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PASSION VOL.32 November.2010
魅せる展示の考え方

12 壱岐市立一支国博物館/長崎県埋蔵文化財センター 

壱岐発“魅せる収蔵庫”を実現する


寄 稿:松見 裕二(壱岐市立一支国博物館 学芸員)

壱岐市立一支国博物館




はじめに
 一般的に収職庫というと暗い倉庫のようなスペースに所蔵する資料を保管するというイメージがあるだろう。近年、その収蔵庫を見せるという試みが全国各地の施設に広がり始めた。来館者に公開するといってもバックヤードツアーなどで通常立ち入ることができない収蔵庫の中を見せるというのが一般的な公開手段だった。この手法では来館者だれもがいつでもという希望に答えることができない。この課題を解決するため、収蔵庫の一部に観察窓を設けて外から収蔵庫の中を見るという「オープン収蔵庫」を採用する施設が増加している。


オープン収蔵庫の実現に向けて
 まずは収蔵庫本体の仕様について検討を重ねた。本来の収蔵庫の機能を満たした上で見せる部分を決定した。しかも収蔵庫の中を見せるという手段を“観察窓”ではなく“観察壁”という発想を提案したのは当博物館を設計した故黒川紀章氏だった。公開する範囲が高さ6メートル、長さ18メートルという観察壁というに相応しい仕様となった。ここで検討を重ねたのが安全性と防災面についてだった。地震など不測の事態に加え、防災面からフレームを入れ強化した。入れるフレームの間隔や高さなどは耐震強度など緻密に計算された設定であることはもちろん来館者のビューポイントを想定したものである。

 躯体が決定したところで中に設置する収蔵棚について検討をはじめた。観察壁から見える部分と見えない部分の2つのゾーンに大きく区分した。見えるゾーンは収蔵庫の奥行きと収蔵庫スケールを見せるという点を重視し高さ5メートルの1層式の収蔵棚を採用した。来館者から見えないゾーンは使い勝手を優先し2.5メートルの2層式とした。このように目的に応じて棚の仕様を変えた。棚の仕様を変えることで収蔵する資料も展示資料や展示候補資料など出し入れが想定される収蔵品を2層式の棚に、資料の出し入れが少ない収蔵品を1層式の棚で管理するように設定した。光や温湿度の変化を嫌う木製品や金属製品は環境の影響を受けにくい収蔵室を別に設口集約した。重要な資料はこの収蔵庫ではなく温湿度管理が可能な特別収蔵庫に収蔵するという方針のもと収蔵計画を作成した。実現に向けて収蔵棚に合わせて収蔵資料を再整理する作業を行った。


“見せる収職庫”から“魅せる収蔵庫”へ
 収蔵棚の仕様が決定したところで次に取り組んだのが収蔵庫を“魅せる”つまり収蔵展示という取組みだった。ただ収蔵しているところを見せるというだけでなく、魅せるというプラスα的要素が必要となった。ここで絶対に見ることができない角度からの観察を実現するために棚板を透明化する方法を検討した。棚板の透明化はこれまでにない取組みであり、先進事例がないことからこの実現化には試験を繰り返し、研究に研究を重ねた。まずは素材の検討だったが強度面からみるとガラス板を採用する方がメリットとしてあるが、地震や落下などによる破損の可能性を考えると実用化には適さないという結論に至った。アクリル板の採用を検討したが課題となったのが強度の問題だった。強度を増すため厚さの検討を重ねたが、厚さを増せば増すほど重量も比例して重くなっていった。これを解決するため補強フレームを入れることも想定したが棚板を透明化する目的を考えるとフレームをつけずに強度を保つ方法を再検討した。検討に検討を重ね折り返しを設けてアクリル板を固定する方法を開発した。強度実験を重ね、フレームを用いない透明の棚板の実用化が実現した。このアクリル棚板の完成が“魅せる収蔵庫”実現への第1歩となった。


魅せる収蔵庫を演出する
 アクリル棚板の完成に合わせて収蔵棚の側面を活用した演出展示を検討した。ライティングにもこだわり、調光機能をつけ設置場所を調整した。収蔵庫全体を見せる演出時には全体を照射する照明パターン、奥行きを見せる演出時に奥にいくにつれて照度を落としていく調光照明パターンなど数種類の照明パターンを設定した。蛍光灯とスポットライトを併用することで様々な照明演出を作り出している。


魅せる収蔵庫を活用する
 収蔵棚5列にバナーを取り付ける付属品を設置し、5つのテーマをシンボル的に掲げる。そのテーマに沿った資料を収蔵庫から選定し、テーマ別に展示する。側面に演示具を使って展示するもしくは演示棚に展示する方法で見せる。必要に応じて解説パネルやキャプションなども設置し、各テーマに合わせて年に3回収蔵展示の入れ替えを行うなどほとんど企画展示室と同じ考え方で運営し、展示スペースとしての役割も果たすこととなり、まさに“魅せる収蔵庫”が誕生した。

さいごに
アクリルの棚板は通常の棚板と比ベコス卜高になるが、演出効果や来館者の満足度などをみると費用以上の効果があったといえる。博物館のエントランスを抜けオープン収蔵庫に向かうとそのスケールの大きさに一度脚を止めて見入ってしまう魅力が“魅せる収蔵庫”には秘められている。





壱岐市立一支国博物館
所在地:長崎県壱岐市芦辺町深江鶴亀触515-1
TEL:0920-45-2731
開館時間:AM8:45~PM5:30
観覧料:常設展示室 一般400円 高校生300円 小中学生200円 
    壱岐市民一般300円 小中高生 無料
休館日:月曜日(ただし月曜日が祝日の場合は開館)
URL:http://www.iki-haku.jp/


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写真奥:オープン収蔵庫
手前:キッズこうがく研究所


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アクリル棚板


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エントランスホール


壱岐市立一支国博物館

外観