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PASSION VOL.33 November.2011
震災への取り組み

07 東京工業大学附属図書館

東京工業大学の新図書館


寄 稿:小川 聡(東京工業大学附属図書館 課長)

東京工業大学附属図書館

 
新図書館計画から開館まで
 
 東京工業大学では、図書館機能の高度化を目的として、平成20年7月に図書館の新築が正式に決定した。調査結果で旧図書館の耐震性能が十分に確保できないとの理由もあった。平成21年8月に着工、平成23年2月末に竣工した。
 そして平成23年7月4日正午に全面開館を迎えた。これに先立ち10時からオープニングセレモニーも執り行われた。5月16日から旧図書館を閉館しての移転期間中には、試験を控えた学生の学習を支援するため、新図書館の学習棟(2階と3階)のみ先行して学生に開放していた。なお、3月の東日本大震災で、老朽化した旧図書館で図書が大量に落下したことや、安全確保と省電力対策を重視して、当初予定の9月26日から開館を早めた経緯がある。
 設計は、本学大学院理工学研究科建築学専攻の安田教授によるもので、3本のV字柱が地面から宙に浮き上がった印象の建築構造など、斬新かつ機能的でキャンパスの雰囲気に調和した地上3階、地下2階の建物として仕上がっている。
 
 
新図書館の将来構想について
 
 新図書館が達成すべき将来構想として2項目を最重点に掲げている。
①先導的電子図書館の構築
②便利で決適な学習・調査空間とレファレンス機能の充実
 
 上記の実現、とりわけ②のための3項目として、
1.学習図書館機能
 (快適な学習・調査空間の提供、情報ナビゲータである図書館員による学習支援)
2.保存図書館機能
 (学術資料の保存・検索の実現と電動集密書架による収容力アップ)
3.リフレッシュ機能
 (気分転換の場、意見交換やディスカッションの場)
 の充実を挙げ、人と情報が出会う図書館を掲げている。
 
 そして、建築計画に際して、この将来構想や立地を考慮した以下の4つの設計上のコンセプトが盛り込まれた。
1.キャンパス内の動線の結節点となる 建築(プロムナードに沿う軸線と、正門から線路に平行な軸線の交差点への配置)
2.地下図書館エリア(気温や湿度変化が少なく図書資料の保存に優れ、静寂で落ち着いた閲覧スペース)と、ガラスでできた地上の学習エリア(透明感溢れるガラス作りで、軽快で開放的な学習スペース)とのコントラスト
3.緑の丘に覆われた地下図書館(ソメイヨシノや大岡山周辺の植生を豊富に取り入れた「緑の丘」)
4.自然光や自然通風を考慮した空間の創出(ワンルーム構成で快適なリビング空間)
 
 
図書館各階の特徴と機能について
 各フロアは主に、以下に挙げた特徴や機能を有する。
 
[1]2階・3階(学習エリア)
①窓に面して配した大きな机とキャンパスの景色を堪能できる透明感のある学習スペース
②ガラス面のパターンが直射日光を和らげる省エネ効果
③最大30kWの出力が可能な側面及び屋上面の太陽光発電パネル
④教育用電子計諒機システム端末の設置(2階)
⑤グループ研究室の配置(3階)
 
[2]地下1階(図書館エリア) 
学習棟のピロティの下が地下図書館へのメインエントランスとなり、入口は地下1階となっている。
①人口そば壁面の返却口
②東京工業大学基金の寄附者名が刻印された銘板
③コンパクトで収容力のある新聞コーナー
④カウンター、地下図書館エリア、中央閲覧スペースを広角に見通せるエントランスロビー
⑤図書・閲覧スペースへのアクセスが容易な受付カウンター、蔵書検索端末など
⑥トップライトの下に設置された印象的な三角形のテーブル
⑦一般図書や参考図書を見通せる、開放的な4段の低書架。
 
[3]地下2階(図書館エリア)
①天井の高い開放的な図書・閲覧スペース。大量の製本雑誌、会議録等の収蔵力を確保した8段の開架高書架
②和一洋の新着雑誌計約2,000誌を配架した、見通しのよい、開放的な4段の低書架
③高い収容効率と安全を考慮した電動集密書架
④教員用及び、栄誉教授・名誉教授を対象に設置したブース
⑤全面ガラスのリフレッシュルーム(気分転換・くつろぎの場。会話やディスカッションの可能な場)
⑥講習会等を開催できるレクチャースペース(使用時には防音カーテンで仕切り、未使用時は一般閲覧席として提供)。
 
[4]地上1階
①外部とロビースペース及び地上2階と地下1階との重要なアクセスポイント
②事務室への接続地点
 
 
その他の建物の特徴及び利用概要について
 
[1]建物の特徴
建築面積が1,933.63㎡、延床面積が8,587.88㎡、敷地面積が137,060.64㎡。設計期間は、平成20年7月~平成21年3月。工事期間は、平成21年4月~本年2月。車椅子対応の乗用エレベ一ター(15人乗り、45m/分) (学習スペース)設置。
 
[2]利用概要
 蔵書数は約65万冊(収容総棚数:28,000棚)。座席数は721席(2階・3階:195席、地下図書館:526席)。貸出冊数と期間は、学部生か5冊2週間、大学院生と教職員が10冊4週間。開館時間は、授業期が8:45~21:00(土日祝日11:00~17:00)、試験期が8:45~23:00(土日祝日9:00~20:00)、休業期が8:45~17:00 (土11:00~17:OQ日祝休館)、となっている。
 
[3]施設・設備
①電動集密書庫
 導入にあたっては、電動書車内の資料も全て開架とし、利用者が直接入って利用することを想定したため、特に安全性への配慮を重視した。人感センサ、免震装置、非常停止ボタン等、多重の備えで安令件を高めている。また、検索システムを有し、検索結果から利用者に配架場所を案内することが可能である。
②省エネルギーへの配慮
 学習棟の屋上には太陽光発電パネルが敷き詰められている。また、その壁面に1m間隔に取り付けられた日よけルーバーとともに、その南面に太陽光発電パネルが組み込まれた。ルーバーは将来、より発電効率のよいパネルが開発された際に容易に交換できるよう、特別に設計されたアルミ押し型材を用いた。これらのパネルによる最大発電量は30kWで、学習棟の消費電力の一部をまかない、1階ロビーには、発電量を表示するパネルが設置されている。また、学習棟屋上に降った雨水を集めて、丘の植栽への自動潅水やトイレの洗浄水の一部として活用している。
③東工大キャンパス無線LANの提供(学習スペースと地下1、2階)
 
 
最後に
 
 新図書館機能が、教職員の研究や学生の学習支援に貢献し、「学び」「知の集積」そして「大学の顔」の役割を十分に果たせるよう、図書館職員一同が、施設・設備やサービスの向上に努めている。新しい取り組みとして、平成22年度から「図書館サポーター」という活動を開始している。目的は以下の3項目である。
1.学生を雇用し、図書館業務に学生の意見や発想を取り入れることでサービスの充実を図る。
2.学生が大学(図書館)についての理解を深める一助となる。
3.図書館サポーター間で情報交換等の交流の場を持つことにより学生生活における豊かな交友関係の形成に資する。
 
 幸いにも多数の学生から応募があり、職員の意識向上・業務マニュアルの見直し等にも効果を上げている。今後は、学生サポーターによる学生相互の学習支援等も検討していきたいと考えている。
 近年、理工系大学においては特に、学術資料の電子化が進み、資料の収集・提供はインターネットを通して行われる傾向にある。そのような時代であるからこそ、「場」としての図書館の意義が問われ、その存在感を示す必要があるだろう。キャンパス内の恵まれた立地を生かし、学生・教員が自ら集うような魅力ある図書館作りを目指し、将来構想で掲げた「人と情報が出会う図書館」を実現していきたいと考えている。
 


東京工業大学附属図書館
所在地:東京都目黒区大岡山2-12-1-L-1
TEL:03-5734-3221
開館時間: 8:45~21:00
休館日:図書館カレンダーを確認ください
URL: http://www.libra.titech.ac.jp/


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