KONGO PASSION vol.35 2014.10
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-本日は、福岡大学中央図書館を訪問し、新しい図書館づくりに関するお話を伺います。はじめに、館の概要についてお尋ねします。  はじめに、福岡大学は9学部31学科、大学院に10の研究科を有する総合大学で、ワン・キャンパスで約2万人の学生が学んでいます。福岡大学図書館は中央館を本館とし、医学部分館と4つの分室(理学部・工学部・薬学部・スポーツ科学部)、筑紫病院図書室にて組織され、それぞれの専門分野に特化した資料を所蔵しています。  さて中央館は2012年7月に新築・開館しました。地上7階・地下2階の大きな施設になり、5階まで図書館、6階・7階は大学院の研究室で構成されています。収蔵規模としては開架50万冊、閉架140万冊の合計約190万冊、座席数は1934席を誇る、全国的にみても規模の大きな施設となりました。ちなみに、分館等を含めると学内の所蔵規模は約240万冊になります。 -今回の新しい図書館での特長について教えてください。  まずは国内でも最大級の収納量を有する自動書庫を導入しています。約140万冊の収納能力ですが、増設すれば約160万冊の規模になります。閉架書庫の自動化によって、旧来に比べて閉架の出納サービスが驚くほど迅速になりました。  次に、各階にグループ学習室やラーニング・コモンズを設けました。グループ学習室については図書館ウェブサイトから予約できますが、予約がなく空いている部屋は自由に利用できるようにしています。そのため多くの学生や院生が利用してくれています。  これまでは入退館システムが未導入だったので、ICカードとなっている学生証に対応した入退館システムを導入しました。おかげで現在、平日1日当り約2000人、試験期1日当り約8000人の入館者管理が可能になり、学生の利用率も旧来に比べて大きく増加しています。  中央館と分館と4つの分室はワン・キャンパスにありますので、図書資料の相互の取り寄せが迅速です。ちなみにキャンパス内の配送巡回は電気自動車「愛称:ポポカ」を活用していますが、黄色い車体はキャンパス内で目立ちますし、小さな車体が可愛らしいので、学生には人気者です。図書館のキャラクター的存在になっています(笑)。  他方で福岡大学は地域開放を推進し、一般の方の利用も可能です。学外の方からも専門的な図書資料のリクエストがあり、自動書庫から出庫した資料などを閲覧されています。 -開館までの道のりをお伺いします。  福岡大学創立75周年の記念事業の一つとして、中央館の新築プロジェクトが掲げられました。旧館の建屋や設備の老朽化及び狭隘化、福岡西方沖地震における被災、ICT環境への対応といった多くの課題もあり、新館建設では課題への対処だけではなく、先進的な図書館運営・サービスを取り入れることになりました。  2008年から当館と規模が類似した全国の大学図書館を約12館視察して来ました。特に、自動書庫を導入している館を選定し、運用についての疑問などをヒアリングしました。2009年2月に図書館内にプロジェクトチームを発足させてからは、図書館内をはじめ、学内関係者、設計者と対話を重ね、多くの課題・検討事項を1つずつクリアしていきました。 -検討事項とはどういったものでしたか。  大前提として、「長期滞在型」の図書館を掲げ、そのあるべき姿について、幾多の協議を重ねていきました。  まずは諸室やゾーニングの配置検討です。施設建屋の計画は粗方決まっていましたが、具体的に詰めていきました。閲覧室、情報サービス室、グループ学習室、ラーニング・コモンズ、AVコーナー、リフレッシュコーナーとの連動性や区画性などを詰めていきました。  次に、書架や机、椅子、カウンター等の家具の検討です。できるだけ統一した形でデザインを決めていきましたが、難儀10ラーニング・コモンズ 電気自動車「ポポカ」

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