PASSION VOL.39 November.2017
東日本大震災から6年 ~残し、伝えるプロたちの情熱~
東日本大震災から6年
~残し、伝えるプロたちの情熱~

宮城県図書館
継続する覚悟、寄せられる資料への責任
写真右から
話し手:岩間 美樹 宮城県図書館 資料奉仕部次長(総括担当兼チームリーダー)
太田 朋子 宮城県図書館 資料奉仕部 震災文庫整備チーム 主査
聞き手:宮脇 薫子 金剛株式会社 社長室
宮城県図書館
継続する覚悟、寄せられる資料への責任
写真右から
話し手:岩間 美樹
宮城県図書館 資料奉仕部次長
(総括担当兼チームリーダー)
太田 朋子
宮城県図書館 資料奉仕部
震災文庫整備チーム 主査
聞き手:宮脇 薫子
金剛株式会社 社長室
被災地の県立図書館として震災関連資料の収集・保存・公開を行っている。館内には「東日本大震災文庫」を設け、5,542点もの資料を収集、うち4,586点を排架。チラシなどの1枚もの資料もファイリングし公開している。また、宮城県と県内全自治体が連携・協力し22万点を公開するデジタルアーカイブ「東日本大震災アーカイブ宮城」の事務局として、管理運営を担う。 ※1
震災から6年が経過して
平成24年7月に開設した「東日本大震災文庫」(以下:震災文庫)に新たに集まる資料の点数は月日の経過と共に減少しています。震災当時の様子を物語る日誌やチラシ、それらを元に書かれた書籍は減り、復興に関する資料の占める割合が多くなってきました。そのような中、収集の対象とする資料の範囲は年々ひろげていて、福島第一原子力発電所の事故に関する書籍や他県の震災関連資料も収集しています。宮城県立の図書館だからといって宮城県に関わる資料だけを集めていても、東日本大震災の全貌は見えてこないからです。
県を含む全自治体が連携・協力している「東日本大震災アーカイブ宮城」(以下:震災アーカイブ)については、当館が事務局となって運営しています。これは「収集・保存・公開のプロ」である図書館がアーカイブの構築に力を発揮できる存在だと期待されているからです。しかし、各自治体では震災アーカイブの管理運営に直接携わっているケースは一部に限られていて、担当窓口は生涯学習課・総務課・秘書広報課・企画課・危機管理課・防災課など、それぞれの自治体で異なります。そもそも震災アーカイブの管理運営協議会に入っている館も少なく、各市町村の担当窓口は、それぞれの図書館と連携がされているとは限りません。震災アーカイブの運営について市町村によって現状が異なっているのが6年経った現在の実情です。だから尚更、事務局の宮城県図書館がまとめ役として震災アーカイブの「要」になる必要があると感じています。
当館では、震災文庫と震災アーカイブに携わる専任の職員2名、その他の担当と兼務している職員10名という体制で日々の業務にあたっています。震災から時間が経つにつれて携われる人数は減り、人手が足りているとは言い難い状況です。体系的に「まとめる」というのは労力、場所、人、お金がかかること。規模の小さい市町村立図書館では、多くの場合、震災関連資料を郷土資料のひとつとして収集します。だからこそ、当館のように大規模な館が東日本大震災に特化し、体系的な資料の収集・整理・公開を行わなければいけないのでは?と思っています。利用する側としても、ーか所に集まっている方が利用しやすいでしょうから。
震災アーカイブについては、利用者の方から「震災前の町の様子が知りたい」という問い合わせもあります。確かに、震災前に営まれていた日常に関する記録がないと「被災地が被災地になる前」のイメージが湧かないんですよね。震災関連資料とセットで見ていただくことで、「震災前の日常→地震・津波→被災→現在」といった時間の流れを感じられれば、資料や記録を見たときに、被災地のことを自分事として考えやすいのではないでしょうか。
震災関連資料を収集している宮城県内外の図書館でも、震災関連資料収集活動に携われる職員の人数が減り、一般予算をやりくりしながら継続しているようです。だからこそ、「東日本大震災文庫」と「東日本大震災アーカイブ宮城」は、県立館である宮城県図書館として続けていかなければならないことだと、館として強く認識しています。
原資料とデジタル資料。館内の震災文庫とインターネット上の震災アーカイブ。保存している資料の種類や場所は違っても、大事なものを預かっているという意味では一緒。宮城県図書館を信用してもらって託されている以上は、責任を持ってどちらも運営していかなければなりません。図書館が未来へ残してくれると思うから、寄贈してくださる方がいるのです。託す人は、どこに託すのかは自由。地元の市町村図書館でもいいし、国立の図書館、専門図書館だってあります。そんな多くの図書館の中で、宮城県図書館を選んで託してくださっているのです。ですから、そういう意味でも、残していかなくちゃいけないんです。
宮城県図書館
|PASSION Vol.39|宮城県図書館|:金剛情報誌パッション:KONGO
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