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Another PASSIONシリーズ

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大分県立美術館

『多くの人が集まる美術館』を実現するために


し手:穴見 貴之
    (鹿島建設・梅林建設 建設工事共同企業体 大分県立美術館新築JV工事事務所 工事課長)
聞き手:原田 亜美(金剛株式会社 社長室)

|『多くの人が集まる美術館』を実現するために|大分県立美術館×鹿島建設株式会社|Another PASSION|:PASSION+:KONGO

大分県立美術館 外観

―本日は2015年4月24日にオープン予定の大分県立美術館工事について伺います。

 
 はい。大分県立美術館は、設計・監理は坂茂建築設計、施工は鹿島・梅林建設JVが担当しました。工期は平成25年4月から平成26年10月です。
 

―美術館の基本コンセプトは「多くの人が集まる美術館」のようですね。

 
 そうですね。そのコンセプトを実現するため、建築的にもオープンな空間が大きく設けられているなど、従来の美術館とは違った特徴があります。
 このように特徴的で特殊なつくりが多い建物ほど、施工途中は構造的に不安定になりがちです。限られた工期の中で、施工途中の安定性・安全性も確保しながら、設計仕様に合った建物を実現するのが私たちゼネコンの仕事です。
 

―それでは、実際の工事において工夫されたことや苦労されたことについて教えて頂きたいと思います。
まず、外観の大きな特徴にもなっている3階の外装や、1階の大きな可動式のガラス戸(以下、水平折り戸)などはいかがでしたか。

 
 どちらも私の担当箇所でした。3階の外壁は一見飾り物のように見えますが、実際は屋上の荷重を受ける構造体です。木材と、H鋼に木を巻いたハイブリッド素材の2種類を使っています。ただの飾り物なら薄板の木材を使うこともできますが、構造体となるとそうはいきません。木材の選定の基準や試験も厳しくなりますし、木を乾燥させるのにも時間がかかるなど、品質管理も難しくなりました。
 水平折り戸は世界でも類を見ない大きさでしたので、設計事務所からの指示もあり、事前にモックアップを作ってから実際の工事に取り掛かる必要がありました。
また、水平折り戸を開放した際に外とつながるゾーンは「アトリウム」と呼ばれ、柱がない部分の長さが32mにも及ぶ非常に大きな吹き抜けになっています。このように大スパンの鉄骨工事においては、まず隣接する管理・収蔵棟という建物の鉄骨を先に組んでしまい、そこから支えを得ながら展示棟の鉄骨を組み上げていくという工程上の注意が必要となりました。
 

水平折り戸

 
 さらに、吹き抜けの上の2階は吊り床になっています。そのため、2階より先に3階を作るなど、低層階から順に作る通常の工事とは異なる順序で進める必要がありました。また、ローリング足場を用いた工事になりましたが、非常に大きな足場で人の手で動かせなかったため、レールに乗せて動かすことになりました。
 

―ちなみに、水平折り戸を開放した場合、1階に展示している文化財を外気から守る方法はあるのでしょうか。

 
 1階の展示スペースではエアバリアという空調設備を使います。また、重要展示がある場合は3~6か月前から水平折り戸は閉めておくという運用の仕組みづくりも予定されています。
 

―空間を開放しながらも、文化財を安全な環境に置くための工夫があるのですね。

 
水平折り戸によってできる外とのつながりやオープンな空間は「多くの人が集まる美術館」のために重要なはたらきをするかと思います。その他にも美術館と外をつなぎ、オープンにするような特徴はありますか。
 ペデストリアンデッキもそういった特徴の一つだと思います。このペデストリアンデッキを介して、隣接するOASISひろば21 と美術館が直接連絡できるようになっています。県道の上をまたぐ歩道橋になるため、工事の際は道路を全面通行止めにする必要がありました。そのためには警察など関係各所からの許可を取らなければなりませんでしたので、工事前の諸準備だけで3ヶ月という時間がかかりました。また、実際の工事に入った後も、螺旋階段部分のガラス寸法の調整に高度な技術を求められるなどの苦労もありました。
 
※ 大・中ホールを擁する「iichiko 総合文化センター」 「NHK大分放送局」 「大分オアシスタワーホテル」 「商業施設」が一体になった文化情報発信基地
 

―ところで、工事現場の見学も行っていたと伺いました。

 
 これは「開かれた美術館」を目指すという方針を受けて、鹿島建設から提案したイベントです。県のイベントとも連携しながら開催していました。昨年の8月より3ヶ月に1日、大人の部・子供の部の2部構成で実施しました。ゼネコンがこういった見学会をすることは滅多になく、建物を作っている過程はなかなか見られませんので、参加者からも好評でした。見学の参加者は、応募があった人の中から抽選で選ばれます。初回の見学会では抽選漏れもほぼいなかったようですが、回を重ねると応募者も増え、激戦になったようです。また、この見学会とは別に、週に1回は他の美術館関係者の視察もありました。
 

―とても興味深い取り組みですね。
さて、そのように美術館の「オープンな部分」とは正反対の「クローズドな部分」になりますが、穴見課長は今回、収蔵庫の工事もご担当されたのですよね。

 

収蔵庫内の様子

 はい。収蔵庫については、使用する木材等に枯らし期間が必要ですから、工期に余裕がありませんでした。そのような中でも枯らし期間を最大限設けられるよう、収蔵庫全体についての計画を早期に決定し、使用木材の選定に取り掛かりました。今回は県産材である日田産の杉材を使ったのですが、その中でももともと有機酸が少ないものを厳選して使用することで、枯らし期間も可能な限り短く安全な収蔵庫ができるようにしました。収蔵庫に使用できる杉材はただでさえ多くは取れませんので、さらに有機酸が少ないものとなると、選定が一層厳しくなりました。収蔵庫の壁のPC板(プレキャストコンクリート板)も10ヶ月の枯らし期間を取ることを計算して施工するなど、工程の組み方には非常に注意しました。また、コンクリートの中に脱気パイプを入れるなど、アンモニアの早期発散のための工夫もしています。
 ちなみに、大分県立美術館の収蔵庫の壁には、木だけでなく調湿ボードを多く用いています。これは「木を貼る収蔵庫が良い」という昔ながらの考え方に縛られない、より効率的に良質な保存環境を作る収蔵庫への挑戦でもあります。
 また、収蔵庫のほかにも建物全体の木の選定も担当していましたので、そのために色々なところへ行きました。日田と佐伯の県産材を使用していますので、その2か所には当然通いましたし、加工をしている宮崎県にも視察に行きました。また、ハイブリッド素材に使用した木の産地である長野県にも行きました。
 

―クローズドな部分についてもやはり工程管理上の注意が必要だったのですね。

 
 そうですね。今回の工事においては、建物の特殊性や工期の理由で、オープンな部分・クローズドな部分ともに非常に高度な安全管理と工程管理が求められました。特に注意が必要と思われる部分についてはなるべく早くから動き出し、施工開始時にはすでに不安要素ができるだけ解決されている状態にできるよう気を付けました。
 

―そのようなゼネコンの方にも支えられながら出来上がったということで、大分県立美術館の開館が一層楽しみになりました。
本日はありがとうございました。

 
<2014年9月12日取材>
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