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Another PASSIONシリーズ

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和歌山市民図書館

市民が主役の、「街の核」となる図書館へ


し手:岩西 智宏(岩西産業株式会社 アトリエグリッド一級建築士事務所)
              小川 貴央(株式会社サスカッチ 代表取締役)
聞き手:原田 亜美(金剛株式会社 社長室)

※所属・役職は取材当時のものです。

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左から アトリエグリッド 岩西様・サスカッチ 小川様

  和歌山市民図書館では、平成27年に発表された「和歌山市民図書館 新図書館基本構想」に基づき、新和歌山市駅への移転準備が進んでいます。今回は新図書館の基本計画策定業務を担当されたアトリエグリッドの岩西様、サスカッチの小川様にお話を伺いました。
 

―この度は基本計画の策定業務を担当されたとのことですが、まずお二人が普段はとのようなお仕事をされているのかを教えて下さい。これまでのお仕事の中でこうした計画策定業務をされたご経験はあったのですか。

 

アトリエグリッド外観

 アトリエグリッド一級建築士事務所では普段、建築デザインや企画設計監理業務をしています。公共施設の設計をさせて頂いた例はありましたが、基本計画策定を請け負ったことはありませんでした。株式会社サスカッチでは、映画祭などのまちづくりに関するイベント企画を行っていますが、やはり公共図書館の基本計画策定業務は初めての試みでした。
 

―初めての業務に取り組もうと思われた理由はありますか。

 
 やはり私たち自身が元々和歌山市で生まれ、幼少期に市民図書館へ行っていたこともあり、図書館には思い入れがありました。そのため、ぜひこの基本計画策定業務に挑戦してみたいと思い、初めてのことではありましたが手を挙げることにしたのです。
 業者に選定された後は、まず各所の見学などを通して図書館について勉強するところから始め、ワークショップの内容を考えていきました。
 

―ワークショップの概要について教えて下さい。

 
 まずワークショップの目的は、基本構想において新図書館の基本理念が「図書館がつなぐ-「本と人」 「人と人」 「人とまち」- 知・情報・交流・くつろぎの拠点」と設定されたことを踏まえ、それを具体化していくことでした。図書館を媒介として人・本・まちがどのように出会い、新しい価値を創造できるかに関するアイデアを出すために、キックオフ講演会1回と、ワークショップ4回を開催しました。【各回詳細は文末表参照】 

講演会

 4回のワークショップの前にキックオフ講演会を設けたのは、自分たち自身が図書館の見学をしてみて初めて「図書館ではこういうこともできるのか」と驚いた経験から、そもそも図書館について知る機会そのものが少ないという現状に気付いたためです。市民の皆さんも同様の状況に置かれているのではないかと思い、まずは図書館について知ってもらおうと考えたのです。講師には和歌山大学附属図書館の渡部館長をお招きしました。先進的な図書館の紹介を通して図書館機能の説明をして頂きながら、図書館は「成長する有機体」として新しく建てた時がスタートだということ、そこから成長し、市民みんなで育てていくものだということをお話し頂きました。
 また、その翌週から始まった第1回目のワークショップにおいても、まずオリエンテーションや図書館の最新事例に関するミニレクチャーを行ってから本格的なディスカッションに入りました。

ワークショップの様子

 それ以降のワークショップにおいては、各回のテーマについてブレインライティングという方式を用いたり、実際に街をあるいたりしながらアイデアを出していきました。そして最終的にはワークショップを通じて出された、まちと図書館をつなぐ具体的なアイデアを基にしながら、さまざまな年代・職業の架空の市民を想定して図書館利用ストーリーを作成し、その相関図を作りました。この相関図は完成した基本計画の中に実際に盛り込まれています。
 

キーワード相関図

 
 

―ワークショップの手応えや感想を教えて下さい。

 
 まず図書館を知ってもらう取り組みをした甲斐があったのか、ワークショップ本番では本当に多くの方が参加してくださり、たくさんの斬新なアイデアが出ました。これまで、「図書館に興味はあるけど実際にどう関わればいいのか分からない」という方が多かったのかもしれません。中にはお子さんをつれてワークショップに来てくれた方もいて、ワークショップの間は市の教育委員会の方がお子さんの面倒見を見てくれた…ということもありました(笑)。非常にアットホームな雰囲気の中で開催できたと思います。私たちとしても、やはり図書館づくりの主役は市民の皆さんだと思っていましたので、こうした形で皆さんの意見を聞くことができて良かったです。皆で作った図書館だからこそ、皆で使おうという気持ちも生まれると思います。
 また、図書館について考える機会を引き続き設けていきたいと考え、ワークショップが終わった後にも「みんなでつくろう未来の図書館」(以下「みん図書」)という団体を立ち上げました。図書館を考える勉強会などの活動をしています。
 

―勉強会の詳細について教えて下さい。

 
 有識者の方を招いたトークライブや、ワークショップを行いました。ワークショップはこれまでに3回実施しており、1回目は「図書館とカフェ 」、2回目は「こんなんあったらイイネ!イベント、特設コーナー・スペース 、3回目は「図書館と交通」というテーマを設定し、基本計画から更に具体的な図書館のありかた・施設の使い方について参加者とたくさんの議論を重ねています。
 その他にも、和歌山市内の学校司書さんがいらっしゃる学校図書室を訪問し、お話を聞いたこともあります。これがきっかけで学校関係の方々ともお話するようになり、校長先生を初めとする教員の方々から「学校と図書館の連携はどうすればいいだろうか」というような相談も頂くようになりました。
 このような活動を通して、図書館づくりだけでなく、和歌山市全体の街づくりに携わることができていると感じています。そして、今後いっそう真剣に図書館づくりや街づくりに取り組んでいきたいと考え、この度「みん図書」を一般社団法人化することになりました。私たちと一緒に市民図書館のワークショップや「みん図書」の活動に参加してくれていたもう一人のメンバーが代表を務めます。図書館をはじめとする街づくり業務に携わっていく予定です。
 

―市民図書館から始まった活動が、有志の団体となり、法人化にまで発展したのですね。法人となった「みん図書」の今後の展望を教えて下さい。

 
 まずは和歌山市民図書館に引き続き関わっていきます。新図書館のことも視野に入れつつ、現図書館でのイベントも企画したり、「和歌山市民図書館友の会」の方と協力しての活動を増やしたりできればと思います。いずれは市内外の「友の会」同士をつなぐような役割も担ってみたいですね。
 また、市民図書館を核にしつつ、本や雑誌を設置していらっしゃる街の飲食店などをつなぎ、街全体を図書館にするような取り組みも面白いのではないかと考えています。
 

―それでは最後に、和歌山市民図書館の新館に対して期待することを教えて下さい。

 
 「街の核」のような存在にできればと思います。市内にある7つの分館とのつながりの中心という意味でも「核」になりうると思いますし、駅という立地上、他の府県や隣町とのつながりも活かすことができるのではないかと考えています。
 また、やはり次世代につなげていくという意味で、子供たちが使いやすい環境にできればと思います。早いうちから文化的なものに触れることで文化的なものへの理解を深めてほしいですね。
 

―本日は貴重なお話をありがとうございました。

【表】ワークショップ各回詳細

テー

「まち」から生まれる図書館・図書館から生まれる「まち」

目的

基本構想において新図書館の基本理念を「図書館がつなぐ-「本と人」 「人と人」 「人とまち」- 知・情報・交流・くつろぎの拠点」としていることを踏まえ、図書館を媒介として人・本・まちがどのよう に出会い、新しい価値を創造できるかについて、和歌山市のまちの中へ出て図書館のサービスとつながる資源を発見し、新しい図書館が和歌山のまちづくりに果たす役割を市民とともに考える。

各回内容

キックオフ講演会

演題「みんなでつくろう未来の図書館」

講師 渡部幹雄(和歌山大学附属図書館 館長)

平成27年11月17日(火)開催/参加者 65 名

日本全国、世界各国の先進的な図書館を画像と共に分かりやすく紹介。図書館は本の貸出だけでなく、いろいろなことができる場であるという話から、図書館は「成長する有機体」として新しく建てた時がスタートで、そこから成長し、市民みんなで育てていくものだという指摘があった。

第 1 回:まちと図書館をつなげるためのアイデアづくり

平成27年11月21日(土)開催/参加者 26 名

オリエンテーション、図書館最新事例ミニレクチャーに続き、「和歌山市の文化・歴史・観光を見つけて共有し、学ぶためのアイデアを考えよう」「働く・住まう・育てるに役立つ図書館、まちのアイ デアについて考えよう」という2つのテーマについて、参加者が自由にアイデアを出し合うブレインライティング方式で実施。5チームに分かれそれぞれのテーマについてチームごとにアイデアを書き出し、模造紙上に整理していった。

 第 2 回:わかやまの「図書館と本と情報とつながり」マップづくり ―まち歩き編

平成27年11月28日(土)開催/参加者 31 名

1回目で出たアイデアを基にチームごとに和歌山のまちを歩き、まちと図書館をつなぐ資源を発見し、撮影した写真をマップに落とし込んでいくことでまちと図書館がつながる具体的なイメージを作った。 

第 3 回:わかやまの「図書館と本と情報とつながり」マップづくり ―地図づくり編

平成27年12月6日(日)開催/参加者 28 名

2 回目で作成したマップを基に、発見した資源が新しい図書館の機能・サービスと具体的にどのように結びつくかを意識しながらチームごとにテーマを設定した「まち歩き地図」を作成した。

第 4 回:まちと図書館をつなげるためのアイデアを基本計画に活かす

平成27年12月12日(土)開催/参加者 35名

1回目~3回目までに出されたまちと図書館をつなぐ具体的なアイデアを基に、新しい図書館を利用するイメージをさまざまな年代、職業の市民を想定して図書館利用ストーリーを参加者全員が作成し、その相関図を作った。

 
 

<取材日:平成28年8月18日>

 

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