KONGO PASSION vol.35 2014.10
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 現在では、新規収蔵作品を主とした受け入れ時の生物調査に重点を置いています。平成22年からは、館内スタッフ、ボランティアスタッフ(岐阜県美術館サポーター)全員による生物生息調査「虫パトロール」がはじまりました。虫害および虫の発生を確認した場合は、被害状況、虫の同定、発生原因および場所や期間を調査し、速やかに隔離した上で処置方法を検討していきます。また必要があれば追跡調査を行っています。  その時々の状況に合わせて、フレキシブルに対応するよう心がけており、平成24年1月に竣工した増改築工事による美術館施設の大幅な機能変更にあわせて、当年度はIPMに基づく生物生息調査を、館内全域において定点観測を通年で実施しました。また今度予定している大規模な生物生息調査のためのサンプル調査を実施しています。  調査の結果、文化財加害生物の生息を確認した施設の各箇所については、設置場所および期間に十分な注意を払いながら駆除用誘引剤を用いた初期対処を行い、後日、その効果を確認するなど、状況に合わせた対応策がとれるようになってきました。  また保管環境の変化等、必要に際し行う空気環境調査については、拡散型サンプラーを用いた簡易なパッシブインジケータ(有機酸用・アンモニア用)を経過観察用に用いています。こうしたパッシブ法による調査には、パッシブインジケータ測色計を用いる方法と、カラースケールによる方法がありますが、検査目的に合わせて使い分けています。曝露時間別の数値や、特定物質の換算値を算出することで、濃度変化を確認し、除去のための対策を講ずるのに役立てています。  精密な分析を必要とする場合は、ガスクロマトグラフ質量分析法など、測定の対象となる物質の種類と検査目的に即したアクティブ法による調査を実施しています。異常が認められた場合は、その発生原因を特定し、物理的な除去を第一と考え対応しています。発生源が移動不可能な場合は、換気や吸着シートおよび吸着フィルター(除去フィルター)による、あらゆる低減措置を検討し、空気環境を整えています。  今年春には、増改築工事にともない当館用に設計し設置された特種なケミカルフィルター(アンモニアと有機酸の除去フィルター)の交換時期を迎えたため、取り換え作業に併せて、その前後にアクティブ法によるアンモニア(インドフェノール吸光光度法)と酢酸(イオンクロマ27%岐阜県美術館のIPM(総合的有害生物管理)導入について 岐阜県美術館 増築棟外観(北門から)

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