KONGO PASSION vol.35 2014.10
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る書庫が1室、アンパンマン以外のやなせ氏の作品や、その他の作家による作品を保管する作品庫が1室あります。作品庫内はすべて空調を温度20℃湿度55%に設定し24時間稼動させており、温度と湿度は空調の温湿度計のほか、自記式温湿度計で計測しています。また、各作品庫の入口には粘着マットを置き、埃の侵入を防ぐようにしています。  3Fには、アンパンマン関係の玩具・グッズ類の保存庫が1室あります。  さて、収蔵庫の施設計画において配慮したことといえば、建物の壁面の装飾とエコロジーの2点が挙げられます。  建物壁面には表側に縦8.6m、横21mのアンパンマン、裏側には縦7.5m、横21mのばいきんまんのモザイクタイル画が施されています。アンパンマンは2.5センチ四方のモザイクタイル273,840枚。ばいきんまんはモザイクタイル235,200枚。やなせ氏が収蔵庫のために描き下ろした原画をもとに、タイルを用いて再現しました。とりわけ赤いタイルについては見本にない色味のものだったため、特別に焼きました。「収蔵庫というのは窓がほどんどなく、愛想のない建物なので、思案した結果、外壁をモザイクタイルのアンパンマン壁画でカバーすることにしました。観光スポットであると同時に周囲の景観にとけ込むようにデザインは派手に、色彩は淡くおさえました。僕はミュージアムの前の広場が子どもたちの楽しい笑い声や歌声であふれるようにといつも夢見ています」とのやなせ氏の想いを受け、壁画にすることとなりました。  また、もう一つの意向として、「環境に配慮したものであること」があり、屋上に太陽光発電を設置することとなりました。ただ、建設地が山に近く日照時間が少なかったため、大規模なものではなく、一般家庭用の太陽光発電を導入しています。ちなみに、収蔵庫内の天井照明は、ほぼ全て消費電力の少ないLEDにしています。 ―実際に開館してみて気づいた点や課題などはありますか。  周辺に自然が多いため、虫の侵入および虫害、トラックヤードや通路の湿度が不安定になるなどの心配があります。一時保管庫というクッションがあるおかげで、まだ作品庫に虫やカビが発生したことはありませんが、現在、建設会社とも打ち合わせをして、よりよい解決方法を模索しているところです。  収蔵庫の環境だけでなく、作品保存についてもよりよい方法を模索中です。現在は作品庫において、同じシリーズの原画ごとにまとめて、箱に入れて保管しています。地震などがおこった際、原画への衝撃を和らげてくれるというメリットがあるため、原画を箱に入れて保管していますが、ダンボール箱から発生する酸によって原画がダメージを受けないかどうか心配です。中性紙保存箱に移して保管するという手段が最良かもしれません。また、当初の予定から変更して移動棚への作品の出し入れを片側のみから行うことにしましたので、出し入れする方向と反対側の支柱の袖孔に、さらしをねじって作ったひもを張ることで落下防止として使用しています。これは他館の方から教えてもらった工夫です。  そのほか、庫内の収蔵棚には間仕切りをつけた仕様のものもありますが、設置時にはどの棚にどの作品を収納するか決定しきれていなかったので、実際に作品を入れてみて、サイズに合わせて間仕切りを外したりしました。さまざまな作品にも臨機応変に対応し、安定した保存環境で管理できるようにしていきたいと思っています。 ―今後の展望を教えて下さい。  作品の保存に関しては、収蔵庫内の保存環境や保管方法についての課題を解決し、よりよい活用を考えていきたいです。湿気や虫害のリスクなどについても、文化財虫菌害防除作業主任者の資格を持つ学芸担当者もおりますので、今後はIPMの勉強などを通じて更に知識を深めることが解決の糸口になると思っています。今のところ害虫の発見やカビの発生などはありませんが、常にベストな環境・方法を考えていきたいと思います。  これからも、やなせたかし氏の多彩な創作世界について更に多くの方へ知っていただくために、より積極的な情報発信を行っていきたいと考えています。   ―本日はありがとうございました。 香美市立やなせたかし記念館 所在地 開館時間 休館日 URL/高知県香美市香北町美良布 1224-2 /9:30~17:00(7月20日~8月30日は9:00~17:00) /毎週火曜日(火曜日が祝日の場合は、その翌日)  ※但し、下記の期日は無休期間です。  3月25日~4月6日、4月29日~5月5日、  7月20日~8月31日、12月24日~1月7日 /http://www.anpanman-museum.net/ 32

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