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PASSION VOL.33 November.2011
震災への取り組み

12 九州国立博物館

市民ボランティアの活動の場


寄 稿:内田 祥乃(九州国立博物館ボランティア)

九州国立博物館

九州国立博物館ボランティア
 
 九州国立博物館(以下、九博)ボランティアは、九博の開館に先立ち2005年5月に発足いたしました。展示解説・教育普及・館内案内(日本語・韓国語・中国語・英語・手話)・資料整理・サポート・イベント・学生・環境の8部会12グループがあります。どの部会も、九博の「市民と共に、自然と共に」ある取り組みを市民の立場で体感し、地域や家庭にひろげていくことも活動の一つです。原則として3年の任期制で、2011年度より第3期に引き継がれています。
 
 そのなかで「ミュージアムIPMの考え方で文化財を守る」お手伝いをさせていただいているのが環境部会38名(10月現在)です。ボランティアを始めるまで、どのような活動をする部会なのか全く知りませんでした。展示解説や館内案内のようにお客様と直接お話しするのはちょっと苦手、裏方で役に立てることはないか、そう考えて、何もわからないままこの部会を選んだ方も少なからいます。
 
 
活動を始める前に
 
 ボランティアが活動するための研修・実習には、じっくりと時間がかけられてぃます。九博の理念やIPMの歴史これまでの取り組み等、ミュージアムIPMの基本・考え方をはじめにしっかりと学びます。ミュージアムIPMを効果的に採り入れるため、収蔵庫に使う木材を一本一本目視点検なされたことや建設時の清浄度維持のためのさまざまなご配慮等、初めは「本当にそこまでしたの?」と思えたことも、繰り返し行われた研修の中で、開館に至るまでの多くの方々のご尽力を実感してゆきました。九博のガラス壁面に映る森、空の色。それは、そのまま九博を包む環境の証。これを守ってこられた方々の暮らし・思いをも共に次へと紡いでゆきたい、守るべきものは、博物館の内のものだけではなく、博物館を包むこの環境共である。九博が目指したその思いに、どれだけの方々がご尽力なされたかを教えていただくにつれ、そこに市民ボランティアが参画できる喜びと責任を感じました。
 
 
活動の基本
 
 環境ボランティアの活動の基本は、「観察」「記録」、そしてその「継続」です。基本活動の柱となる日常の観察を、九博では「IPMウォッチング」と呼んでいます。館内の情報を集めるには、たくさんの人の目が必要です。お客様のいらっしやるエリアなら、市民ボランティアも参加できます。九博学芸部博物館科学課をはじめ館職員の皆様のご指導を受けて、各々感性を活かし楽しみながら観察し、確実に報告する、それが環境ボランティアの活動の基本です。生物トラップの交換もさせていただいていますが、虫を捕まえるのが目的なのではなく、「インジケータ」の呼称の通り、館内の状態を把握するためのものです。自記温湿度計の記録紙の交換も同じです。メンテナンスもただきれいにするのが目的なのではなく、「今」の状態を観察し、記録に残すために行います。
 
 
活動の「目的」を忘れないために
 
 ウォツチングをはじめ環境ボランティアの活動は結構地味なものです。特に何も変わりがないのが文化財にとっては一番良いことはわかっていても、手応えがないと寂しくなります。贋れてくるうち、活動自体が目的になって、大事なことを忘れかけてしまうこともあります。
 
 そうした時、繰り返し研修や関連する講義を受けることの大切さを改めて実感いたします。活動を始める前に聴いてもゎからなかったことが、実践することによってわかるようになり、さらにまた研修を受けることでより段階を踏んで理解できるようになってゆきます。 
 2011年は特別展「よみがえる国宝」で、千年以上も人の手で守られてきたものをすぐ目の前で拝見することもできました。守ってこられた方々のお話も直接おうかがいすることができ、技やものを受け継ぐ重みも教えていただきました。何のための活動なのか、守ろうとしているのは何なのか、学びを重ねることは大切です。
 
 九博ではボランティアから地域へ発信する機会もあります。知らせるには自分が理解していないと伝わりません。ポスターや冊子を作製する過程で、改めて活動の意味を自身に問うことができます。
 
 
市民ボランティアのミュージアムIPM
 
 環境ボランティアは、九博で誕生いたしました。2011年で7年目。まだまだ、環境ボランティアといえば「虫退治」、ウォッチングは「虫探し」と思っていらっしやる方も多くおられます。
 ミュージアムIPMは特別なことばかりではありません。一見関係ないと思われることも根底でつながっているものもあります。ミュージアムIPMって何だろうと首を傾げていた私どもも、教えていただくにつれ、それぞれ仕事でやっていたことが名称は違えど基本的に同じものであるとわかってきました。家事や趣味でやっていることの中にもミュージアムIPMにつながるものをみつけて嬉しくなることもあります。江戸時代の地方文書を読んでいますと「IPM(総合的有害生物管理)」という言葉ではもちろんありませんが、関連する多くの記述が出てきます。何度も何度も煌の害や天災に見舞われた先人は、その被害を少しでも予見し軽減するためさまざまな知恵を生み出したことがわかります。日々の暮らしの中で暮らしを守るために生まれ育まれた技が、今のミュージアムIPMにつながる知恵でもあったことを知るたび、これを伝えてゆくことの大切さを改めて思います。
 
 
未来へ紡ぐために
 
 文化財は先人の生きた証。大切に思い、守り継いできた人がいたからこそ今ここにある、と知ることが始まりでした。今日まで紡がれてきた技とこころ、包む環境をも共に次世代につないでゆくために、それぞれの立場の人が各々に合ったやり方で担っていく、それが「ミュージアムIPM」そこに市民ボランティアにもできることもあると教えていただいたのは大きな喜びです。だからこそ、自分たちの活動が文化財の脅威とならないように、専門の皆様のご指導のもとで楽しく息の長い活動を続けてゆきたいと存じています。
 

九州国立博物館市民ボランティア

九博は、この地に暮らす多くの住民の粘り強い誘致を受けて誕生した。「市民と共に」をコンセプトにする九博が、来館者サービスの充実とともに、生涯学習の推進及び市民による博物館活動の支援を目的に導入。任期は3年。終了後1年毎の登録更新で最長3年まで活動の継続が可能。発足時の1期(293名)に続き、2008年2期(388名:うち登録更新151名)、2011年3期(393名:うち登録更新133名)に引き継ぐ。新規募集も任期の切れる3年毎。


九州国立博物館
所在地:福岡県太宰府市石坂4-7-2
TEL:092-918-2807(代)
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
観覧料:一般420円 大学生130円(特別展は別料金)
休館日:月曜日(月曜日が祝日・振替休日の場合は翌日)
URL:http://www.kyuhaku.jp


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