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PASSION VOL.30_September.2006

02 九州国立博物館のIPM活動



本田 光子
Honda Mitsuko
(独)九州国立博物館
学芸部博物館科学課 課長
 
九州国立博物館

 
IPMって?
 
 IPM (Integrated Pest Management:総合的有害生物管理)とは、農業での、病害虫や雑草防除のシステムである。農薬は収量や品質の向上、省力化を達成し、世界を飢えから救った。しかし、その恩恵は農薬への耐性や新たな害虫の発生を促し、地球規模での自然環境や人間の健康へも深刻な影響を及ぼした。天敵利用等様々な方法で複合的に管理するIPMは、農薬に頼りすぎた人類の反省から生まれた「生命の共存」を目指す考え方である。
 
IPMと九州国立博物館
 
 今、世界のミュージアムで、IPMが推進されている。文化財の生物被害対策を殺虫殺黴剤だけに頼ることを止め、予防に重点をおき総合的に管理する。建物整備、空調制御、生物生息状況の把握、被害の早期発見早期対処、清掃等の日常管理により実施するものだ。
 九州国立博物館(以下「九博」)のIPMは建設中からスタートした。開館半年を経過した現在まで3年間のIPM活動には2度の大きな取り組みがあった。1番目は、竣工時に予定されていた化学薬剤燻蒸を止めたこと、2番目は市民ボランティアの参加だ。
 
九博IPMの最初の挑戦!
 
 1番目の取り組みは、生物被害が予想される木質系材料の徹底管理と建設中の清浄化維持であった。従来の博物館建築では建物竣工時にはガス燻蒸を行うのが普通である。周辺に対する環境影響や薬剤の残留性も考えれば何としてでも燻蒸を回避したかった。
 詳細は本誌収蔵庫施工への取り組み(P20~)に譲るが、結果は、1年経過の収蔵庫内に虫黴は認められなかったことで、薬剤燻蒸は実施しなかったが問題はなし、と評価した。ミュージアムを使う人と作る人のコラボレーションで乗り切ったといえよう。施工清掃や点検に係るマニュアルは、今後の収蔵庫等の初発薬剤燻蒸可否についての重要な判断基準となるはずだ。
 
九博IPMの終わりのない挑戦?
 
 2番目の取り組みは、IPM体制の根幹である日常管理に市民の環境活動を組み込む計画である。展示空間の温湿度データー収集、生物生息モニタリング、除塵防黴作業及びそれらのマニュアル化など、環境ボランティアによるIPM活動を開始した。一般に「環境ボランティア」とは、地球規模での環境保全を目指す自発的な市民活動を指している。九博の環境ボランティアは、文化財の保存という芸術文化活動をIPMの観点から実施することで「地球規模での環境配慮」活動を行っているのだ。薬剤使用量の低減が達成されれば、活動は「生命の共存」に繋がる、という確信が推進力となっている。ミュージアムで働く人と活かす人のコラボレーションに託された終わりのない挑戦かもしれない。
 
生きている博物館とIPM
 
 二つの事例は、施設設備等の整備調整、防虫防黴・殺虫殺黴技術の充実向上といった他のIPM活動との総合的な取り組みの中でこそ達成し、また継続できる挑戦である。IPMは、地球温暖化物質として全廃された特効薬にかわる単なる「技術」ではない。文化財、人、自然の三者の生命の共存を前提にしたあらゆる方法を、目先にとらわれずに組み合わせる。
 九博の基本テーマは市民や自然と共に常に「生きている博物館」である。今、そもそものIPMは「生命の共存」を目指す考え方なのだということを改めて思い、九博におけるIPM活動を通して自然共生型・市民協同型ミュージアムの実現を目指したい。
 

PHOTO GALLERY

九州国立博物館

ビオトープ

九州国立博物館

IPM点検風景

九州国立博物館

目視での点検

九州国立博物館

収蔵庫の清掃

九州国立博物館

インジケーター作成

九州国立博物館

ボランティア研修

九州国立博物館

野外研修

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