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(注意)本記事は、金剛株式会社が1992年4月23日に発行した機関誌「PASSION VOL.9」の内容を、当時の記録として公開するものです。記事内の情報は発行当時のものであり、現在の状況とは異なる場合があります。また、当時の社会情勢や倫理観を反映した表現が含まれている可能性があり、現代の基準に照らし合わせると一部不適切と感じられる箇所もあるかもしれませんが、資料的価値を考慮し、原文のまま掲載しています。掲載されている商品やサービスは、既に販売・提供を終了している場合があります。
本記事は、著作権法上の引用の範囲内で掲載しています。当時の記録として、皆様に楽しんでいただけましたら幸いです。
数々の厳しい検査に合格、性能の高さを 認められた縦型EH



電源開発(株)の松浦火力発電所内資材倉庫に、金剛㈱)が提案・製作した「縦型電動ラック (EHタイプ及びKEMタイプ) システム」が導入された。全国でも納入例の少ない、この縦型電動ラックシステムの集中制御による在庫管理の実現は、金剛の担当エンジニアがユーザーのニーズ・実情などのあらゆる条件を検討し、最も適している保管システムを編み出したことにより可能となった.
日本全国に、常に安定した電力を24時間休みなく供給するため、日夜厳しい安全管理を行わねばならない発電所。その保全を完璧にするのは、確実な部品のストックと、素早く適切な対応である。メンテナンス部品全てのロケーション、保管状態などの把握が常に厳しく要求されるのである。
安定した電力供給を目指して
会社概要

美しい自然と若いエネルギーの発電墓地・松浦
松浦火力発電所の特長は何と言っても、美しい周囲の環境との見事な調和と言えるだろう。用地の埋め立てにおいても、用地内にあった小さな島をそのまま残すなど環境保護への積極的な心配りが見られ、職員のリフレッシュにも役立っている。また、日本最大を誇る石炭火力発電基地であるが、最新の技術を駆使した大規模な環境対策設備を有し、大気・水質・水温・騒音などに厳しい基準を自らに課している。
独自の手法でストック部品一覧表を分析
電気の無い生活を想像したことがあるだろうか? ・・・・・・現在では、日常生活の細部にまで行き渡り、文明の利器の全てをつかさどる電気。 それが1日でもなくなってしまったら、とても暮らしていけないのではないかとぞっとする人も多いことだろう。
我々の生活を守る安定した電力供給のためには、発電機が常に正常な状態で稼働していることが必要である。万が一にも故障・不調があってはならない。発電所を維持・経営している電源開発(株)では、発電機を安全に機能させるため、多種多様な発電機・周辺機器のメンテナンス部品を常時ストック、迅速で適確な部品交換の対応に準備万端、万全なメンテナンス体制を整えている。
松浦火力発電所では資材倉庫が新築されるまでのあいだ、部品は直置きで分散した倉庫に保管されており、計画段階から、集中保管を採用することは決定していた。数々の収容方法が考えられたが、どの方式が最も無理なく保管物が収容できるかを、物流システムメーカーの専門家の手にゆだねることになり、金剛が全面的にエンジニアリングすることとなった。
最大のネックは、どの機種のラックをどのような形式・レイアウトすれば、スペース効率を最大にできるかだった。 全アイテムのデーター覧表を分析した金剛のエンジニアからは、
(1)直置きの場合
(2)固定ラックの場合
(3)横型電動ラックの場合
(4)縦型電動ラックの場合
(5)自動倉庫の場合
の5案が提出され、最終的には最も効率のよい縦型電動ラックシステムが採用されたのである。
建築データ
名称 | 資材倉庫 |
規模 | 建築面積 324㎡ |
構造 | 地上1階 S構造 |
レイアウト | 電動ラック(EHタイプ) 面積 152㎡ 電動ラック(KEMタイプ) 面積 15㎡ 固定棚(KMタイプ) 面積 11.7㎡ |



完全集中制御による保管を実現する保全システム
導入前の問題点
- 保管物(メンテナンス部品)を複数の倉庫に分散して保管。
- 重量物は直置きで、荷捌き時間のロスが大きい。
- 分散保管のため、出入庫作業の効率が悪い。
- リードタイム・動線が長い。
- 在庫品が分散しているため、在庫管理に手間がかかる。
ユーザー側の業務の性格上、安全性・品質の高さには非常に厳しい要求が出され、特に安全なシステムを作るよう要請があった。例えば、障害物が棚にはさまるとうの緊急の場合に、瞬時に棚をストップさせるため、ブレーキ付ギアードモーターを採用。また、入出庫作業中には絶対に作動しない作業フローを作成する、綿密なトラブルシューティングフローを用意するなど、二重三重の安全対策を実施し、高精度な集中制御保管システムが現実のものとなった。
導入効果
- 保管物を1ヶ所で集中管理できる。
- 集中保管により、作業効率が格段にUP。
- 直角積み付けが可能(フォークリフトの直進のみで入出庫できる)。
- リードタイム・動線の短縮により、作業者の負担が軽減し、安全性が増加。
- 縦型電動ラックの採用による、スペースの最大限な有効利用。
- 少量多品種を、間口を最小にしたラックでフレキシブルに集約保管。
- ロケーション管理により誰にでも入出庫が簡単にできる。
- 在庫品の状態管理がより厳密にできる。
- 安全装備の充実により作業者への安全性を配慮。
- 将来コンピューターを利用した在庫管理システムの導入が可能。
1.縦型電動ラックEHタイプ (キャンチレバータイプ)
- 寸法・台数: W450×12連×D2,200×H3,150(4段) 3台
W450×6連×D2,200×H3,150(4段) 3台
W450×12連×D2,200×H3,150(5段) 1台
W450×6連×D2,200×H3,150(5段) 1台 - 積載荷重: 1連当り 1,600kg
2. 縦型電動ラックKEMタイプ
- 寸法・台数: W1,800×3連×D856×H2,560(5段) 1台
W900×3連×D856×H2,560(5段) 1台 - 積載荷重: 1連当り 1,200kg
3. 固定式中量ラックKMタイプ
- 寸法・台数: W900×11連×D650×H2,417(5段) 1台
W900×6連×D650×H2,417(5段) 1台
W900×3連×D650×H2,417(5段) 1台 - 積載荷重: 1連当り 1,200kg
4. 電装仕様
- 方式: 集中制御方式
- 主電源: 3相AC200V 10A
- 操作電圧: DC24V
- 駆動部: ブレーキ付ギアードモーター
- EHタイプ: 0.1kW×1台 (W3,000タイプ)
0.2kW×1台 (W5,700タイプ) - KEMタイプ: 60W×1台
- EHタイプ: 0.1kW×1台 (W3,000タイプ)
- スピード: 4.0m/min (0.067m/sec)
各ラックの電装システムは上記の駆動装置、台枠安全バー、停止装置によって構成され、集中制御盤によって各々のラックを制御する。
5. 制御システム
集中制御盤 (操作パネルつき) (自立型) :1面
非常停止スイッチ: 2ヶ所
台枠安全バー (各棚連に付2ヶ所) :10ヶ所
駆動装置 (KEM) サーマルプロテクター付リバーシブルモーター :1式
(EH) ブレーキ付ギアードモーター :1式
停止装置 :1式
パトライト (赤色回転灯) :10ヶ所
運転ブザー :1式
異常ブザー :1式
その他 :1式


システム構成図

システムの運用

評価・感想
ユーザーより在庫一覧のリストを提出され、金剛のエンジニアが荷姿の間口・高さ・奥行・重量などの全条件を解析し、最良の機種・レイアウトを選考、システムを作成した。荷姿はW200×D250×H300からW3,700×D900×H2,000、また重量についても0.5kg/個から4,450kg/個と、個々のアイテムの条件が非常に幅広く、どの荷姿を基準と考えるか、どのような保管方法が考えられるかを算出し、シミュレーションによりそれらのシステムの適合性をチェックする作業に多くの時間と労力を費やした。これまで蓄積されたノウハウと新しい手法により問題点を分析し、最良の提案ができたことは、これからの省スペース機器の方向性をつける意味でも、大きな意義があったと言えよう。
また、高度な安全性能を施した保管システムであることも高く評価できる。 担当エンジニアが現地に何度も足を運び、納得するまで協議を重ね、ユーザー側の現状に適した保全システムを作り上げたのである。どのような物件でも、最も基本的であり、かつ最も難しいのは、ユーザーのニーズをどのように実現するかの一点に尽きる。ユーザーの要望を過不足なく現実の形にするのは困難をきわめ、ユーザー・営業担当・エンジニアの忌憚のない意見の交換が行われなければ、決して成功しない。特にエンジニアには広い知識と経験を、営業マンには事をリードする力量が、今後ますます求められるようになるだろう。


(1992年4月23日刊行)