KONGO PASSION vol.35 2014.10
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救出・一時保管:文化財を被災現場から移送し、安全な場所で一時的に保管する活動。 応急処置:ほこりや泥で汚れたり、壊れてしまった文化財がさらに悪い状態にならないための応急的に処置を施す作業。 整理・記録:救出した文化財の点数を確認するとともにリストを作成し、その全体像を把握する作業。 保存修復:本格的な修復が必要と判断された被災文化財に対して保存修復の専門家がおこなう作業。 恒久保管:復旧した所有者の保管場所に返却、もしくは、博物館などに預けて安全に保管するための活動。 研究・活用:これまでの過程でおこなわれてきた専門的な研究活動を取りまとめるとともに、被災文化財が本来持っていた情報を付与する活動。また、これまでの成果を社会に公開する活動。 防  災:支援活動全体を通して得られた教訓を生かし、次の災害に備えるための活動。  このような8つの活動のうち、救援委員会としておこなった活動は、「救出・一時保管」、「応急処置」である。そして、現在、被災地と連携しながら、救出した文化財のリスト作成のための「整理・記録」、「保存修復」の一部の作業をおこなっている。今後は、文化財として本来の価値付けがおこなえる資料情報を付与するための「研究・活用」の活動を視野に入れなければならない。また被災地では、救出した文化財をあるべき場所に戻すための「恒久保管」に向けた活動も展開していかなければならない。 今後の活動について  現在、被災地の復興は確実には進んでいるものの、なかなか元の社会生活には戻っておらず、博物館施設の復興計画もままならない状況である。したがって、暫定的な収蔵庫としている一時保管場所の使用は長期化している。そこで、国立民族学博物館が所属する人間文化研究機構も、被災地支援となる研究活動を展開できる研究枠を設け、筆者自身は、「文化財の復興に向けたミュージアムの活用のための基礎的研究-大学共同利用機関の視点から」の研究代表者として活動をおこなっている。今後は本研究会を中心に、①一時保管場所における民俗資料の保管体制の構築、②災害時におけるミュージアムの連携体制の構築について取り組んでいく所存である。 24国立民族学博物館 所在地 開館時間 休館日 URL/大阪府吹田市千里万博公園10-1 /10:00~17:00 /毎週水曜日  (水曜日が祝日の場合は翌日が休館日)  年始年末(12月28日~1月4日) /http://www.minpaku.ac.jp/写真3/脱塩処理作業 参考文献 1)阪神・淡路大震災被災文化財等救援委員会事務局『阪神・淡路大震災被災文化財等救援委員会活動記録』1999年 2)日 真吾(石井里佳、川本耕三、他3名)「民俗資料の劣化とその対処法に関する研究(1)―木部への塩分浸透実験と金属防錆処理法の検証実験―」『日本文化財科学会第27回大会』P310-311 2010年 3)日 真吾「東日本大震災における被災文化財の救援の現場から―有形民俗文化財の支援を中心に」『民博通信』135 P2-7  2011

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