つなぐWEBマガジンPASSION+

つなぐWEBマガジンPASSION+

金剛ロゴ金剛ロゴ
 
SHARE   

つなぐWEBマガジンPASSION+

libraryへリンク

利用者やテーマに沿った図書サービス

由利本荘市中央図書館


interview

館内俯瞰
話し手:古川 淳さん(由利本荘市中央図書館 主査) ※所属・役職は取材当時のものです。 

 
ー由利本荘市中央図書館の概要と建設経緯についてお話を伺います。
 
 羽後本荘駅前に新しい図書館がオープンしました。収蔵可能冊数は22万冊、座席数188席で、株式会社新居千秋都市建築設計による建築デザインも斬新な図書館です。
 駅前にあった病院移転後の跡地整備で、市は国土交通省の「まちづくり交付金」を活用し、市内で老朽化・分散していた文化施設をワンストップに集約し、また地域から要望があった衰退しつつある都市機能の活性他も推進するため、人々の賑わいを創出する拠点として、総合的な文化施設が建設されることになりました。具体的には図書館、文化ホール、交流活動施設、教育学習施設、店舗施設(物産館、飲食店)、プラネタリウムのゾーンからなる複合施設です。
 
 
閲覧スペース
 
児童書コーナー

 
ー図書館づくりで考えたこと(配慮したこと、新しく採用したこと)は何だったのでしょうか?
 
 由利本荘市は1市7町が合併し誕生しています。新図書館が中央図書館としてスター卜するに当たり、図書館が地域にどのような形で貢献できるか、役割や機能はどうあるべきかの検討を進めました。
 まずは、各地域にある図書館や公民館図書室への支援です。市町村合併に伴いそれまで各地区毎にまちまちであった業務の整理に着手し、業務の標準化に努めました。各館の成果出較ではなく、全市の図書館活動がいかにしてより良い効果を発揮していくかを念頭に職員間の連携強化を図りました。
 次に図書資料の構成に当たっては、従来の基本的な図書館サービスに加え、ある特定の利用者層やテーマへのサービスを強く意識しました。具体的なキーワードとして①U-20 、②生活支援、③ビジネス支援、④外国語、⑤行政連携を掲げ、コーナー作りや選書の基本としました(表1)。市民や利用者が図書館に対して、より目的をもって利用してもらいたいとの意思表示を強く発信することで、自らのサービスの質を高めながら、利用者への浸透を図っていきたいと思っています。
 続いて、この図書館を地域資源の情報発信拠点として捉えました。単に一般図書資料だけではなく、地域に密着した外部機関や人材との連携により、より多角的な郷土資料を収集、整理し、情報発信に努めていきたいと考えました。
 さらに、学校との連第強化に取り組んでいます。資料提供・レファレンス対応や授業で使用する参考資料の提供はもちろんのこと、学校図書館の整備支援のために中央図書館所属の臨時職員を雇用し、学校図書館へ派遣して日常業務のサポートを行っています。
 
 
表1:ターゲットとテーマを特定したコーナー作り
①U-20 中高生を中心とした10代の趣味趣向に合わせ、入門書的な内容を多く揃える
②生活支援 日常の問題や課題の解決につながるような資料を多く揃える。
③ビジネス支援 ビジネス全般の入門書から、業種別のものまで。
近隣の秋田県立大学・市商工振興課・市産学共同研究センター一市商工と連携。
④多言語  英語・中国語・韓国語の図書を揃える。
⑤行政連携 行政と連携した企画展示を行う。

 
 

地域のコーナー

 
祭りを特集したコーナー

 

 
ー図書館づくりに大変だったことは何でしたか。
 
 設計者とのやり取りが大変でした。図書館サイドでも色々と要望しましたが全てが採用されたわけでもなく、現況の出来上がったものに対して、ゾーニングやコーナー割りと配架を行うことになりました。
 
 

書架

 
 
ー今回のテーマでは、「感動できる利用者サービスの工夫」を挙げています。
 
 館内動線の中央部に、ヤングアダルトを対象にした「U-20」と名づけたコーナーを設けたところ、面白い効果が出ています。当初は中高生を中心とした10代の利用者を想定したのですが、開館後、色々な世代の方々が利用されているのです。例えば、「ネイリストになるには」などの本は将来を夢見て少し背伸びをした小学生が利用しています。各種入門書については、一般書のコーナーに置かれている資料よりも、もっと噛み砕いた内容のものが多いので、20代より上の年代の方々にも多くご利用いただいております。このコーナーによって、年齢に関係なく多くの利用者の方々が本に触れ、本を通じて世代間のつながりが生まれるきっかけとなったことを、職員みんなでうれしく思っております。
 
 
U-20のコーナー

 
 
 最後に、今後の活動について展望を伺います。
 
 現在の課題である資料支援や人的支握のレベル向上を図りながら、中央館として外部に対する拡がりを強めて行きたいと思います。各地区の図書館や図書室を積極的にサポートし、U-20での成功事例を共有しながら、ビジネス支援や他のサービスも外部機関との連携でより質の高いサービスを提供し、新しいサービスの展開を探っていきたいと思います。図書館の取り組みが地域活性化のきっかけやヒントになればと期待しています。
  
 
ガラス越しに見える移動棚

 
移動棚

 

—本日は貴重なお時間を頂き、ありがとうございました。

取材・執筆:木本 拓郎 金剛株式会社 企画チーム
      ※取材当時 

由利本荘市中央図書館
所在地:秋田県由利本荘市東町15
開館時間:平日 9:00~20:00(土日・祝日 9:00~18:00)
休館日:ホームページにてご確認ください
URL:http://www.city.yurihonjo.akita.jp/honjo/tosyo/index.htm
設計監理:株式会社 新居千秋都市建築設計

PASSION34表紙
この記事は「PASSION vol.34」に収録されています
 
 
 

 

関連記事