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PASSION VOL.30_September.2006

08 調湿建材について


太平洋マテリアル株式会社
瀬戸口 健
Setoguchi Takeshi

 近年の文化施設(収蔵部分)における必要性の高い建材のひとつに調湿建材が挙げられます。
 調湿建材の主な役割は、空調設備の補助的調湿は当然ながら、もうひとつは内壁構成です。
 従来は全ての内装材料を天然木材主体で構成していましたが、最近は仕様・品質管理によるコスト増加に伴い、工業製品(調湿ケイ酸カルシウム板等)と木材の併用が増加しています。そこで九州国立博物館様にご採用戴いた無機質系調湿材(オーエスライト)を内壁構成の観点から、今回は長期安定性と室内空気汚染について考察しました。
 
1,長期安定性(経年変化)
 
 建築内装材に使用される繊維強化ケイ酸カルシウム板は、オートクレープ養生により生成したケイ酸カルシウム水和物を主成分としています。その組成によりトバモライト系とゾノトライト系に大別されます。オーエスライトはトバモライト系ケイ酸カルシウム板に属します。
 ケイ酸カルシウム板は無機質材料であり、木材と比較した場合、「不燃性である」「寸法安定性が高い」「シロアリ等の害虫を寄せ付けない」といった特徴があります。
 長期の使用においては。主要構成物がケイ酸カルシウム水和物であるため、空気中の炭酸ガスによる炭酸化の影響が考えられます。文献等によるとケイ酸カルシウム板を強制的に炭酸化させた場合、最終的にはケイ酸カルシウム水和物が非結晶のシリカと炭酸カルシウム(カルサイト及びパテライト)に分解するとされています。
 一般に炭酸化が進むと材料の比重が大きくなり、若干の体積収縮と強度低下が起きるとされていますが、もともと強度の高いトバモライト系の材料では、ゾノトライト系の材料よりも影響が少ないと考えられます。(表-1参照)
 また炭酸化が進むことで生成する非結晶のシリカ(いわゆるシリカゲル)は水分を吸着しやすいため、調湿材として使われる場合に吸湿性能が向上する傾向を示すことになります。
 
■かさ比重、曲げ強度及び組成(強制炭酸化による物性変化の実験例)表-1
九州国立博物館

*強制炭酸化の条件:炭酸ガス濃度10% 温度20℃ 相対湿度90%(スレート協会 技術論文 第36集 P,35より)
 
■オーエスライト物性
九州国立博物館

 
 炭酸化は高温・多湿の環境下で炭酸ガス濃度が高いほど早く進行します。しかしながら、内装材としての使用環境はこれらの項目には当てはまらず、また使用する材料も十分な厚さを有することから、オーエスライトは通常の使用において内部まで完全に炭酸化が進むことは考え難いものといえます。
 以上より、炭酸化による長期安定性への影響は材料の信頼性を損なうまでの強度低下の危険性は無く、内装材として使用される限りオーエスライトは十分な耐久性を持つ安定した材料といえます。
 
2,室内空気汚染について
 
 オーエスライトが内装材に素地仕上げまたは杉板目透かし貼り下地等に採用されるケースを想定し、以下の試験を実施しました。
 但し文化財への影響についての相関性は別として厚生労働省の室内濃度指針値を適用し
ています。
 

 
 
九州国立博物館

 
【試験方法】
 試験は、JIS A 1 901:2003 [小形チャンパー法―建築材料の揮発性有機化合物(VOC)、ホルムアルデヒド他カルボニル化合物放散測定方法]に従い、小形チャンパーADPAC-SYSTEM(20リットル)を使用して行なった。
 
【捕集及び分析条件】
 20リットル小形チャンパーは湿度28±1℃の恒温槽内に設置し、空気清浄装置を通過した清浄空気を相対湿度50±5%に調湿した後に一定の換気量にて換気を行なった。
 分析試料の捕集は、チャンパー内空気を捕集管に通気させて行なった。捕集時期は試験体をチャンパー内に設置してから、24時間換気後と試験体を設置する前の計2回とした。ADPAC-SYSTEMの概要を図-1に、運転条件を表-2に、捕集条件を表-3に各々示す。
 ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドの分析には高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用い、VOC7物質及びTVOCの分析には加熱脱着装置、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いた。
 ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドの分析条件を表-4に、VOC7物質及びTVOCの分析条件を表-5、表-6に各々示す。
 
表-2 チャンパー運転条件
九州国立博物館

 
表-3 捕獲条件

 
表-4 ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド分析条件(HPLC)

 
表-5 VOC分析条件(加熱脱着装置)

注)加熱脱着装置にはPerkinElmerATD4000を使用した。
 
表-6 VOC分析条件(GC/MS)

 
 
■試験結果

 
■放散速度の算出

 

放散速度は次式を用いて算出した。
EF=n*Ct/L ここにEF;放散速度(μg/㎡h)
 n:換気回数(回/h)
 L:試料負荷率(㎡/㎥)
Ct:経過時間におけるチャンパー内の化学物質濃度(μg/㎡h)

 
 以上の結果より、オーエスライトについてはVOC等の放散は指針値以下を示しましたので、建材としては安心して使用出来るものと考えます。オーエスライトは、パルプ以外を無機質材料のみで合成していることが大きな要因と思われます。
 
 

PHOTO GALLERY

九州国立博物館

電子顕微鏡 トバモライト系 3500倍

九州国立博物館

電子顕微鏡 トバモライト系 10000倍

九州国立博物館

電子顕微鏡 ゾノトラト系 3500倍

九州国立博物館

電子顕微鏡 ゾノトラト系 10000倍

九州国立博物館
九州国立博物館
九州国立博物館
九州国立博物館
九州国立博物館

■JIS A 1 901:2003 [小形チャンパー法―建築材料の揮発性有機化合物(VOC)、ホルムアルデヒド他カルボニル化合物放散測定方法]

 
 

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