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ワンストップで様々な学習支援を展開する
「滞在型」図書館

立教大学池袋図書館


interview

話し手:小圷 守さん(立教大学図書館利用支援課 課長) ※所属・役職は取材当時のものです。
 
 

 

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—立教大学池袋図書館の概要についてお尋ねします。
 
 立教大学池袋図書館は、池袋キャンパス内に分散していた4つの図書館を1つに統合・整理することを前提に建設され、2012年11月に全面開館しました。旧4館の合計最大収蔵冊数が100万冊であったのに対し、池袋図書館は最大収蔵冊数開架100万冊(固定書架60万冊、電動集密書架40万冊)、閉架100万冊(自動書庫)の計200万冊としました。また、以前の図書館では座席数が約1,100席でしたが、池袋図書館は1,520席(講習会室100席除く)と増席しました。
 
—貴館の特長を教えて下さい。
 
 延床面積が約19,000、最大フロアのB1Fは100m×50mの大空間を持つこと、そして最大収蔵冊数200万冊と単館としては最大級の図書館の1つであることが特長と言えます。また池袋図書館は、4つのコンセプトを掲げています。
 
①『滞在型図書館』
 長時間滞在できる図書館をめざし、平日の開館時間を8:45〜22:30と長く設けました。飲料は蓋付きであれば持ち込み可能にしています。B1Fリフレッシュルームにはパンの自動販売機もあり、3Fのテラスと合わせてこの2か所に限っては弁当などの軽食の持ち込みも許可しています。
 就職活動中の学生は企業から電話がかかってくることが多く、そのたびに慌てて図書館の外へ出て行く姿も見受けられたため、池袋図書館では携帯電話通話可能なエリアを設けました。また、モバイル機器の進化に伴い、これらも学習のための情報収集に必要なツールであると考え、館内でのモバイル機器の充電も許可しています。
 以上のように、学生が長時間滞在しても不便がないよう、できるだけ規制を緩和・撤廃しました。結果として、入館者の15%の滞在時間が3時間を超えるという統計データも取れています。学生にインタビューしてみたところ、「授業以外はここにいる」という声も多くありました。
 
②『グループワークの図書館』 
 利用者の動向を見ると、大学図書館は読書する空間というよりも、資料を用いた学習が行われる空間として使われることが多いと言えます。近年、アクティブラーニング、PBL(Problem Based Learning=課題解決型授業)といった、教員から提示された課題に対して学生が少人数のグループ毎に取り組むという授業が増えているため、図書館も学生の学びのスタイルの変化に対応することが必要となってきています。そのため当館にはグループ学習室を8室設けているほか、インタラクティブな学びの場として「ラーニング・スクウェア」を図書館エントランス奥に設置しました。グループ学習室は予約制で、開館時間の70%ほど稼動しています。「ラーニング・スクウェア」は予約不要で自由に使ってもらえるスペースですが、夜遅くまで多くの学生で賑わっています。グループワークで賑わう場なので、ここでは携帯電話の使用を認めています。
 
③『バリアフリーの図書館』
 主要な動線はすべて自動ドア化・フラット化し、車椅子の利用者が自由に移動できるようにしました。また、多目的トイレや電動昇降机も全フロアに設置しています。
 
④『学修支援の図書館』 
 図書館は学生の情報リテラシーの向上をミッションのひとつとして掲げており、その支援のためのサービスを提供しています。具体的には、図書館職員によるレファレンス、大学院生によるライティングヘルプである「ラーニングアドバイザー制度」、そして学部学生による「コンピュータヘルプ」の3つを柱としたものです。さらにICT環境の整備という意味で、図書館には600台のパソコンを用意しており、そのうち300台は「ラーニング・スクウェア」2階のPC貸し出しカウンターでノート型PCを貸し出しています。これらのサービスの窓口がすべて2階に集中しているため、学生はワンストップでサービスを受けることが可能です。
 また、学部授業の1コマを図書館職員が担当し、データベースの使い方の講習会も行っています。昨年度の開講回数は年間100回、延べ3,000人ほどの学生が受講しました。なお、館内は無線LANが使用できる環境です。また、携帯電波の入りにくい地下階には、携帯電話各社に依頼し、3G回線を利用できるよう整備を進めています。
 
—図書館建設に至る経緯について教えて下さい。
 
 冒頭で述べましたが、以前は池袋キャンパス内に図書館本館と学問分野別の研究図書館3館の計4つの図書館がありました。2004年に図書館が実施したアンケート調査で、学生はそのうち少なくとも2つの図書館を併用しているという結果が出ました。さらに「開架書架を増やしてほしい」「関連する図書資料が分散していて不便」といった声も多くありました。
 その後の2006年、新図書館の整備計画が打ち出され、それまでキャンパス内に分散していた図書を統合・整理する方針が示されました。また、図書館は主要な教室棟と隣接した立地とし、図書館棟の上層フロアも研究室で構成するなど、図書館への学習・研究上の導線の向上も意識されました。
 そして2008年10月から建設計画がスタートし、設計選定に3ヶ月、基本設計に11ヶ月、実施設計に6ヶ月、施工会社選定に4ヶ月、工事期間に23ヶ月をかけて、2012年11月の全面開館に至りました。その間の2008年11月から2012年7月にかけて、新図書館の検討委員会として「中央図書館分科会」が計141回開催されました。これは図書館・施設課・企画課の職員からなる委員会で、新図書館建設に関するすべてのことをこの会で決定していました。この分科会では新図書館の機能上のレイアウトから、書架に用いる化粧ボルトひとつに至るまですべてのことに図書館職員が関わることができました。
 開館してから1年を迎えますが、これまで図書館の設備に関する大きな不具合は見当たりません。分科会において施設課を中心として、時には設計会社、工事業者と綿密に打ち合わせができたため、各社の担当者の方々も私たちの意を汲んで下さり、かつ非常に真剣に取り組んで下さったので、その過程があっての成果と思います。
 
—新しい図書館づくりにおいて考えたことや配慮したことはありますか。
 
 実は、新しい図書館の利用者サービスは以前のものと基本的には変わっていません。新しい図書館づくりにおいては、それらのサービスを一元的に利用しやすい“場”として整えることを考慮したと言えます。その結果、前述のグループワークのエリアの創設や600台に及ぶPCの整備にも繋がっていったのだと考えています。
 
—開館してみて、何か気づきはありましたか。
 
 2013年4月〜6月の入館者は、池袋キャンパスに4館あった前年と比べ約1.8倍になりました。平日は1日6,000人〜7,000人、試験期間は1日10,000人以上の利用があります。
 池袋図書館では入館・退館ともに利用証による認証を行う形態としたので、入館者の利用状況が明確にわかるようになりました。入館者の滞在時間は3時間未満滞在者が85%ですが、3時間以上の滞在者が15%という数字も出ています。前年までの滞在時間に関するデータは取れないので正確な比較はできませんが、職員から見た実感として、新館における学生の滞在時間は以前より長くなっているように思います。
 
—それでは最後に、図書館としての今後の展望や課題について伺います。
 
 これからは更に深く図書館を利用してもらい、学習支援に関わるサービスをフルに活用してもらえるようにしていきたいですね。そのためには、学部の授業などを含めた教育と図書館の連携が更に必要になるのではないかと考えています。
 
—本日はありがとうございました。

取材・執筆:木本 拓郎 金剛株式会社 業務本部
      原田 亜美 金剛株式会社 社長室

      ※取材当時 

PHOTO GALLERY

ブラウンの電動移動棚
ラーニング・スクウェア

ラーニング・スクウェア

ラーニング・スクウェア

ラーニング・スクウェア

図書館書架
図書館書架
並んだ閲覧机
書架と閲覧机
スチール書架
話し手の小圷さん

小圷さん

立教大学池袋図書館
所在地:東京都豊島区西池袋3丁目34-1
開館時間:月〜金曜 8:45〜22:30
     土曜 8:45〜20:00
     日曜・祝日 10:00〜17:00
URL:http://www.rikkyo.ac.jp/research/library/central/
 

立教大学池袋図書館
PASSION37表紙
この記事は「PASSION vol.35」に収録されています
 
 
 

 

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