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PASSION VOL.35_October.2013

08 博物館明治村

明治期の貴重かつ豊富な資料と、IPMの日常管理

話し手:中野 裕子(博物館明治村 主任学芸員)博物館明治村
聞き手:木本 拓郎(金剛株式会社 業務本部)


博物館明治村

明治村5丁目

−博物館明治村に関する概要についてお伺いします。
 
 はじめに設立経緯のお話です。1960(昭和35)年、旧制四高(現在の金沢大学)の同窓生だった二人のキーマンにより、博物館明治村(以下、明治村)の壮大な構想が動き出しました。二人とは建築家の谷口吉郎(故人)氏と当時の名古屋鉄道副社長・土川元夫(故人)氏であり、戦後の急速な経済成長の蔭で失われつつある明治時代の建築物のうち、歴史的にも文化芸術的にも価値があるものを末永く保ちたいとの意見で一致し、1965(昭和40)年に博物館として開館したのが「明治村」です。
 1960年代当時は、経済発展・新しい街づくりが最優先された時期でもあり、土地開発の妨げになるなどの理由で明治期の建物が姿を消していきました。ご当地で保存が難しい、つまり建築物の歴史的価値を認めて貰えないものは取り壊しが決定しますが、明治村ではそれらを譲り受けて移築されてきました。それぞれの建物には家具調度などを陳列して公開していますが、その建物に関連した資料も常設展示されています。
 
−明治村の特長について伺います。
 
 名前の通り、明治に纏わるあらゆるものを収集・公開しています。特に、明治期は西洋からの生活や文化に深く影響を受けており、その中でも建物はランドマーク的な存在でした。現在、建物についてだけでも国の重要文化財に10件、愛知県の有形文化財に1件、指定されています。また建物をはじめ、版画や機械、家具などを数多くコレクションし展示しています。展示されている家具の一部には、実際に座ることができます。明治時期の生活や文化に触れられる明治村は、全国各地の方々に観光や修学旅行のルートとしても組み込んでいただき、年間40万人を超える方々にご来村頂いております。
 ちなみに収蔵している資料は多岐にわたっていますが、職員総勢30名の内、学芸職は3名と学芸常勤補助員(アルバイト)5名程、建築職3名で、資料の管理に携わっています。
 
−明治村の学芸という仕事についてお尋ねします。
 
 学芸業務としては、大まかに6つの業務を担っています。
 
1. 常設展示の管理
 まずは、常設展示・建造物の維持管理としてIPMチェックを行っています。明治村は自然が豊かな場所にあるので、たくさんの虫が生息し、樹木も生い茂っています。文化財害虫の他、来村者が不快に感じる害虫などが大量発生しないよう日常的に管理を行っています。ほとんどの建物に空調は設置されていないために、梅雨時や冬期には結露対策も施しています。過去には結露に気づかず、長い期間部屋を締め切ったままにしたために、床が抜けたりしたこともあります。以後、モニタリングし、その結果をマッピングすることによりやっと害虫被害の履歴管理ができるようになりました。展示建造物には貴重な歴史資料の展示もおこなっていますので、データロガーで温湿度を管理しています。建物だけでも64棟あり、意外と大変です。とても全部の建物には配置できませんが(笑)。データ収集の効果としては、㈰データの見える化を図り、展示建造物や展示室の環境改善の予算要求がしやすくなりました。㈪虫の生育時期の把握がしやすくなりました。「もうそろそろ、チェックや換気の間隔をこまめにしなければ」など、早めの対処ができるようになりました。
 
2. 各資料の調査・研究
 明治期の多くの資料について調査研究を行っております。特に、明治村には東宮御所(現 国宝迎賓館赤坂離宮)や明治宮殿などで使用された400点を超える家具をコレクションしており、他の博物館美術館にはない貴重な資料です。現在、目録化を進めています。それらの情報はまだ十分ではなく、新たな発見があった場合は季刊誌「明治村だより」で発信しています。
 
3. 教育普及の推進
 教育普及の一環として、明治村でのワークショップや見学ガイドを行っています。
 
4. 明治村だよりの発行
 明治村だよりは年4回の発行を行い、イベント情報だけではなく、明治村で収蔵している資料・コレクションを紹介しています。
 
5. 明治村茶会の企画運営
 明治村の広大な庭園で年に1度、大きなお茶会を開催しています。流派にとらわれることなく、歴史的建造物の活用の一環です。
 
6. レファレンスの対応
明治に関連した外部からの質問への対応を行っております。特に、マスコミ関係者の方から問い合わせが多く、例えば、クイズ番組や映画・ドラマにおける明治期の時代考察証に関することです。また、明治村では映画やドラマのロケ撮影にも活用されています。
 
 
—建物へ資料も展示されていますが、保存に関する取り組みについてお尋ねします。
 
 展示資料は温湿度や自然光をコントロールできない中で展示されていますので、展示資料の状態の確認や、急激な温湿度変化がないかなどに注意を払うとともに、ガラスが多用されている建物には紫外線カットや防虫に効果があるといわれるフィルムを貼るなどの対応をしています。しかし一番大切なことは、日ごろの目視点検ですね。
 収蔵に関しては、これまでは展示建造物の公開していない部屋を収蔵庫として使用していました。何度も申し上げているように、温湿度管理ができていない部屋です。加えて、資料は受入順に収蔵されていましたので、文書の隣に農具が置いてあったり、宮廷家具の隣に解体材のレンガが置いてあったりという感じでした。現在、やっと資料の材質によって収蔵場所を変えたり、文書箱を使用するというところまできました。
 今回、専用の収蔵庫を整備できたことで、貴重資料をより良い環境で保管することができるようになりました。また、他館との資料貸借もありますので、きちんとした収蔵庫が整備できたことは非常に喜んでおり、資料のコンディションレポートに対処できる受け入れ体制の整備は心強くなりました。
 
−最後に、今後の活動について展望を伺います。
 
 明治村は見学者が実際に触れて、体験することができる、ユニークなミュージアムです。例えば、洋館では椅子に座って、建造物の空間を味わい楽しんでいただくことの大切さも訴求できればと思います。それらを体感したことで、明治村に展示されている建造物や歴史資料と見学者の距離が縮まり身近に感じられる、そんな博物館を目指したいと思います。明治時代の生活や文化を後世に伝えるため保存に留意するとともに、「明治村」という文化資源を再認識していただけるよう訴求していきたいと思います。
 
−本日は貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。
 

PHOTO GALLERY

〈常設展示〉旧東宮御所紅の間

ワークショップ

ワークショップ

企画展示の様子

博物館明治村

所在地/愛知県犬山市内山1
開村時間/9:30〜17:00(11月〜2月は変更あり、ウェブサイトをご確認ください)
休村日/12月31日、12月〜2月中の毎週月曜日(年始、祝日除く)
観覧料/有料(ウェブサイトをご確認ください)
URL/ http://www.meijimura.com

 
 

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