KONGO PASSION vol.35 2014.10
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るなどの交流があります。意味のある本館・分館体制を築けているのではと思います。  また、資料保存のために、月に2回の書庫の清掃にも取り組んでいます。その日出勤している職員全員で、棚の掃除や床のモップ・掃除機掛けを行います。1回の実施時間は2時間を目安にしています。あまり長い時間をかけると1回1回の片付けが大変な労力になり、継続できませんので・・・ ―そういったIPM活動を行うようになったきっかけと、現在の活動についてさらに詳しく聞かせてください。  以前は年に1回全館燻蒸を外部委託で行っており、燻蒸終了後は、予算的に炭素吸着が難しかったため、窓を開けてガスを外に排出していました。この作業手法についてはいくつか疑問がありました。まずは住宅地に立地している施設として燻蒸薬剤の廃棄方法については予算の問題から留保していたこと、次に、せっかく燻蒸をしても強制排気とともに窓や扉を開けている間に外気や粉塵が入ってくることでした。業者の方からはこの方法が当り前といったお話も聞いていましたので、浮かんだ疑問をどう解決してよいか分からない状態が続いていました。さらにいえば、薬剤によって殺虫・殺卵はしていても殺菌はしていませんでしたし、その効果の判定も難しかったので、そこにも疑問は感じていました。  平成14年度の東京文化財研究所の研修でIPMについて知りましたが、最初は「IPMのような活動は人手が多い館でないとできない」との認識でした。その後、平成22年度の九州国立博物館で開催された『ミュージアムIPM支援者育成研修会(基礎編・技術編・応用編)』に参加してみた際に、講師であった本田光子さんがおっしゃった「建物はどんなに良く作っても、どこかに必ず欠点が出てくる」との言葉に、当館の欠点=危機も知ろうとせず放置している自分自身の認識に対して、目から鱗が落ちる思いがしました。国立博物館でさえ欠点が出てくるものなのだから、国立博物館に比べれば小さな当館が人手や予算などが少ないのは当然です。そんな資源不足を理由にして「IPMなんてできない」と切り捨ててしまっていたのは、当館のリスクにしっかり向き合うことからの逃げであり、思考停止だったのだと気づき、意識が変わりました。  研修から帰った時期がちょうど全館燻蒸の実施計画の時期だったので、実施の是非に関して非常に悩みましたが、館内協議で「今年はまず現状調査をやってみて、状態が悪ければ燻蒸を従来通り行おう」という結論に至りました。時間的に追い詰められたことも、最初の一歩を踏み出すきっかけになったことは事実です。  その後、できることから取り組んでいこうと考え、先ほど話した職員全員での掃除や、トラップの設置と月1回の確認を開始しました。掃除については最初に35自分たちなりのIPMへ、はじめの一歩 柳川古文書館

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