KONGO PASSION vol.35 2014.10
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08文化施設 -博物館明治村に関する概要についてお伺いします。  はじめに設立経緯のお話です。1960(昭和35)年、旧制四高(現在の金沢大学)の同窓生だった二人のキーマンにより、博物館明治村(以下、明治村)の壮大な構想が動き出しました。二人とは建築家の谷口吉郎(故人)氏と当時の名古屋鉄道副社長・土川元夫(故人)氏であり、戦後の急速な経済成長の蔭で失われつつある明治時代の建築物のうち、歴史的にも文化芸術的にも価値があるものを末永く保ちたいとの意見で一致し、1965(昭和40)年に博物館として開館したのが「明治村」です。  1960年代当時は、経済発展・新しい街づくりが最優先された時期でもあり、土地開発の妨げになるなどの理由で明治期の建物が姿を消していきました。ご当地で保存が難しい、つまり建築物の歴史的価値を認めて貰えないものは取り壊しが決定しますが、明治村ではそれらを譲り受けて移築されてきました。それぞれの建物には家具調度などを陳列して公開していますが、その建物に関連した資料も常設展示されています。 -明治村の特長について伺います。  名前の通り、明治に纏わるあらゆるものを収集・公開しています。特に、明治期は西洋からの生活や文化に深く影響を受けており、その中でも建物はランドマーク的な存在でした。現在、建物についてだけでも国の重要文化財に10件、愛知県の有形文化財に1件、指定されています。また建物をはじめ、版画や機械、家具などを数多くコレクションし展示しています。展示されている家具の一部には、実際に座ることができます。明治時期の生活や文化に触れられる明治村は、全国各地の方々に観光や修学旅行のルートとしても組み込んでいただき、年間40万人を超える方々にご来村頂いております。  ちなみに収蔵している資料は多岐にわたっていますが、職員総勢30名の内、学芸職は3名と学芸常勤補助員(アルバイト)5名程、建築職3名で、資料の管理に携わっています。 -明治村の学芸という仕事についてお尋ねします。  学芸業務としては、大まかに6つの業務を担っています。 1. 常設展示の管理  まずは、常設展示・建造物の維持管理としてIPMチェックを行っています。明治村は自然が豊かな場所にあるので、たくさんの虫が生息し、樹木も生い茂っています。文化財害虫の他、来村者が不快に感じる害虫などが大量発生しないよう日常的に管理を行っています。ほとんどの建物に空調は設置されていないために、梅雨時や冬期には結露対策も施しています。過去には結露に気づかず、長い期間部屋を締め切ったままにしたために、床が抜けたりしたこともあります。以後、モニタリングし、その結果をマッピングすることによりやっと害虫被害の履歴管理ができるようになりました。展示建造物には貴重な歴史資料の展示もおこなっていますので、データロガーで温湿度を管理しています。建物だけでも64棟あり、意外と大変です。とても全部の建物には配置できませんが(笑)。デInterview明治期の 貴重かつ豊富な資料と、 IPMの日常管理 29博物館明治村 聞き手/木本 拓郎(金剛株式会社 業務本部) 話し手 中野 裕子(博物館明治村 主任学芸員) 明治村5丁目

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