KONGO PASSION vol.35 2014.10
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06文化施設 Report東日本大震災で被災した 民俗資料の保存修復の 取り組み はじめに  2011年3月11日14:46分に発生した東北地方太平洋沖地震は、未曾有の被害をもたらした東日本大震災となった。そして、この大震災では、有形文化財のひとつである民俗資料も多数被災した。ここでいう民俗資料とは、地域の文化のなかで育まれ、使用された生活用具や生業用具、祭祀用具といった資料群である。  これらの有形の文化財の保護のため、文化庁の呼びかけで、全国規模の支援体制として「東北地方太平洋沖地震被災文化財等救援委員会」が結成された。実際の活動は、津波災害で被災した文化財の救出、一時保管、応急処置である。  ここでは、私が実際におこなった民俗資料の救援活動とその後におこなった保存修復について報告する。 有形文化財の レスキュー体制  東日本大震災で被災した有形の文化財のレスキューは、その被害の大きさから、全国規模で展開する必要があり、その体制の整備を文化財に関わる国立の研究機関を中心に文化庁が呼びかけた。この呼びかけに対し、3月30日付けで「東北地方太平洋沖地震被災文化財等救援委員会」(以下、救援委員会とする)が立ち上げられ、東京文化財研究所を本部とする体制が整備された(図1)。救援委員会に参加した機関を下記に示す。  救援委員会の活動およびその対象は、設置要綱に定められており、それを要約すると、救援委員会の活動は、救出、一時保管、応急処置の3つの活動を支援するものである。そして、その対象は国・地方の指定等の有無にかかわらず、絵画、彫刻、工芸品、書跡、典籍、古文書、考古資料、歴21公益財団法人 文化財保護・芸術研究助成財団 独立行政法人 国立文化財機構 被災文化財等救援委員会 (事務局:東京文化財研究所) 寄付金・義援金 レスキュー隊 博物館施設等 各都道府県教育委員会 被災地各県教育委員会 文化財・美術関係団体 所有者等 文化庁 現地本部 実施主体 地元市町村 (状況に応じ、地元県教委・現地本部が協力) 一般社団法人 文化財保存修復学会/日本文化財科学会 独立行政法人 国立美術館 独立行政法人 国立科学博物館/全国科学博物館協議会 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国立国会図書館 財団法人 日本博物館協会/全国美術館会議 全国歴史資料保存利用機関連絡協議会 全国大学博物館学講座協議会 文化財救援ネットワーク 青森県/岩手県/宮城県/福島県/茨城県/その他 呼びかけ 救援要請 立ち会い 一時保管 人材派遣 資材供給 助成 協力要請 協力要請 協力要請 協力要請 職員派遣 職員派遣等 職員 支援要請 協力依頼 協力 図1/東北地方太平洋沖地震被災文化財等救済事業(文化財レスキュー事業) 国立民族学博物館 日  真吾(文化資源研究センター 准教授)

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