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Another PASSIONシリーズ

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相馬市歴史資料収蔵館

茶室から生まれた展示空間


話し手:工藤 純一 (株式会社綜企画設計福島支店 設計部長)
聞き手:矢賀部 仁 (金剛株式会社 社長室)

|茶室から生まれた展示空間|相馬市歴史資料収蔵館×株式会社綜企画設計|Another PASSION|:PASSION+:KONGO

—相馬市歴史資料収蔵館の建設工事では設計・監理を担当されたとのことですが、いま振り返ってみてご苦労された点を教えていただけますか。

 

相馬市歴史資料収蔵館

『相馬市歴史資料収蔵館』は隣接する民俗資料館の『郷土蔵』と『相馬市民会館』の3館が広い駐車場を取り囲む形で立地しています。「文化ゾーン」と呼ばれるこの一帯の建築工事はほぼ同時進行で行われました。工事終盤は駐車場スペースの外構工事と3つの建物の工事が輻輳しあったため、その調整に苦労しましたが、思い返すとなかなかできない設計・監理業務の良い経験をさせていただいたと思います。
 

—3館とも統一的な外観になっていますね。

 

相馬市民会館

 
相馬市は中村城を擁する城下町です。相馬の歴史が感じられるようにと城下町を意識して3館とも白と黒を基調としつつ歴史資料収蔵館は木の素材を、郷土蔵は“なまこ壁”をそれぞれ取り入れ、統一感は保ちながらも各々特徴のある外観にしました。このイメージを膨らませるにあたっては、関西の建築物や街並みが大変参考になりました。関西地方も京都や奈良といった歴史的な街並みや建造物が多い地域ですので、当社の関西方面の各支店から貴重な資料を送ってもらい参考にさせてもらいました。
 

相馬市郷土蔵

 
 

—2階の展示空間は、なにか吸い込まれるような印象を受けましたが。

 

 ヒントになったのは茶室です。私自身、剣道をたしなんでおり、剣道の活動の一環として時折茶室に赴いて茶の湯を立てることがあります。茶室は天井も低く広さも四畳半程度ととても狭い空間に何人もの人が集うのですが、あの小さなにじり口から身を屈めて中に入ると、室内に入った瞬間、実際の空間よりずっと広く感じるのです。この作用を体験的に知っていましたので、この様な仕掛けを展示室にも再現できないかと考えました。展示室の入り口には門構えがあったと思います。あの門構えで天井の高さを一度低く抑えて、なおかつ足もとには相馬の歴史を記したレリーフを埋め込むことで視線を足もとに誘導するようにいたしました。門構えを抜けると本来の建屋の天井の高さがひろがり、茶室で感じるような空間の広がりを体験できる仕掛けにしています。正面奥突き当りの壁面には巨大なディスプレイ

資料館2階 

展示室入口の門構え

を設置しました。相馬市民にとって相馬野馬追は格別の意味があります。その象徴的な映像を門構えを抜けた視線の先にあるディスプレイに投影し、まわりの「静」の展示と対比させたダイナミックな効果を演出しました。このメインの展示を囲むように左右には相馬市出土の土器や相馬市ゆかりの彫刻家 佐藤玄々に関する展示を配置し、全体のバランスをとりました。展示室全体の空間構成もさることながら、総勢150点ほどに及ぶ品々をどのように魅せるか、検討を重ねに重ねて出来上がったのが今の形です。
 

—市の方から要望されていたイメージなどはありますか?

 

市長からは「将来どのような形にも対応できるフレキシブルな博物館を」というご指示がありました。先ほどご紹介した入口の門構えも、中置きの展示ケースも、さらには展示室壁面の展示ケースも全て取り外しが可能で、スケルトン状態から全く違う展示空間を作り出すこともできる作りになっています。
 

—今後、この施設をどのように活用していただきたいですか?

 

「文化ゾーン」全体が市民の方々の集いの場所になればと思います。3館の建物に囲まれた駐車場は大きな広場です。これまで相馬市にはこのような人々が集まれる広大なスペースはありませんでした。3館の建物は景観への配慮から2階程度の高さに抑えて、圧迫感を与えないように工夫しています。

資料館2階 

門構えを抜けると足もとにはレリーフ。突きあたりの壁は相馬野馬追の映像を映し出したディスプレイ

多くの市民の方々が集まることができ、かつ相馬市の歴史を感じることができる開放的な場所ですので、まずは市民の方々のコミュニケーションが生まれるような場所になればと思います。もちろん観光客の方にも活用していただきたいです。市民会館のコンサートホールはオーストラリアのオペラハウスにも相当するほどの音響設計が施されています。上質なコンサートなどを聞きに来ていただき、あわせて相馬市の歴史資料、民俗資料などもにも触れていただけるような使い方をしてもらえると嬉しいですね。
 

—本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

 
<取材日:2014年8月26日>
 

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