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PASSION VOL.34  November.2012

感動できる利用者サービスの工夫


02 宮城県図書館

東日本大震災と宮城県図書館の取組み


寄稿:熊谷 慎一郎(宮城県図書館)


宮城県図書館

 
 改めて言うまでもなく、日本は地震大国です。
 
 日本のどの地域でも、大なり小なり地震災害に見舞われています。その意味で地震災害は他人事ではありません。宮城県を襲った地震の主なものをあげてみると、戦後だけで、宮城県北部地震(1962年4月30日)、1978年宮城県沖地震(1978年6月12日)、三陸南地震(2003年5月26日) .宮城県北部連続地震(2003年7月26日)、8 ・16宮城地震(2005年8月16日)、岩手・宮城内陸地震(2008年6月14日)などがあります。東日本大震災発生から1 年半あまり経過した現在も復興へ向けた取組みが各所で行われています。
 
 東日本大震災による宮城県内の市町村図書館の被害の概要は、以下の2点にまとめられます。
 
●地震による被害により、震災以前の図書館サービス再開が困難になった図書館が多い。
津波による被災地域では、図書館が高台にあり浸水を免れたところがある一方、 浸水域にあった館は被害甚大である。
 
 宮城県内の市町村図書館は、すべての館が震災後に一定期間の休館を余儀なくされました。資料の落下や施設の破損などはどの館にも共通しています。宮城県図書館も例外ではなく、施設の被害や資料の落下があり、再開したのは5月13日のことでした。多くの資料を棚に戻しながら、一方で、自館のことだけではなく、県内の市町村図書館の復旧・復興を支援する取組みを行っています。
 
 図書館をめぐる支援の取組みには、震災直後から質料レスキューや代替施設の提供や図書館の再建のための運営企画支援といった被災した図書館への支援のほかにも、移動図書館車両の提供や仮設住宅団地などへ配本するための資料提供といった被災地の図書館が活動する際の支援が見られました。
 
 宮城県図書館は県立の図書館です。宮城県内の市町村図書館のための図書館という一面を持ちます。宮城県図書館が意識したのはこの点でした。宮城県図書館のサービスは市町村図書館を通じ、間接的に住民の皆様に提供されます。市町村の図書館が復旧・復興を果たし、住民サービスが提供されることが重要と考え、例えば、津波によって図書館が全壊してしまった南三陸町や女川町の再建にあたっては何よりも図書館の企画運営を支援することにしたのです。震災から1年半以上経過した今でもこの方針は変わっていません。
 
 直接的に市町村図書館を支援する以にも、宮城県図書館は、県内の市町村図書館等に対して情報を集約して提供したり、連絡会議を主宰したり、あるいは、研修会を開催したりといったことも行っています。震災直後から県内の被災状況を集約してWebを通して発信しました。市町村図書館向けには、各館が相互貸借資料などに聞する物流の復旧具合を提供できる簡易データペースを作成しました。研修会では、地震の揺れに伴う資料の落下によって破損した資料は相当量に上っていると見込まれたので、国立国会図書館資料保存課から職員を講師として招き、資料の補修を取り上げました。これらは特定の市町村図書館に対しての直接的な支援というよりも、間接的な県内の市町村の図書館全体への支援といえます。
 
 市町村図書館への支援以外にも宮城県図書館が取り組んでいることがあります。それは、震災の記録を収集し、整理して提供することです。宮城県図書館に、震災に関連する資料を集中的に集めた「東日本大震災文庫」を設置しました。震災に関する資料は多く発行されています。書店で買えるものもあれば、買えないものもあり。書店で買えないものは発行者へ連絡して取りに行くこともあります。今を生きている私たちだけではなく、百年後を生きている人々にもこれらの資料を届けなくてはなりません。
 
 集めた資料はこれまでに3回ほど開催した特別展にも活用されています。初回は2012年2月から5月まで「絆の証」 と題し、店舗再開のお知らせや各地で発行されたかわら版などの資料から震災時の被災地の状況や復旧の過程を辿りました。2回目は多くの漫画家から被災者を励まそうと寄せられたメッセージを展示、3回目は「復興の道標」と題して復興に向けた様々な産業や地域の取組みを紹介しています。あわせて、重点的に取り組んできた市町村図書館等への支援の様子についても紹介しました。
 
 被災した図書館は復興へ向けて着実に歩みを進めています。これからは、被災した図書館の復興はもちろん、図書館が自治体のなかで、どのように位置づけられるのかに注目しています。図書館は人が集う場所であり、コミュニティの核になることができます。一方、図書館の持っているアーカイブ機能は、共同体の記憶装置として働きます。人々が集い、経験を共有する揚として、そして記録された多くの置料が地域に保存されていきます。今回の震災で失われた地域資料はなんとしても再整備を果たしたいところです。最終的には、住民が震災に立ち向かい、人と人とがつながりをもち、多くの団体とも有機的な結びつきを得てコミュニティを形成していくものだと思います。図書館には復興期に発揮できる重要な機能を備えています。県立図書館は市町村図書館の活動を積極的に支えていく必要があるのです。

PHOTO GALLERY

宮城県図書館

特別展「絆の証−東日本大震災文庫展Ⅰ」

宮城県図書館

特別展「復興の道標−東日本大震災文庫展Ⅲ」

宮城県図書館

名取市図書館どんぐり子ども図書室開館の準備作業 2012.06

宮城県図書館

山元町中央公民館図書室リニューアル作業 2012.06

宮城県図書館

南三陸町図書館再開館 2011.10.05

宮城県図書館

所在地:宮城県仙台市泉区紫山1-1-1
開館時間:9:00~19:00
休館日:ホームページにてご確認ください。
URL:http://www.library.pref.miyagi.jp

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