設計していることに ある。これは、内袋が柔軟な為、内容物が重力方向に 加え、側面にも広がろうとするのを防ぐ為である。

3-4 容器形態
形態の大きな変化はBIB登場の当初からあまりないが、コック、ポンプ等で内容物を小出しにする、ディスペンサーシステムとのドッキングを行う等、使われる場所、使われ方の多様化に対応した容器となってきており、この点も缶にはあまり見られなかった傾向である。(表3、表4、図1)
又、18ℓ缶入り商材が重い、という末端ユーザーの 声に対応し、10ℓ前後での容量での対応も増えている。 フィルムシールタイプのBIBは、容量の設定が比較的自由にできる為、当社でも、4ℓ、8ℓ、15ℓ等従来一般的な容量であった5ℓ、10ℓ、18ℓ、20ℓ以外の容量 での対応が増えてきている。
一方では、200ℓ~1000ℓの大容量化の動きも出てきており、この傾向は今後も続くと見られる。



3-5 充填システム
一般的には、成形タイプのBIBは段ボールに内 袋をセットした状態で充填し、フィルムシールタイ プは、内袋に充填した後、段ボール箱に収納する。
当社では、フィルムシールタイプの充填適性を向 上させ、作業者の労働負荷を低減させることを考慮 した連続袋システムを開発している。 これは、製袋 された内袋がミシン目で100~200袋つながってお り、連続袋システム内で、充填、キャッピング、袋 の切り離し、段ボールへの投入までを自動で行うものであり、段ボール製函、封緘ラインと組み合わせ ることにより、ほとんど人手を介することなく充填包装作業ができる、というものである。 (写真3)
図2に大日本印刷の連続袋システムの一貫ラインのー例を挙げる。


3-6 内容物別動向
BIBに詰められている内容物の一例を示す。
①醤油、ソース等の調味液。 歴史は古い。
②製パンメーカー向け原料であるクリーム等の油脂 加工品。 最近、無菌連続袋システムの導入が活発 化。
③シャンプー、リンス等の界面活性剤。 小出し用コ ックの採用も有る。
④ミネラルウォーター。 低臭タイプの内袋にて対応 している。
⑤セメント硬化剤、コーキング剤等の建築現場で使 用される内容物。
⑥果汁。 無菌システムが主流。 500ℓ、1000ℓも有り。
この他、写真処理剤、ワイン、清酒、等、幅広く使用 されているが、最近では、危険物の範疇に入る様な内 容物でもBIB化の要望は強くなっている。
4 おわりに
以上、BIBについて述べてきたが、社会的背景から見て、今後もBIBの動きは活発化するものと思われる。内袋ばかりでなく、省力化、人件費の削減を目的とした包装ライン化のウェートも最近はかなり高く なってきている。 当社は今後共、単なる容器供給メー カーとしてだけでなく、設備所を含めたトータルプロデュースを行い、広い視点をもって、BIBの開発を進めていく必要があることを痛感している次第である。
※(社)日本包装技術協会「包装技術」1993年12月号 P.28~P.37掲載の内容を加筆、削除等一部改変の上転載
参考文献
(社)日本包装技術協会 :「食品包装便覧」、 (社)日本包装技術協会 :「包装技術便覧」、 日本段ボール工業会 、全国段ボール工業組合連合会 :段ボール手帳1993
(1994年3月31日刊行)