KONGO PASSION vol.35 2014.10
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―はじめに、帝京大学メディアライブラリーセンターの概要と特長について伺います。  帝京大学メディアライブラリーセンター(以下、MELIC)は、2006年に新館としてオープン後7年目になります。MELICのある八王子キャンパスは人文・社会学科系を中心に6学部11学科と短大2学科で構成され、約18,000人の学生が在籍しています。蔵書数は68万冊、職員数は13名、2012年度の入館者数は約75万人です。  特長としては、①高い開架率、②ユニークな選書、③「指定図書制度」の採用、の3点があげられます。①開架率は実に98%を占めており、ほとんどすべての図書に学生がアクセスできるオープンな環境となっております。②選書で特長的なのは、選書規程を基に、学術書以外にマンガや文庫・新書、ライトノベルなどの資料を購入している点です。マンガは受賞作品を中心に選書していますが、その他に学生からのリクエストがあったものはほとんど購入しています。③「指定図書制度」は学習支援の観点からの取り組みで、授業で使用する図書や参考図書を教員別に配架しています。本だけではなく視聴覚資料も同様です。  その他、学習支援の新しい形として2012年度から4カ年計画で取り組んでいる「共読ライブラリー」プロジェクトが挙げられます。読書を通じた学習基礎力、自己考察力の向上を図る取組みは学生をはじめ学内外から反響が寄せられています。 ―「共読ライブラリー」プロジェクトの誕生秘話についてお聞かせください。  MELICでは「共読ライブラリー」以前にも学習支援として、先ほどの「指定図書制度」をはじめ「図書館ガイダンスの授業での必修化」や「POP展示を中心とした読書授業連携」、「ビブリオバトル」などを段階的に導入し、学生との接点を作ってきました。その他にも、学生が気軽に立ち寄れるようにパブリックスペースにおいて「緑陰文庫」を創造したり、「イルミネーション」を行ったりした結果、集う場としても定着しています。このように図書館に足を運んでもらうための工夫やアイディアを実践してきましたが、新館効果が弱まってきた2011年度に、貸出数が初めて減少に転じてしまいました。その頃、松岡正剛氏の松丸本舗※1など、本に対する先進的でスタイリッシュな取組みを知り、協力してプロジェクトを実施することになりました。松岡正剛氏が提唱する手法は、本を手に取ってもらう工夫や読書の楽しみなど面白い仕掛けが盛りだくさんで、偶然にもMELICが考えている事と重なったのです。松岡正剛氏が提唱する「本を薦めたり、連ねたり、読み合わせたり、評し合う」という「共読」の考え方をベースに、単に資料を並べるための本棚導入ではなく、本棚を使った「本」と「人」のコミュニケーションによって新たな読書の魅力を創り出し、読書推進へと繋げていく「共読ライブラリー」のコンセプトへ発展させていきました。 2※1 : 松丸本舗…松岡正剛氏と丸善のコラボレーションで出来た書店。テーマに沿って本を並べる等、独自の取り組みを展開した。(2009年10月23日-2012年9月30日) 「緑陰文庫」開催時のBFメディアラウンジ【帝京大学メディアライブラリーセンター提供】 イルミネーションを配したBFメディアラウンジ 【帝京大学メディアライブラリーセンター提供】

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